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日立製作所研究開発グループが実施するオンラインイベントシリーズ「協創の森ウェビナー」。社会イノベーションを実現するためには、ビジョン=大目的、具体的なソリューション=小目的だけでなく、この2つをつなぐ駆動目標=中目的が重要です。また、より良い駆動目標=中目的を立てるためには、意志を持ってビジョンを作る必要があります。ビジョンのもつ2つの役割について、日立製作所 社会イノベーション協創統括本部 統括本部長の森正勝がビジョン創生活動の事例を語ります。

プログラム1「ビジョンと駆動目標を達成するための“ビジョンデザイン”」
プログラム2「ビジョンと事業」
プログラム3「ビジョンを実現するソリューションの研究」

鼓舞と共感。ビジョンのもつ2つの役割

目に見える現象に注目して問題を解決する「ソーシャル・イノベーション」、問題が起きる社会構造そのものを変える「ソサエタル・イノベーション」。日立製作所は、2つの社会イノベーションに取り組んでいます。

社会イノベーションを実現するためには、ビジョン=大目的、ソリューション=小目的、そしてこの2つをつなぐ駆動目標=中目的が大事です。強靭な駆動目標を立てるためには、意志を持ってビジョンをつくる必要があります。

私たちは、ビジョンには少なくとも2つの役割があると考えています。

1つ目は、「次の社会システムの価値」を示し、事業のステークホルダを鼓舞することです。ビジョンを用いて関係者を1つにまとめ、鼓舞し、事業化へつなげます。2つ目は、「ともにめざす新しい価値観の社会」を示し、社会の共感を得ることです。

2つの役割について、日立製作所のビジョンデザイン活動を例に見ていきましょう。

画像: 社会イノベーション実現のため、ビジョンは2つの役割を担っている

社会イノベーション実現のため、ビジョンは2つの役割を担っている

新しい医療システムの価値を描き、ステークホルダーを鼓舞する

「2010年から始めた、次の社会システムの価値をビジョンとして示し、事業のステークホルダを鼓舞する取り組みの中で、

  • 社会イノベーション事業とは何か
  • 人々にどんな喜びをもたらすのか
  • どんな事業の可能性があるのか

を明らかにし、当社が一丸となって取り組む姿勢を示そうとしています。
一例として、2012年に作成した「フューチャーヘルスケア」のビジョンをご紹介します。

フューチャーヘルスケアは、患者、ホームドクター、ヘルスケアエージェントの3人で考える医療を提唱しています。ホームドクターは遠隔診療を行い、記録をもとに治療方針を提示します。ヘルスケアエージェントは世帯の医療会計を管理し、ホームドクターの治療方針をもとに、治療方法の決定を助けます。

当時すでに超高齢化社会の到来が予想されていました。そこでまず、超高齢化時代の社会像を描きました。ワークショップを通じて「3人で考える医療」のコンセプトを生み出し、ユーザーインターフェイスを作ってソリューションを考えました。その結果、このビジョンが国内外のステークホルダの共感を呼び、PoCに共に取り組むことで、このヘルスケア事業分野の立ち上げに繋がったのです。

この経験を踏まえ、現在、ビジョンデザイン活動を日立製作所の協創方法論=NEXPERIENCEの柱として、皆さまにご提供しています。

画像: 患者、ホームドクター、ヘルスケアエージェントの3人で考える医療を提唱する「フューチャーヘルスケア」

患者、ホームドクター、ヘルスケアエージェントの3人で考える医療を提唱する「フューチャーヘルスケア」

スマートさの先にある価値観を描き、社会の共感を得る

次にご紹介するのは、「ともにめざす新しい価値観の社会を示し、社会の共感を得る」ビジョンです。

コンセプトは「Don’t just be smart, Go beyond smart. 」。技術と人との新しい寄り添い方を考え、スマートさの先にある価値を模索する。そんなビジョンを作成しました。

そこから生まれたのが、日常生活をサポートするロボットです。このロボットは、薬を飲む時間を教えてくれたり、買い物をしたり、家庭にあるストック品の在庫を把握してくれます。過去に作った料理も記憶していて、一緒に思い出話もしてくれます。

このビジョンは、エイジング社会において、技術がどのように人の暮らしに寄り添い、生活の質=QoLの向上に寄与するかを示した一例です。

こうしたビジョンをいくつか発信した結果、社会課題に向き合う社内外のパートナーとの出会いが生まれました。また、地域に根ざした新しい社会インフラを創生する、具体的な協創につなげることができました。

画像: 納得できる未来像だからこそ、難しくても取り組むことができる

納得できる未来像だからこそ、難しくても取り組むことができる

VUCAの時代だからこそ、ともにビジョンを描く

現在はVUCA(注)の時代と言われ、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性が高く、将来の予測がつきにくい時代です。正解が分からない中で試行錯誤を繰り返すには、関係者をまとめるビジョンが必要になります。関係する皆様を鼓舞し、同じ思いを持って進むためにも、ビジョンをともに描き、オープンにつくっていきたいと考えています。

これからも、

  • 「次の社会システムの価値」を示し、事業のステークホルダを鼓舞する
  • 「ともにめざす新しい価値観の社会」を示し、社会の共感を得る

この2つのビジョンから駆動目標を立て、社会イノベーションを実現していきたいと考えています。

注 VUCA…「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の4要素により、将来の予測がつきにくい状態を表す造語。

画像: 変化する価値観をどう捉えるか。皆さんと一緒に、心躍る未来を考えていきたい

変化する価値観をどう捉えるか。皆さんと一緒に、心躍る未来を考えていきたい

次回は株式会社BIOTOPE CEOの佐宗邦威さんをお迎えし、5年から10年を見据えた中長期ビジョンをどのように作り、どう生かせばいいのか、また、ビジョンと日々の現実をどのようにつなげるべきかについて話し合います。

画像: ともに描く、ともに取り組む。ビジョンデザインで社会を変える│協創の森ウェビナー第2回「ビジョンドリブン ― ビジネス、デザイン、テクノロジーの交差点」プログラム1「ビジョンと駆動目標を達成するための“ビジョンデザイン”」

森 正勝
研究開発グループ
社会イノベーション協創統括本部 統括本部長(General Manager,Global Center for Social Innovation)

1994年京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、日立製作所入社。システム開発研究所にて先端デジタル技術を活用したサービス・ソリューション研究に従事。 2003年から2004年までUniversity of California, San Diego 客員研究員。横浜研究所にて研究戦略立案や生産技術研究を取り纏めた後、2018年に日立ヨーロッパ社CTO 兼欧州R&Dセンター長に就任。
2020年より現職。
博士(情報工学)

プログラム1「ビジョンと駆動目標を達成するための“ビジョンデザイン”」
プログラム2「ビジョンと事業」
プログラム3「ビジョンを実現するソリューションの研究」

協創の森ウェビナーとは

日立製作所研究開発グループによるオンラインイベントシリーズ。日立の研究者やデザイナーとの対話を通じて、新しい協創スタイルの輪郭を内外の視点から浮き上がらせることで、みなさまを「問いからはじめるイノベーション」の世界へいざないます。

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