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「つながり」「意味」「多様性」を重んじるZ世代が社会の中心になる15年後、地方移住や多拠点居住は今以上に一般化していくと予想されます。そこにはどんな仕組みがあればいいのでしょうか。居住者を受け入れる側である地域の人たちは今、どんな課題を感じているのでしょうか。Z世代の若者の価値観から未来の「居住」のあり方を探る「定住に捉われないライフスタイルの台頭ワークショップ」。2回目となるワークショップ「地域のプレイヤーとの遠隔会議」では、Z世代の声を発信する株式会社dotから3名のみなさん、新しい暮らし・働き方を共創する多拠点型Co-LivingサービスLivingAnywhere Commons(リビングエニウェアコモンズ、以下LAC)から4名のみなさんと、日頃から未来の居住のあり方について関心の高い4名の日立製作所メンバーとで、ディスカッションを行いました。Vol.2では、ディスカッションの模様をお伝えします。

[Vol.1]Z世代の価値観は、つながり、意味、多様性
[Vol.2]都市部ではない地域への移住、多拠点居住。新しい暮らし方を支える仕組みを考える
[Vol.3]「わたし」を軸に、未知の世界に飛び込む

「合うところに行けばいい」か「頑張って受け入れてもらう」か

日立・井口:
コミュニティの人の入れ替わりについて聞きたいです。新しい人が入ってきたとき、「この人は合わないな」と思うこともありそうですが、どうやって受け入れていくんですか。また、合わないと思った時にどの辺で離れるんですか。

dot・がさきさん:
それは、わたしがどうしたいか、入ってきたその人がどうしたいかという問題だと思います。コミュニティは同志が集まる場なので、本人が「合わないな」と思ったら自由に他のところに行けますし、受け入れ側が「この人、何だか合わなそうかも?」と仮に感じた場合でも、自然に身を任せています。一緒に活動していく中で、なんだか違うなと感じたら自然とフェードアウトしていくと思います。もちろん本人がそこにいたいというニーズがあれば、その気持ちを尊重して迎え入れます。でもお互いに無理をすることはありません。自然体を大切にしています。

LAC・柏田さん:
「ここで嫌われても別のところがあるからいい」と思うか、「嫌われたくないからコミットしよう」と思うか、心理的安全性がキーワードなのかもしれません。

LACは拠点が多いので、居心地の良さにもばらつきがあります。「居心地の良い場所を選んで、好きなところへ行ってください」といつも言っています。

ただ、拠点ごとに世代は偏りがちです。同世代でやりたい人と、多世代で色々やりたい人といますが、Z世代の人たちは、世代関係なく寄り合って、いろんな人の話を聞きたい人が多い印象ですね。

画像: コミュニティと個人の関係性に、世代間のギャップが見え隠れする

コミュニティと個人の関係性に、世代間のギャップが見え隠れする

地域と来訪者をつなぐ、コミュニティマネージャー

日立・丸山:
Z世代には、誰かに誘われたらポンと行ってみるフットワークの軽さがあると感じます。下田にいきなり来る人もいると思うんですが、実際の受け入れは大変ではありませんか?

LAC・ともさん:
下田は観光地なので、市民のみなさんも、いきなり人が来ることには割と慣れているんです。逆に、繰り返し来る人や長くいる人、「ここで関わって何かやりたい」という目的で来る人には慣れていませんね。

市民のみなさんからすると、謎だと思うんですよね。実際にご質問いただくことも多いです。LAC下田はガラス張りなので、「あの人たち、あんなにパソコン使っていったい何をやってるの?」と。

日立・丸山:
怪訝そうな目で見られたり、調和が乱れたりはしませんか?

LAC・あっこさん:
そのためにわたしたちコミュニティマネージャーがいます。何か聞かれたら答えますし、「よかったら中を見ていってくださいね」と誘ったりもします。地元のお店に備品を発注するついでに説明したりもしています。まだ始めたばかりで手探りではありますが、そうやって最初の一歩だけ間に入って、あとは自分たちでやっていけるように、と考えています。

画像: コミュニティマネージャーの果たす役割は大きい

コミュニティマネージャーの果たす役割は大きい

地域を維持する「共益費」はどのように集める?

日立・丸山:
「自由に生きられたらいい」と言っても、そこで暮らしたり活動したりするには共益費や税金が必要になります。下手をするとサービスのフリーライダーになりがちかと思いますが、どうでしょうか。

LAC・北辻さん:
お金を落としてもらって地域がうるおうのがこれまでの発想でした。LACは活動費が家賃や共益費になっていますが、今後、「活動を支えるため」の範囲を拡大して地域に広げていきたいと考えています。

今、「維持するために人がいてほしい」という話をよく聞くんです。人が場にとどまる理由のひとつは仕事。地域のためになる仕事をしっかりつくっていきたいですね。

LAC・ともさん:
下田では、好きになったら移住して税金を払っている人もいます。一方で、「楽しかった!」だけでいなくなる人も多いですね。自分たちだけ楽しんで帰るなら、それは観光と変わりません。観光ではない何かのために来るのであれば、そこを気にして過ごしてほしいですね。

画像: 「共益費の問題は避けては通れない」と語る、日立・丸山

「共益費の問題は避けては通れない」と語る、日立・丸山

移住はサブスク?複数の居場所を実現するためのアイディア

日立・丸山:
複数の居場所をもつライフスタイルを維持するためにはどんな仕組みが必要でしょうか。

LAC・北辻さん:
自分たちが関わった土地、受け入れ側へのメリットは考える必要があると思います。たとえば、滞在時間で按分していくような、第2、第3の住民票制度が考えられそうです。

dot・たけちゃん:
移住の前段階として、「滞在」が鍵になってきそうですね。そもそも滞在しないと良さがわからないですし。訪れる頻度を高めて移住を検討するようになる。移住もサブスクに近い感覚になっていくのかもしれません。

LAC ・北辻さん:
LACは、「定住そのものが社会課題かもしれない」という気づきから生まれたビジネスです。私たちもサブスク的なものをめざしていきたいと思っています。本当に住みたくなったらアパートを借りる、その一歩手前のサービスとして選択してもらえれば嬉しいですね。

次回はワークショップ後のアフタートークとして、日立の丸山、南野、井口、高田がZ世代の価値観に触れて得た気づきや、コミュニティや個人の間をつなぐ人物像について語ります。

画像1: [Vol.2]都市部ではない地域への移住、多拠点居住。新しい暮らし方を支える仕組みを考える│定住に捉われないライフスタイルの台頭 地域のプレイヤーとの遠隔会議

株式会社dot / イノベーションチームdot

『Z世代発!ハッピーイノベーションを世界へ。」を掲げ全国からやる気に満ちたZ世代が集う未来型組織。Z世代会議・チームグラレコなど、Z世代の ”好き” から事業が生まれている。
https://www.innovation-team-dot.com/
https://www.join-the-dots.net/blog/category/team-dot

画像2: [Vol.2]都市部ではない地域への移住、多拠点居住。新しい暮らし方を支える仕組みを考える│定住に捉われないライフスタイルの台頭 地域のプレイヤーとの遠隔会議

北辻巧多郎
株式会社LIFULL 地方創生推進部LivingAnywhere Commonsグループ
アライアンスチーム統括

2012年4月に新卒でLIFULL入社。 LIFULL HOME’Sの営業を6年間経験後、岩手県釜石市職員として、空き家問題の課題解決に従事。 帰任後は新しい暮らし・働き方を共創する多拠点型Co-Livingサービス「LivingAnywhere Commons」で行政・民間とのアライアンスを担当する。

画像3: [Vol.2]都市部ではない地域への移住、多拠点居住。新しい暮らし方を支える仕組みを考える│定住に捉われないライフスタイルの台頭 地域のプレイヤーとの遠隔会議

柏田滉太
株式会社LIFULL 地方創生推進部LivingAnywhere Commonsグループ
CXチーム/拠点スーパーバイザー(SV)

LIFULLに中途入社後、新しい暮らし・働き方を共創する多拠点型Co-Livingサービス「LivingAnywhere Commons」にて企画営業に従事。2022年4月からはLIFULLが運営する拠点のスーパーバイザーを担当している。

画像4: [Vol.2]都市部ではない地域への移住、多拠点居住。新しい暮らし方を支える仕組みを考える│定住に捉われないライフスタイルの台頭 地域のプレイヤーとの遠隔会議

株式会社LIFULL
LivingAnywhere Commons(LAC)

住む、働く、交流する、をキーワードにワークスペースと宿泊ルームを備えた長期滞在可能なコミュニティ型「Co-Living施設」。2022年6月末時点で38の拠点がある。
https://livinganywherecommons.com/

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南野智之
研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部
社会イノベーション協創センタ
プロダクトデザイン部 デザイナー(Senior Designer)

プロダクトデザイン、UXデザインを専門に国内外様々な製品開発を担当。日立製作所入社後は主に家電分野において新商品、サービス創出に従事。

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高田将吾
研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部
社会イノベーション協創センタ
サービス&ビジョンデザイン部 デザイナー(Associate Designer)

日立製作所に入社後、都市・交通領域におけるパートナー企業との協創をサービスデザイナーとして推進。

画像7: [Vol.2]都市部ではない地域への移住、多拠点居住。新しい暮らし方を支える仕組みを考える│定住に捉われないライフスタイルの台頭 地域のプレイヤーとの遠隔会議

井口匠
日立グローバルライフソリューションズ株式会社
ビジョン戦略本部 ビジョン商品企画部 部長代理

2007年に株式会社日立製作所デザイン本部(現研究開発グループ東京社会イノベーション協創センタ)に入社。鉄道情報システム分野のUI・UXデザイン、顧客協創ツールの開発、生活家電分野のアドバンスドデザインとサービスデザインを担当。2020年10月から現部署に在籍し、未来洞察を活用したビジョン駆動型のソリューション企画や顧客協創に従事。
https://www.hitachi-gls.co.jp/

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丸山幸伸
研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部
社会イノベーション協創センタ
主管デザイン長(Head of Design)

日立製作所に入社後、プロダクトデザインを担当。2006年にサービスデザイン、2010年にビジョンデザインを立ち上げ、2016年に英国デザインラボ長。帰国後はロボット・AIサービス、ライフサービス事業分野のストラテジックデザインをリード。デザイン方法論開発、人材教育にも従事。2020年より、現職。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科客員教授。

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