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「日立スタートアップ協創プログラム2021」の一環として行われた「メタバース×社会インフラ」ワークショップ。ワークショップ終了後には、アフタートークとして、参加者と開催メンバーとの間で振り返りが行われました。参加者からは株式会社Diversitas十五(とうご)寛氏、利倉(とくら)加奈子氏、日立ソリューションズの川尻剛、東京社会イノベーション協創センタの松下耕太郎、安村透と、主催メンバーからはコーポレートベンチャリング室の野崎賢、熊谷貴禎、ワークショップの企画・運営の東京社会イノベーション協創センタ 高田芽衣、高見真平、高田将吾が参加。ワークショップを経ての感想や気づきを語ります。(本文内敬称略)

[Vol.1]スタートアップ企業と考えるメタバースの未来
[Vol.2]SF小説への「ツッコミ」を起点に未来を想像する
[Vol.3]描いた未来を価値創出へつなげる

画像: アフタートークも、オンラインとワークショップ会場のハイブリッドで行われた

アフタートークも、オンラインとワークショップ会場のハイブリッドで行われた

同じ小説をきっかけに、まったく違う議論が生まれた

高田芽:
同じ小説を起点に議論しているのに、あれだけグループごとに違う議論になったことがとても印象的でした。こうまで違う話になるのかと。

十五さん:
うちのグループは「人にとって幸せとは?」という話をずっとしていた感があります。とにかく今の世の中は生きづらい。多様さがぶつかりあって、逆に余計なことが言えなくなっている。それがめざしていた多様性かというと、ちょっと違うよね、と。

利倉さん:
同じ多様性の話でも、私のグループではより多くの人たちがリーチできるような空間を提供したいという話になりました。障がい者やシニアが自分の好きな形でアバターとして参加できる社会をつくるにはどうしたらいいか、と。コストのことにも話が及び、かなり議論がヒートアップしました。
セキュリティの問題も出てきました。メタバースの体験に対して保険が適用されるのか。

高田芽:
私のグループでも、バーチャル観光で怪我したらどうしよう、という話題が出ましたね。怪我以外にもいろんなパターンの保険が考えられそうです。

利倉さん:
今はまだ、何の法規制もない状況です。アクセシビリティの上でも、今のうちにベースを整えておく必要を感じます。

高見:
一方、メタバースに脱中央集権的なエコシステムを求める思想もあるなかで、取り締まる存在がでてきてもいいのかという論点もありますね。

十五さん:
メタバース上では誰もが自分の世界をつくって王様になれる。そうするとルールそのものの意味も問い直されてくるのではないでしょうか。

画像: 同じアノテーションからも、まったく別の議論が生まれていた

同じアノテーションからも、まったく別の議論が生まれていた

未来予測ではなく未来想像の議論

高田芽:
ワークショップとしてはいかがでしたか?

川尻さん:
アイディアそのものより、今メタバースについてどんな課題があるのかを俯瞰したくて、今回のワークショップに参加しました。求めていた議論ができたので、とても満足しています。

松下:
僕は、現実空間の製品やサービスも、まずは仮想の街で試して現実空間に実装、といった具合に仮想と現実を往来する開発スタイルが、数年後には当たり前になっているという仮説を持って臨んだんですが、今日の議論は全然違いましたね(笑)。とはいえ、「メタバースを誰もが自由に利用できる世界を構築し、20年、30年と永く維持していくためには?」というかなり大事な話をしていたと思います。

高田芽:
今回SFプロトタイピングという手法を使ってみましたが、その点については、どうお感じになりましたか?

利倉さん:
課題となった小説で描写されたメタバース空間の中で、「これはあっていい」「これはなくてもいい」というものをあげていくところから議論が始まって、みんなの腑に落ちたキーワードが出てきました。題材があることで、考えを広げたり整理したり、忘れていた論点に立ち返ることができたのでよかったですね。

安村:
たぶん、みなさんの書いたアノテーションだけ見てもよく分からなかったんじゃないかと思うんですよね。読めばわかる「小説」という形で、事前に世界観の共有ができたのがよかった。バックグラウンドのバックグラウンドとして機能していたと思います。

高見:
「つくられた物語」をベースとしたアノテーションから「つくりたい世界」の話に波及していくか不安でしたが、話題がWILLの話に、また、未来にトランジションしていくための話に展開していったことがとてもよかったと思います。何より、初対面にもかかわらず、これだけ深い議論になったのがよかったですね。各グループの議論内容を聞いても、未来予測ではなく未来創造の姿勢で話していたのがわかりました。

画像: スタートアップと日立。複数同士での対話から新たな発見が生まれた

スタートアップと日立。複数同士での対話から新たな発見が生まれた

議論から、事業創出に向けた次の道筋を探る

熊谷:
今回はBtoCの話題が多かったですね。日立としてはBtoBtoCの議論もしていきたいのですが、現状のメタバースではまだ難しいのかもしれません。一方で、ウェルビーイングの領域に関する議論には大きなヒントを得ました。
たとえば、身体の問題で思うように働けない方にメタバース上で自由に活動できる環境を提供して働いていただく。そんな話題に魅力を感じました。いきなり社会インフラと言うとハードルが高いように感じてしまいますが、ウェルビーイングの領域で何か社会イノベーションの機会が見つけられるのではないかという可能性を感じました。

野崎:
今、スタートアップの皆さんとの議論が必要だと思っています。これまでも、1対1で具体的な協業について話すことはありましたが、もし複数のスタートアップと複数の日立メンバーが議論したらどうなるんだろう?との問いから今回のワークショップが生まれました。結果、今日は本当に面白い話が出てきましたね。日立だけで課題を考えていても、限界があります。先に課題に挑戦していたる人たちからヒントや刺激をもらえるこういう場は貴重です。我々も変わるきっかけにしたい。今日はその第一歩になったと思います。

高田芽:
今回、センサーやNFT(※)などの専門家にも声をかけて参加いただいたんです。みなさん、自らの専門領域では日頃かなり先進的なことを考えていらっしゃる方々です。彼らが今日の議論の中で「今の・・の動きについて、どう思ってる?」と、専門性の異なる方々に聞いていたのが印象的でした。普段とはかなり異なる視点からメタバースを捉え直す機会になったのでは、と思います。今回のワークショップの中で皆さんと描いた未来の姿とここで掴んだ「問い」を更に深めて、新たな価値創出へつなげていきたいですね。

※NFT…偽造不能な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータのこと。

画像1: [Vol.3]描いた未来を価値創出へつなげる│日立スタートアップ協創プログラム2021「メタバース×社会インフラ」ワークショップ

十五(とうご)寛
株式会社Diversitas 代表取締役CEO

博士やポストドクターといった研究者のキャリアチェンジを支援するベンチャー企業の創業に携わり、約8年半研究者のキャリアコンサルタントを行う。2015年に株式会社アカデメイアを創業。以降、AIや画像処理といった先端技術を用いたソフトウェア開発、スーパーコンピュータ向けのソフトウェア改良、新しい仮想通貨開発のためのアルゴリズム開発など様々な領域のプロジェクトマネジメントを行うとともに、スタートアップと研究者をつなぐ共同研究を支援している。2020年より「VirtualEnt」の改良に携わり、現在は「cosmo」の開発指揮およびメタバース関連技術の応用検討に取り組んでいる。

画像2: [Vol.3]描いた未来を価値創出へつなげる│日立スタートアップ協創プログラム2021「メタバース×社会インフラ」ワークショップ

利倉(とくら)加奈子
株式会社Diversitas 取締役CSO

メジャーレコード会社/媒体などエンタメ業界を経て、音楽レーベル株式会社ONE UP MUSICを設立。(徳間書店より関連書籍出版)北京オリンピックテーマソングや、キリン、花王などのCM音効も手掛ける。2016年に企画会社として合同会社プランニング創に事業統合。ニューヨークの最先端カルチャー紹介WEBメディアを立ち上げ、国内にローカライズする新規ビジネスを樹立。(阪急百貨店・ベイクルーズG等)また海外デザイン主軸にした空間ディレクション(高島屋ショッププロデュース等)も得意とする。ヒューマンアカデミーなど企業のデジタル・コンテンツディレクション、地方自治体創生案件などプロデュース実績多数。2020年よりメタバース「Virtual Ent」の開発に取り組む。

画像3: [Vol.3]描いた未来を価値創出へつなげる│日立スタートアップ協創プログラム2021「メタバース×社会インフラ」ワークショップ

川尻 剛
日立ソリューションズ
研究戦略部 主任研究員(Senior Researcher)

日立ソフトウェアエンジニアリング(現 日立ソリューションズ)に入社後、先進技術評価を担当し、サンフランシスコとシアトルにて新製品開発に従事。現在はAR/MR技術のエンタープライズ活用について顧客と検証を行っている

画像4: [Vol.3]描いた未来を価値創出へつなげる│日立スタートアップ協創プログラム2021「メタバース×社会インフラ」ワークショップ

野崎 賢
コーポレートベンチャリング室 部長(Senior Manager)

産業制御、金融リスク管理システムやビッグデータ分析などの研究、技術戦略調査・分析、コーポレートでの新事業創生制度設計及び実践、顧客協創によるオープンイノベーション、などに従事。2019年より現職。博士(工学)。

画像5: [Vol.3]描いた未来を価値創出へつなげる│日立スタートアップ協創プログラム2021「メタバース×社会インフラ」ワークショップ

熊谷 貴禎
コーポレートベンチャリング室 部長(Senior Manager)

日立製作所に入社後、新サービスの研究開発に従事し、顧客協創手法「NEXPERIENCE」の開発を担当。2019年より、スタートアップ企業とのオープンイノベーションに挑戦中。筑波大学大学院特別講演講師。

画像6: [Vol.3]描いた未来を価値創出へつなげる│日立スタートアップ協創プログラム2021「メタバース×社会インフラ」ワークショップ

高田 芽衣
研究開発グループ 東京社会イノベーション協創センタ
価値創出プロジェクト 主任研究員(Chief Researcher)

日立製作所入社後、無線通信システムの研究を経て、2016年より東京社会イノベーション協創センタに所属。現在、働き方改革・オフィス関連のソリューション検討、スマートシティ分野の顧客協創活動に従事。博士(工学)。

画像7: [Vol.3]描いた未来を価値創出へつなげる│日立スタートアップ協創プログラム2021「メタバース×社会インフラ」ワークショップ

松下 耕太郎
研究開発グループ東京社会イノベーション協創センタ
サービス&ビジョンデザイン部主任デザイナー(Design Lead)

日立製作所に入社後、生活・公共分野などの製品デザイン開発に従事後、エネルギー・ライフ分野などのサービス開発に従事。現在は、仮想空間を含むデジタル技術を使った事業拡大・創生手法を研究中。

画像8: [Vol.3]描いた未来を価値創出へつなげる│日立スタートアップ協創プログラム2021「メタバース×社会インフラ」ワークショップ

高見 真平
研究開発グループ 東京社会イノベーション協創センタ
価値創出プロジェクト デザイナー(Senior Designer)

日立製作所に入社後、UI・UXデザイン担当。現在はサービスデザインの一環で、テクノロジーが未来に及ぼす影響を思索的な物語として試作する「SFプロトタイピング」に取り組んでいる。多摩美術大学情報デザイン学科非常勤講師。

画像9: [Vol.3]描いた未来を価値創出へつなげる│日立スタートアップ協創プログラム2021「メタバース×社会インフラ」ワークショップ

高田 将吾
研究開発グループ 東京社会イノベーション協創センタ
価値創出プロジェクト デザイナー(Designer)

日立製作所に入社後、都市・交通領域におけるパートナー企業との協創をサービスデザイナーとして推進。

画像10: [Vol.3]描いた未来を価値創出へつなげる│日立スタートアップ協創プログラム2021「メタバース×社会インフラ」ワークショップ

安村 透
研究開発グループ 東京社会イノベーション協創センタ
価値創出プロジェクト デザイナー(Designer)

日立製作所に入社後、主にセキュリティ分野におけるUI・UXデザインを担当。パートナー企業との顧客協創活動を通じた新規事業領域探索に取り組んでいる。

[Vol.1]スタートアップ企業と考えるメタバースの未来
[Vol.2]SF小説への「ツッコミ」を起点に未来を想像する
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