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令和5年の日本国内における65歳以上の人口は3,624万人。総人口に対する高齢者の割合を示す高齢化率は29パーセントにも及んでいます。人口の多い団塊ジュニア世代が高齢者になることで生じる2040年問題も間近に控えるなか、超高齢社会に突入した社会はこの先どのように変化していくのでしょうか。また、その中で生涯を通じて健康的に生きるためには、何が必要なのでしょうか。高齢者が働くものづくりの職場BABA lab(ババラボ)さいたま工房を主宰する桑原静さんと、日立製作所の髙田実佳が、超高齢社会を健康に生きる術について語り合います。

[Vol.1]「いきいき生きる」って何ですか?
[Vol.2]シニアの本音はどこにある?
[Vol.3] これからどうなる?日本の「健康」

画像: BABA labのスタッフ作の布ぞうりを履きながらの対談となった

BABA labのスタッフ作の布ぞうりを履きながらの対談となった

超高齢社会の課題と向き合う

髙田:
日本は既に、65歳以上の人口の割合が全人口の21%以上を占める「超高齢社会」に突入しています。この先はどうなっていくでしょうか。

桑原さん:
これから私たち団塊ジュニアの世代が高齢者になる頃にはさらにものすごいボリュームになります。社会の中に高齢者があふれてくるわけですが、それに対して準備がほとんどなされていないのではないかと思うんです。そのことが気になっています。街じゅうが高齢者だらけになるとはいったいどういうことなのか、私たちはもっと知らなくてはいけないと思います。地方には住民が高齢者ばかりの集落もありますが、それは日本の未来だとも言えます。みんなが介護を必要とするお年寄りになったら、それをどうやって地域で支えることができるのか、本気で考えて取り組む必要があります。

髙田:
いま、3人に1人は認知症になると言われています。外国の例ですが、ケアの必要な人ばかりが住む街があって、認知症の人がカフェを運営したりしているそうです。注文を忘れたり、途中でどこか行っちゃったりといろいろありながらも、みんなで面倒を見合っている。それに比べると、いまの日本は少し冷たい気がします。明日は我が身なのですから、もう少し優しくなってもいいのではないかと思います。

桑原さん:
子育ても介護も、各家庭が抱えすぎなんですよね。もっとオープンにしていかないと、超高齢社会は崩壊してしまいます。BABA labとしても何ができるだろうかといつも悩んでいるのですが、まずは現状を伝えることが第一だと思うんですよね。これからの未来をつくる世代の人たちにシニアの本音を伝えて、一緒に未来を考える場をつくりたいと思って、勉強会などを開いています。

画像: もう少し優しい社会に、と思いを語る髙田

もう少し優しい社会に、と思いを語る髙田

シニアの本音を聞ける生成AI

髙田:
高齢者ばかりになりつつある社会のことを考えると、改めてシニアが本当に何を感じ、何を求めているのかを知ることは重要だと感じます。とはいえ、企業の人間がシニアの方から本音を聞くのは難しいですね。いいフィードバックをもらっても、もしかすると遠慮されているのではないかな、と思うこともあります。それで本当に使えるものにならなかったらお互い悲しいですね。

桑原さん:
そこでいま、新しいサービスを構想中なんです。企業がシニアの本音を聞くのは難しい。とはいえリサーチ会社を使うと費用も工数もかかります。シニアの声をしっかり企業に届けることは、シニアにとってよいサービスをつくる上でも重要だと思うんです。そこでいま、生成AIを活用したマーケティングサービスを考えています。

髙田:
それは面白そうですね。どういうものなんですか。

桑原さん:
私たちが集めたシニアの本音を学習データとしてAIに学んでもらうんです。シニアの本音を集めるために学習会やイベントを開いても、そこに出て来られるシニアの人ばかりではありませんから、生成AIだけでなく、家にいるシニアとチャットでリアルにおしゃべりできるサービスも考えています。

髙田:
なるほど、シニアの声を聞きたいと思ったとき、必ずしも対面にこだわる必要はないのかもしれませんね。いまのシニアはLINEのようなコミュニケーションツールも上手に使いこなしていらっしゃいますしね。

桑原さん:
あとはやはり、コーディネーターが必要なのではないでしょうか。たとえば企業からリサーチの依頼を受けたときに私のような人間がついていくとか。私はリサーチの依頼者をシニアとの食事に連れていったりしますよ。食事をしながらさっき聞けなかったことを聞いたら?って。そうすると、やはり本音を話してくれるんです。何かをしようと思ったら、コーディネーターはいた方がいいでしょうね。

髙田:
私が研究している疾患予測は、現状は主にシニアの周りにいる保健師さんたちに向けたものですが、シニアの健康については、登場人物がたくさん出てくるんですよね。私たちもそうした人々を円滑につなぐ役割を担う必要があるのかもしれません。

画像: シニア対象のリサーチの場にはぜひコーディネーターを、と桑原さん

シニア対象のリサーチの場にはぜひコーディネーターを、と桑原さん

誰もが無理なく参加できるような工夫を

髙田:
高齢者の本音を集めてからどんなふうに巻き込んでいくか、桑原さんのお考えをぜひ聞きたいです。

桑原さん:
高齢者を上手に巻き込むには、やはり押し付けないことではないでしょうか。人って興味があるものでないとやれないですよね。だから、編み物とか麻雀とか、YouTubeの編集講座とか、とにかくいろいろなテーマで小さな集まりをつくるんです。そうすれば、興味があれば自分からやってきます。来てくれた人もそこで終わりではなく、「今度こういうのがあるよ」と誘うと別の集まりに顔を出したりして、だんだん流動的なコミュニティが形成されていきます。ですから、一つひとつの集まりはとても小さいのですが、全体でみるとかなりたくさんの人が集まり、いろいろな本音が聞こえてくる。そんな状態が理想だなと思っています。

髙田:
やはり、相手にとって何が心地よいのか、何が適切なのかをひとつずつ考えていくことが大事なんですね。「シニアだから」と型にはめるのではなくて。

桑原さん:
そうですね。年齢を重ねると、無理ができなくなるわけですから。私たちもいずれそうなります。無理ない働き方、無理ない参加の仕方は大切です。

髙田:
いきいきしたい人もいるし、ぼちぼちで行きたい人もいる。その人にとって心地よい状態が、「健康」ということなのかもしれませんね。

画像: 「その人なりの心地よさ」を支えるために。思いを新たにした2人

「その人なりの心地よさ」を支えるために。思いを新たにした2人

画像1: [Vol.3] これからどうなる?日本の「健康」│Baba lab桑原さんと考える、健康な人生の過ごし方

桑原静

1974年埼玉県生まれ。日本大学芸術学部卒。ウェブコミュニティーの企画運営に携わった後、NPO法人「コミュニティビジネスサポートセンター」に勤務。2011年に「シゴトラボ合同会社」を設立し、高齢者が働くものづくりの職場「BABA lab(ババラボ)さいたま工房」を開設。22年、社名を「合同会社ババラボ」(通称「BABA lab」)に変更。シニアの居場所づくり支援、シニア向けのサービスや商品開発を行う。

画像2: [Vol.3] これからどうなる?日本の「健康」│Baba lab桑原さんと考える、健康な人生の過ごし方

髙田実佳
日立製作所 研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部 デジタルサービスプラットフォームイノベーションセンタ データマネジメント研究部 リーダ主任研究員。

富山県富山市生まれ。早稲田大学BEng、MEng、The Univ. of Georgia MS修了。2012年日立製作所入社後、データマネジメントに関する研究に従事。2016-2019年Hitachi America, Ltd.に出向し、米国でのヘルスケア領域における人工知能(AI)による疾患予測を用いたソリューションの開発に始まり、2019年以降は日本国内でのAIによる医療・介護支援ソリューションとそれを支えるデータマネジメント技術の開発に従事。2023年より現職。

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