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研究開発グループのメンバーが普段の生活で、どのようなことを考え・感じているのか、個々人の注目するモノやコト、それに対する価値観を覗き見るコンテンツ、Che・ke・la・bo(ちぇけらぼ)。今回は、グリーンインフライノベーションセンタで半導体デバイスの研究に取り組む小西くみこさんが、大好きだという旅から得たさまざまな発見について語ってくれました。
画像1: 探求が止まらない!研究者の旅事情|Che・ke・la・bo

小西 くみこ
研究開発グループ サステナビリティ研究統括本部 グリーンインフライノベーションセンタ エネルギーエレクトロニクス研究 主任研究員(Chief Researcher)

2009年日立製作所入社。入社後、鉄道などに使用される次世代パワー半導体デバイスに関する研究開発に従事。デバイス分野からキャリアをスタートし、デバイスを作るための材料分野にスコープを広げ研究を推進。 2019年には応用物理学会女性研究者研究業績(若手)賞を、2022年にはひょうごSPring-8賞を受賞し、2022年、名古屋大学大学院工学研究科より工学博士の学位取得。

世界のあちこちで体感する、未知のものごとを知る喜び

旅が好きで、海外はこれまでに26カ国、国内もさまざまな場所へ行っています。旅先で気になるのが土地特有のプロダクトです。特にワイナリーやブリュワリーでは製造工程に釘づけ。特に注目するのは、製品の品質を安定させるための仕組みや工夫です。ふだん研究者として、特性のばらつきが小さい半導体デバイスをいかに製造するかを考えているので、つい気になってしまうんです。

先日は、石垣島の陶器工房を訪れました。石垣ブルーという海の色をイメージしたとっても素敵な青の陶器で有名な工房なのですが、見ているうちにやはり製品工程が気になってきてしまって。「この青はどういう種類の釉薬(※)で出しているんですか?」「使用している金属材料の純度はどれぐらいですか?」「窯の中の温度はどれくらいですか?」と店番の方を質問攻めにしてしまい、「ちょっと待ってください、作家本人を呼んできます!」と、作家さんを呼び出していただいてしまいました(笑)。

※釉薬…陶器の表面に塗る薬品。素焼きの段階で塗り、光沢を出したり液漏れを防いだりする。

お話しているうちに「器に色ムラが出てしまう」というお悩みを伺い、「それってどういうことだろう?」とまた気になって。窯の中の温度分布を均一にする、などといろいろ対策を考えてお伝えしてしまったのですが、考えてみれば、色むらのような「ゆらぎ」って、工芸品ならではの魅力でもあるんですよね。ふだん「ゆらぎ」をいかに小さくするかを考えている自分とは違う価値観があることに、作家さんと楽しくお話しさせていただくことで改めて気づかされました。

「作家は釉薬の配合などを経験や勘で決めることが多い」というお話も面白かったです。というのも、研究者としてその感覚は分かる気がしたんです。たとえば性能が良い半導体デバイスのデザインを考える場合、AIが色々と案を出してくれますが、「このデザインには無理がある」と気づけるのはやはり今まで培ってきた半導体デバイスに関する専門知識によるもの。芸術家の経験や勘に近い領域だと思うので親近感を感じました。

変な旅行者に突然呼び出されて、作家さんはさぞびっくりされたかとは思うのですが(笑)、そんなふうに楽しいお話をいっぱいできて、いい時間でした。

英語禁止!現地のドイツ語学校でゼロから学ぶ

2019年は夫の海外赴任に同行してドイツに住んでいました。ドイツとはいっても英語がある程度話せれば問題ないだろう、なんて考えていたら甘かった!近所の人に英語で話しかけても通じないか、通じたとしてもつめた〜い反応しか返ってこないんです。これはドイツ語が分からないと生きていけないと思い、現地のドイツ語学校で学ぶことにしました。英語禁止がルールだったので、最初の頃はジェスチャー混じりの授業でした。絵で単語を覚えていくあたりは、幼児になった気分でしたね……。

画像: 実際にドイツ語学校で使用していたカード

実際にドイツ語学校で使用していたカード

こんなに勉強したのは初めて、というほどドイツ語漬けの日々を送っているうちに、近所の人にドイツ語で挨拶すれば返してもらえたり、「困っていることがあれば言ってね」などと話しかけてもらえるようになりました。嬉しかったのが、隣人の荷物を預かれるようになったこと!私の住んでいた地域では隣人同士で宅配の荷物を預かり合う習慣があったのですが、引っ越したばかりのときは当然ドイツ語が読めないので、引き受けられないと判断されていたようなんです。「いつか私も」と思いながら勉強を続けていたところ、ある日、宅配の人が来て「お隣さんが不在だから預かってほしい」と言われ、ドイツ語で無事にミッションを達成でき、「やった〜!」って内心小躍りしていました(笑)。荷物を預かりあうようになり、ようやくコミュニティの一員になれた感じがしましたね。私のドイツ語は非常に拙いものでしたが、その土地の言葉を話すという歩み寄りを見せることで、みんなが受け入れてくれたのではないかと思っています。

見たことのないものに触れたり、困った出来事に遭遇する旅は、探求の宝庫。目の前にある疑問や課題を突きつめていくことは、面白くてやめられません。

編集部より

画像2: 探求が止まらない!研究者の旅事情|Che・ke・la・bo

とても気さくに楽しい旅行のお話をたくさん聞かせてくださった小西さんですが、大型放射光施設SPring-8を活用し優れた成果を挙げた方に贈られる「ひょうごSPring-8賞」を日立で初めて受賞するなど、すごい研究者の一人。ドイツ生活中に肌荒れをした時には、自分に合う化粧品の成分を見つけるべく、自分の顔でパッチテストまでしていたそうで、エピソードの節々に研究者らしさがにじみ出ていました。【編集S記】

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