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日立製作所研究開発グループが実施するオンラインイベントシリーズ「協創の森ウェビナー」。「テクノロジーがけん引する新たなモビリティ体験」をテーマにしたライトニングトークでは、制御・ロボティクスイノベーションセンタ 自動運転研究部長 髙橋絢也が「共生・共進化制御による、未来の都市環境での人とモビリティとの共生社会」について、電動化イノベーションセンタ モビリティドライブ研究部長 高橋暁史が「インホイールモーターが生み出す、新しいクルマの価値」について、それぞれプレゼンテーションしました。自動運転の車の安全性をどう確保していくのか、そして、インホイールモーターという新たな技術により移動にどんな価値が生まれるのか、日立の技術とともに紹介します。

プログラム1「誰が為のパーソナルモビリティ?」
プログラム2「テクノロジーがけん引する新たなモビリティ体験」
プログラム3「未来の街を活性化するための、移動体技術の『3つの問い』」

画像1: 自動運転で変わる人とクルマとの関係性│協創の森ウェビナー第8回 「モビリティ “Moving into the Future City”」プログラム2「テクノロジーがけん引する新たなモビリティ体験」

自動運転がモビリティをフレームする

髙橋 絢也:
運転を頼むとしたらどちらの運転スタイルがいいでしょうか。

A:スムーズ、でも遅い
B:荒い、けれど速い

車酔いしやすいからAがいいという方もいれば、Time is money、荒くてもいいから速く目的地に着くことが重要という方もいるでしょう。ちなみに私は、C: スムーズで速いのがいいです。

では次の質問です。先ほど示した自動運転の機能をつけられるとしたら、どちらを選びますか。

A:スムーズで遅い、もしくは荒くて速い でも安い(+20万円)
B:スムーズで速い、でも高い(+200万円)

私であれば、どちらも買わず、自分で運転するといった選択をしたいと思います。これらの問いは、自動運転を社会に実装しようと考えた時にどういう走りをするものがいいのか、それに対してどれぐらいのお金を払うのか、を問うものです。

一般的な自動運転のレベルの定義を見てください。

画像: 自動運転のレベルの定義について解説する髙橋絢也

自動運転のレベルの定義について解説する髙橋絢也

レベル0は全て自分で運転する自動化されていない車、レベル5はどこでも自動で走れる夢のような車です。このように表記すると車はレベル0から5に向かって順に進化するように見えるかもしれませんが、実際はレベル3までと4以降ではまったく別物になります。それは、ドライバーが中にいるかいないかです。

レベル3までは必ずドライバーが必要になるので、今の車の延長になります。一方で、レベル4以降は、システムがすべての責任を負って運転をすることになり、運転席がなくドライバーもいない新たなモビリティとなりえます。

このように、レベル4の自動運転では従来の車のフレームにとらわれないモビリティになるため、これを使ったさまざまなモビリティソリューションが考えられます。移動を自動化することに加えて、車がEVであれば電力の安定供給といった使い方も可能になります。

モビリティと人が信頼しあえる共生社会へ

髙橋 絢也:
モビリティが単なる移動手段から、街と調和した新たなモビリティソリューションという新たなインフラに変わっていく時、考えなければいけない課題が大きく二つあります。一つは、モビリティを利用する人にとって安全・安心であること。そして二つ目はモビリティの周りにいる人、つまりその街で暮らす全ての人にとって安全・安心で快適なモビリティであるということです。

そこで、両者の安全に向けて取り組んでいる日立の技術を二つ紹介します。

一つは、モビリティ利用者にとって安全・安心で快適な自律走行技術です。私たちは人も機械も互いに尊重し合う「やさしい制御」を念頭に人の動作をリスペクトして、熟練ドライバーの技術を自律走行制御に生かしました。人と機械との共生社会には、人からも信頼される技術が重要になると考えています。

画像: モビリティと人が信頼し合う「共生社会」について語る髙橋絢也

モビリティと人が信頼し合う「共生社会」について語る髙橋絢也

二つ目は、モビリティの移動効率を考えながらも、モビリティの外にいる人にとっての安全性を向上し、人とモビリティの共生を実現する“共生安全”技術です。モビリティの走行エリアをインフラ側から監視し、必要に応じてモビリティを遠隔制御する技術により、モビリティの周囲にいる人にとっても安全な自律モビリティを実現します。

この共生安全により、ヒト・モノ・エネルギー・情報をつなぎ、新たな生活インフラとして街と共に成長・進化するモビリティの実現にむけたさまざまな技術を提供していきたいと思います。
そして、モビリティと人が信頼し合える「やさしい共生社会」をめざしたいと思います。

未来のモビリティが提供する価値とは

高橋 暁史:
私のパートでは、インホイールモーターが生み出す新しいクルマの価値について説明します。まず最初に、電動化と自動運転がセットで普及したとき、自動車が提供する価値とは何かを考えていきたいと思います。

画像: 未来のモビリティの価値について問いかける高橋暁史

未来のモビリティの価値について問いかける高橋暁史

これまでのクルマの価値は大きく二つありました。一つは自由な移動、そしてもう一つが運転の楽しさです。しかし近年、この運転の楽しさの価値が低下しています。これは、運転自体が自由な移動の代償になってしまい、人々のクルマ離れが進んでいるのです。

では、未来のモビリティはどんな価値を提供するのか。

私たちは、移動しないとできない体験を提供することだと考えました。移動先での体験もありますが、空間の移動を楽しむということ、さらに移動時間自体が自由時間になることが新しい提供価値になるだろう。

そしてこの二つの価値を提供するためには、移動体験を自由に演出できるゆとりのある車内空間の実現と、航続距離の制約からの解放という2点が重要であると考えました。

この価値を提供するために日立が選んだソリューションが、インホイール式EVです。これにより、車内空間の拡大と航続距離の改善を両立できます。一般的なEVは車両の前後に駆動システムが配置され、これが車内空間とバッテリースペースを狭めていました。

画像: インホイール式EVについて解説する高橋暁史

インホイール式EVについて解説する高橋暁史

インホイール式EVでは、駆動システムをホイール内に分散配置しますので、車内空間もバッテリースペースも格段に広く確保できます。

インホイールモーターが車を“動物化”させる

高橋 暁史:
では、日立が開発したインホイールモーター Direct Electrified Wheel のコンセプトを簡単に説明します。

早期の社会実装を見据えて、クルマの骨格は100年の歴史を踏襲し、走る・止まるの機能を全てホイール内に集約することにしました。

1つ目のコンセプトは、徹底的な小型・軽量化です。

モーターそのものをホイールの内側に収まるように取り付ける必要があるため、、ハイパワーで小さく、軽くし、車両の重量増加を回避しました。このために、100年の歴史があるモーターの構造をドラスティックに見直しました。

2つ目のコンセプトは、主要装置をコンパクトに一体化したことです。モーター、インバーター、ブレーキを一体化して、既存のホイールにそのまま搭載できるようにしました。

画像: インホイールモーターにより車は“動くモノ”ではなくなると説く高橋暁史

インホイールモーターにより車は“動くモノ”ではなくなると説く高橋暁史

3つ目は省エネルギー化です。モーターの力をホイールに直接伝えるので、ドライブシャフトなど従来必須であった動力伝達系部品はほぼ必要なくなります。これによって、一般的なEVに比べて機械的なエネルギーロスを削減し、航続距離をより長くしました。

このように、インホイールモーターが新しいクルマの価値を提供します。

ただし、このクルマは、これまで操ってきた ”動くモノ” ではありません。頭脳を持ち、データともつながり、人間を観察する ”動物” に例えることすらできます。

ヒトとクルマの良い関係を築く、これが次の課題になりそうです。

――次のプログラム3では、今回のプレゼンテーションの内容をベースに「未来の街を活性化するための移動体技術の三つの問いに」ついて、髙橋絢也と高橋暁史が、東京社会イノベ―ション協創センタ 主管デザイン長(Head of Design) 丸山幸伸とともにディスカッションしていきます。。

画像2: 自動運転で変わる人とクルマとの関係性│協創の森ウェビナー第8回 「モビリティ “Moving into the Future City”」プログラム2「テクノロジーがけん引する新たなモビリティ体験」

髙橋 絢也
研究開発グループ テクノロジーイノベーション統括本部

制御・ロボティクスイノベーションセンタ 自動運転研究部長(Department Manager)
2004年日立製作所に入社後,自動車の走行制御に関する研究に従事。2011-14年に日立ヨーロッパ(ドイツ)にて運転支援システムを開発し,帰国後,自動運転に向けた走行制御技術に携わる。2019年から鉄道,建機含めたモビリティの自動・自律化に関する研究開発を推進している。

画像3: 自動運転で変わる人とクルマとの関係性│協創の森ウェビナー第8回 「モビリティ “Moving into the Future City”」プログラム2「テクノロジーがけん引する新たなモビリティ体験」

高橋 暁史
研究開発グループ テクノロジーイノベーション統括本部
電動化イノベーションセンタ モビリティドライブ研究部長(Department Manager)

2004年日立製作所に入社後,モーターを主としたパワーエレクトロニクスの研究開発に従事。2010年にドイツ・ダルムシュタット工科大学にて博士号を取得し、2013-16年には核融合の国際プロジェクトITERに参画。2021年より現職。

画像4: 自動運転で変わる人とクルマとの関係性│協創の森ウェビナー第8回 「モビリティ “Moving into the Future City”」プログラム2「テクノロジーがけん引する新たなモビリティ体験」

丸山 幸伸
研究開発グループ 社会イノベーション協創統括本部
東京社会イノベーション協創センタ 主管デザイン長(Head of Design)

日立製作所に入社後、プロダクトデザインを担当。2001年に日立ヒューマンインタラクションラボ(HHIL)、2010年にビジョンデザイン研究の分野を立ち上げ、2016年に英国オフィス Experience Design Lab.ラボ長。帰国後はロボット・AI、デジタルシティのサービスデザインを経て、日立グローバルライフソリューションズに出向しビジョン駆動型商品開発戦略の導入をリード。デザイン方法論開発、人財教育にも従事。2020年より現職。

プログラム1「誰が為のパーソナルモビリティ?」
プログラム2「テクノロジーがけん引する新たなモビリティ体験」
プログラム3「未来の街を活性化するための、移動体技術の『3つの問い』」

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