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脱炭素社会の実現をめざす私たちにはいま、何が必要なのでしょうか。パネルディスカッション「未来世代と語る2050年の北海道」では、環境教育、SDGs、未来世代との協創など、脱炭素へのロードマップには欠かせないトピックについて、語り合いました。パネリストは、一般社団法人SWiTCH代表理事 佐座マナさん、帯広畜産大学 高瀬彩音さん、日立製作所研究開発グループ シニアチーフエキスパート・日立北大ラボ長の山田真治、日立製作所 営業統括本部 蓮見慶次郎。モデレーターは日立製作所研究開発グループ 池ヶ谷和宏です。

[Vol.1]脱炭素へのシナリオを未来世代とつくる
[Vol.2]市民と行政で楽しい脱炭素を
[Vol.3]脱炭素の世界をリードする存在へ

画像: 石狩市、帯広市の脱炭素シナリオ策定プロセスについて、会場内では活発な質疑が行われた

石狩市、帯広市の脱炭素シナリオ策定プロセスについて、会場内では活発な質疑が行われた

自然資源を活用した環境教育を

池ヶ谷:
石狩市と帯広市の共通点として、どちらも自然資源を活用した環境教育を進めたいといった話をされていました。北海道の自然資源を活用したユニークな環境教育に関して、佐座さんはどうお考えですか。

佐座さん:
はい。北海道は自然が身近にありますね。私は今東京に住んでいますが、自然を感じる場所って本当に少ないです。自然とともにある暮らしと働き方ってどうすればいいのかな、と日頃自然と接する機会が少ない人たちは考えるのが難しいですよね。でも北海道の人と自然はとても身近です。だからこそ、自然とともにある暮らしの仕方、働き方のアイディアも、自然に出てくると思います。

SDGsについて学ぶことは大切ですが、それをどうやって実践に結びつけていくか。頭でっかちな若者を育成するのではなく、自分の周りのコミュニティを巻き込んで変えていく力をどうやって育成する機会を増やせば、社会の変化も加速できると思います。そういったキャパシティビルディングといいますか、人として社会に貢献できる流れを若者に作ってあげると、もっと面白い、新しいアイディアがここに投入されるんじゃないかと思っています。

池ヶ谷:
高瀬さんは学校での環境教育についてどんな印象を持っていますか?

高瀬さん:
小中高大すべて含めて、環境教育は大事だと思います。私自身、小さい頃から環境に対する意識をそこまで持っていなくて、そのプラスチックはちゃんと分けなきゃ駄目とかそういう、本当に日常的にやらなきゃいけないことしか学んでなかったというか、ちゃんと個人の意識を持ってやらないといけないことについては何も学んでこなかったので。

若者との共創プロジェクト

佐座さん:
先日、札幌市の協力を得て、北海道大学共催のもと、「若者との共創プロジェクト」をスタートしました。循環型社会を実現するためには、テクノロジーもBP技術システムなどさまざまな課題があると思うんですが、若者の力も生かした方がいいと私は思うんです。いまの10代20代は、SDGsを教育の基盤として勉強しています。就活している学生の、 95.9%がSDGsの言葉も意味も知っています。どこの企業で働こうかなと考えるとき、社会貢献をどのぐらいしているかを最重要ポイントとして選んでいることも分かっています。

自分たちはどう社会に貢献できるのか、働くことを通してどのように社会を変えていけるのか、いちプレイヤーとして若者たちは興味を持っています。若者たちの声をなるべくピックアップして働き方や事業のあり方を決めることが必要だと考えています。実は、世界においては既にそういった仕組みがあります。

例えば国連では、アントニオ・グテーレス事務総長に対して助言を行う若者チームがあって、世界中から9人のメンバーが選ばれ、さまざまな提言を行っています。また、イギリスでは若者国会といって11歳から参加できる国会があるんです。企業においては、さまざまな大企業で、リバースメンタリングという大人が若者から学ぶ手法も活用されています。日本の自治体でも、若者をはじめ、多様なステークホルダーを含めた対話が普通になっていけば、インクルーシブで柔軟な、まち作りができるんじゃないかと考えてます。

池ヶ谷:
山田さんは、今のお話を聞いていかがでしたか。

山田:
本当に素晴らしいなと思いました。札幌市は札幌市でいろんな制約があって、「あれはやっちゃいけない・やれない」というようなことをどうしても思ってしまう。北海道大学はおそらくテクノロジーを重視していて、技術が世の中を変えるという風に考える傾向が強いと感じます。ですから、もっとニュートラルで合理的に考えられる若者を含めた一般の人たちがしっかりと普通に物を言えて、それで現実を動かせるところから動かしていくことが大事だと思うんです。

おそらくそういう対話の中から生まれたことも、すべてではないにせよ必ず実行に移ってゆくと思いますので、ぜひそういう機会を増やしていってもらえたらと思い、期待して聞いていました。

画像: 北海道の特性を生かした協創のアイディアについて問う、モデレーターの池ヶ谷

北海道の特性を生かした協創のアイディアについて問う、モデレーターの池ヶ谷

少子高齢化とどう向き合うか?

池ヶ谷:
当事者の1人である高瀬さんから、ご自身で思う2050年の懸念というか、問題意識があれば率直に共有していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

高瀬さん:
私が一番気にしてるのは少子高齢化です。やはり生産年齢人口がすごく減ってるので。私が個人的に見た資料では、高齢化が進むことによって生産年齢人口も減少する中で、看護師の数が少ないという話を聞きました。今回の施策で、やはりAIによるオンライン医療なども間接的に社会問題に貢献できるんじゃないかなと感じています。

池ヶ谷:
山田さんはいろいろな北海道の自治体の方とお話されていると思いますが、2050年というちょっと先のスパンで見たときにどういう北海道の地域課題、環境の課題があると思いますか。

山田:
2050年は30年先なので、正直言って今課題だと感じていることはほぼ解決しているだろうと思ってますし思いたいです。私自身が一番気にしてるのは、今まで北海道ってリーダーになったことがあまりないと思うんですよね。でも、産業面をみても、北海道はおそらくこの30年間でリーダーの位置に立たざるを得なくなると思うんです。そのときにリーダーのマインドを持てるかどうか。そこが私の中では北海道の一番のチャレンジだと思っています。

シナリオの実現に向けた活動を、若者と共に

池ヶ谷:
北海道の地域性や特性を生かしたとき、若者と企業と自治体の三者で具体的にどういうアイディア協創がありそうでしょうか。

蓮見:
今回のワークショップのような形で、その地域ごとの若者の将来への想いを形として見えるようにして、それを上の世代がしっかり認識することが必要だと思っています。その上で地域の脱炭素化を進めるためには行動変容が必要になってくる。意識の高い若者には、ぜひその行動変容の部分に率先して力を借りていきたいと思います。今回の協創ワークショップで策定したロードマップ実現に向けてのプロトタイプの活動にもぜひ入っていただきながら、企業と自治体が連携して実現に向けたステップを歩み始めていけたらよいなと思っています。

佐座さん:
多様な年齢層とバックグラウンドを持つ皆さんが、地域をもっと大好きになれるようなまち作りを推進していくことが、ここから絶対スタートできると感じており、そういったガバナンスを、若者の声を生かしながら作っていただけたらと思っています。若者たちはプロジェクトのスタート段階から参加することで自分たちが街を作っていると実感でき、、ここに住み続けたいなと思ったり、いろんな人たちに来てもらいたいなと思うようになるのではないでしょうか。若者は経験が浅いから、すべてが決まってから話そうという姿勢ではなく「どうすればいいと思う?相談に乗ってよ」と若者に声をかけて、一緒に街をつくる仲間として捉えていただければと思います。

画像1: [Vol.3]脱炭素の世界をリードする存在へ│未来世代と語る2050年の北海道

佐座マナ
一般社団法人SWiTCH 代表理事 / サステナブル推進ストラテジスト

1995年生まれ。カナダ ブリティッシュ・コロンビア大学卒業。ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン大学院 サステナブル・ディベロプメントコース卒業。Mock COP グローバルコーディネーターとして、140ヵ国の環境専門の若者をまとめ、COP26と各国首相に本格的な18の政策提言を行い、世界的な注目を浴びる。COP26日本ユース代表。2021年「一般社団法人SWiTCH」を設立。2023年「Forbes Japan 30Under30」。現在は2025年大阪・関西万博に向け、100万人のサステナブルアンバサダー育成プロジェクトを推進中。

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高瀬彩音
帯広畜産大学4年生(記事公開当時)

食品科学を専攻しており、主に発酵食品の成分や機能性について学んでいる。最近は発酵食品を毎日食べるように心がけている。

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山田真治
研究開発グループ シニアチーフエキスパート 兼 基礎研究センタ 日立北大ラボ ラボ長 / チャレンジフィールド北海道 総括エリアコーディネーター

東京大学大学院を修了後、試行錯誤の12年を経て1998年に日立製作所に入社。材料、エレクトロニクス、基礎研究の各研究センタをマネジメント。2016年には北海道大学、京都大学、東京大学に共同研究拠点を開設し、社会課題解決をめざしたオープンイノベーションを推進。2020年より経産省「チャレンジフィールド北海道」を総括。趣味は家庭菜園(不耕起栽培に再挑戦中)。

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蓮見慶次郎
日立製作所 水・環境営業統括本部 社会ソリューション第一営業本部 社会イノベーション戦略部 企画員

2018年に日立製作所入社。東北エリアの上下水道事業者向けソリューション営業に従事した後、2022年より北海道・東北エリア新事業創生担当として、DX/GXをテーマに活動中。大学時代は人間環境学を専攻。環境保全活動の経済価値や持続性について学び、国内外で企業やNPO・NGOと連携した、地域の自然保護活動に取り組んだ経験を持つ。

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池ヶ谷和宏
研究開発グループ サステナビリティ研究統括本部 プラネタリーバウンダリープロジェクト 主任デザイナー(Design Lead)

日立製作所入社後、エネルギー、ヘルスケア、インダストリーなど多岐にわたる分野においてUI/UXデザイン・顧客協創・未来洞察に従事。日立ヨーロッパ出向後は、主に環境問題を中心としたサステナビリティに関わるビジョンや新たなデジタルサービスの研究を推進している。

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