15年後を生きるZ世代の居住に関する価値観を知り、未来洞察につなげたい。そんな思いから始まった「定住に捉われないライフスタイルの台頭ワークショップ」。 日立製作所のメンバーとZ世代の若者が、「多拠点居住」を切り口に「15年後の暮らし」を語り合いました。Vol.3では、ワークショップに参加した日立製作所研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部 社会イノベーション協創センタ 主管デザイン長の丸山幸伸と、社会イノベーション協創センタ 井口匠、増田藍、高田将吾が、それぞれの気づきを語りました。

[Vol.1]Z世代と考える、15年後の暮らし方
[Vol.2]移住から始まる小さな社会変革
[Vol.3]変化を前提に、多様な自分になる

「Z世代だからこう」ではなく、対話を通して深く理解したい

ワークショップでは、15年後を生きるZ世代の「暮らし」に関するインサイト発掘を目的に、

Q1「15年後の理想の暮らしは?」
Q2「15年後に絶対したくない暮らしは?」
Q3「Q1,Q2を振り返って、暮らしに関するキーワード・インサイトをできるだけ探そう」

の3つの問いを立て、「学生チーム」「社会人チーム」「学生と社会人の混合チーム」の3グループに分かれて討議を行いました。

増田:
わたしの参加した社会人チームは、ほんわか、ゆったりした感じで、チームの個性が出ていて話していて面白かったですね。自分のストーリーや背景まで含んだ話をじっくり聞け、話し方や雰囲気も含めるとすごくしっくりくるというか、オンラインではなく対面で話すことの意義を強く感じました。「こういう状況でこういうことを考えている人がいるんだ」という、その人自身の理解につながった感じがあります。

わたしは家電の新しいあり方を研究していますが、その中でも「Z世代の意識はこうだ」といった話をよく聞きます。どこか世代を区切って自分たちとは異なる価値観を持つように定義し、そのコメントに意味を持たせがちですが、今日深く話を聞いていくと、「Z世代だからこうだよね」と理由づけをせずに分かち合えることがたくさんありました。特に、議論の中で出てきた「自分らしさを受け入れてもらえるような多様性のある田舎」という感覚は、私自身が求めているものと重なるところが大きく、非常に共感の大きいキーワードでした。

「Z世代に意見を聞かなければ」と思うとき、自分でも逃げている部分があったのかもしれません。Z世代の言葉をそのまま聞くのではなく、「それはどういうことなのか」と疑問を投げかけたりしながら、対話を通して互いの理解を深めることで同じステージに立ったコミュニケーションができるということを再認識できる良い機会になりました。

画像: じっくり話すことで世代を超えた共感が生まれたと話す増田

じっくり話すことで世代を超えた共感が生まれたと話す増田

優しさの中にいる彼らが、強い刺激に直面したら?

井口:
今日のみなさんの話を聞いて、不確実な要素が多く、予測できないリスクもたくさんあるのが当たり前の世界を生きているんだな、と感じました。だから、最初から決め打ちでひとつのことに依存するのを本能的に回避している。できるだけパラレルな自分を探したいという思いがものすごく強いのだと感じました。

僕が気になったのは、ライフステージが上がって、パラレルでいたい自分と周囲との不一致が生じたときのことです。例えばパートナーが「もっと一緒にいたい、自分のことを大事にして欲しい」と言ったら、どう向き合うのかな、と。

ワークショップでは「環境が変化したり制約が生まれた時に、自分で決めることが大事だ」との発言があり、はっとしました。僕たちや上の世代は、制約の中でどう生き残るかを考えがちですが、彼らは制約に飛び込む前に自分で可能性を広げたいし、制約がある中でも可能性をあきらめたくない思いが強いんだなと感じました。

また、議論に出てきた「優しい刺激」というキーワードも印象的でした。誰かと比較をして決める強い刺激ではなく、自分がこれからどうしたいのか決めるために他から刺激を受けたいと思っている、という話で、僕はすごく素敵だと思いました。ただ、優しい刺激を求める彼らが今後「強い刺激」に直面したときにどう向き合うのか、そのときに何が手助けになるのか、もっと知りたいところですね。

ゆるやかな変革と経済価値をどう整理するか?

高田:
「多拠点移住はZ世代なりのデモ」という話が出ていましたが、暮らし方の選択によって自分の態度を示すという考え方が面白かった一方で、「デモ」だけど「革命」ではない、という話も出ていて、それがとても興味深かったんです。彼らは別に、AをBにひっくり返すことは望んでいなくて、AであるものをA’にして、さらにA″にしていく、ゆるやかな変化を求めている。Bをめざしてアクションを起こすわけではないんです。ゆるやかに変化した結果がCになろうがDになろうが構わないんですよね。そんな風に、自分の中のちょっとした違和感を元に行動し続ける選択の仕方が新鮮でした。移住に限らず何かモノを買うときや、お店を選ぶときにも、そういうことって確かにあるな、と共感しました。

一方、そこでの経済価値をどう整理するかは僕自身含め考えないといけないところだと思っています。今日の議論も、選択肢を増やしたい、選択肢を増やすためにはお金を稼がなくてはいけない、でもお金が全てではない、というある種の袋小路にはまっていた気もします。僕自身にもそこへの答えはまだありません。経済価値だけではない指標でも豊かになりたいと思ってるんだけど、それを追い求めていく方法がわからない、というのは、今後も考えたいポイントかなと思いました。

画像: 経済価値以外の豊かさをどう追求するか考えたい、と高田

経済価値以外の豊かさをどう追求するか考えたい、と高田

Z世代にとっての多拠点居住は、生存のための行動か

丸山:
僕らの世代にとって、家族でひとつの住まいに落ち着くことは「あたりまえ」。多拠点居住も代替的な価値として見ていたと思います。でも、彼らはそういう経験を元から持っていません。デジタルネイティブだし、社会そのものが最初から不確実です。同じ「多拠点居住っていいね」といった発言をしたとしても、裏にある価値観は違うと感じました。

「これは聞かないとわからないな」と思ったのは、「政治や社会のニュースを見てお父さんが文句を言うのが嫌だった」という話です。変わっていく社会に対して「父親ですら抗えないのか」という絶望があるんじゃないかと思ったんです。人間には、社会に属して自分が意味を持った存在でありたいという願いがあります。でも、都市には父親ですら抗うことができない大きな流れがあって、その中で埋もれていってしまう。それは怖いことですよね。

彼らが都市部ではない地域への移住や多拠点居住を求めるのは、自分が関わる余地があると感じられるからじゃないでしょうか。このまま都市にいると、何にも抗えないまま沈む泥舟に身を預けることになるかもしれない。でも、自分の効力の及ぶサイズのところに行けば、生きていける。多拠点居住のムーブメントは、トレンドでもわがままでも逃避でもなくて、生存のための行動のように思えます。

画像1: [Vol.3]変化を前提に、多様な自分になる│定住に捉われないライフスタイルの台頭 dotと日立の深い討議

増田 藍
研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部
社会イノベーション協創センタ
プロダクトデザイン部 主任デザイナー(Design Lead)

日立製作所入社後、コンシューマ向けAV機器、プロユース医療機器などのプロダクトデザインを担当。現在は生活家電の新サービス創出に従事。

画像2: [Vol.3]変化を前提に、多様な自分になる│定住に捉われないライフスタイルの台頭 dotと日立の深い討議

高田将吾
研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部
社会イノベーション協創センタ
サービス&ビジョンデザイン部 デザイナー(Associate Designer)

日立製作所に入社後、都市・交通領域におけるパートナー企業との協創をサービスデザイナーとして推進。

画像3: [Vol.3]変化を前提に、多様な自分になる│定住に捉われないライフスタイルの台頭 dotと日立の深い討議

井口匠
日立グローバルライフソリューションズ株式会社
ビジョン戦略本部 ビジョン商品企画部 部長代理

2007年に株式会社日立製作所デザイン本部(現研究開発グループ東京社会イノベーション協創センタ)に入社。鉄道情報システム分野のUI・UXデザイン、顧客協創ツールの開発、生活家電分野のアドバンスドデザインとサービスデザインを担当。2020年10月から現部署に在籍し、未来洞察を活用したビジョン駆動型のソリューション企画や顧客協創に従事。
https://www.hitachi-gls.co.jp/

画像4: [Vol.3]変化を前提に、多様な自分になる│定住に捉われないライフスタイルの台頭 dotと日立の深い討議

丸山幸伸
研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部
社会イノベーション協創センタ
主管デザイン長(Head of Design)

日立製作所に入社後、プロダクトデザインを担当。2006年にサービスデザイン、2010年にビジョンデザインを立ち上げ、2016年に英国デザインラボ長。帰国後はロボット・AIサービス、ライフサービス事業分野のストラテジックデザインをリード。デザイン方法論開発、人材教育にも従事。2020年より、現職。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科客員教授。

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