Hitachi
お問い合わせお問い合わせ
コロナ禍も1年以上たち、オフィスとリモートのハイブリッドワークがますます一般的になっています。アフターコロナを見据えた今、わたしたちの働き方は、また、オフィスのあり方はどのように変わるべきでしょうか。働く仕組みと空間をつくるマガジン「WORKSIGHT」編集長の山下正太郎さんを、日立製作所研究開発グループの「協創の森」にお招きし、東京社会イノベーション協創センタ の丸山幸伸主管デザイン長、高田芽衣主任研究員、坂東淳子主任デザイナーが、ともに語り合いました。

[Vol.1] エンゲージメントが向上するオフィスのあり方
[Vol.2] 技術の力で、働く場所はもっと自由になる。
[Vol.3] フィジカルなオフィスの利点をバーチャルに生かす

分散型ワーク中心の今、従業員と企業のエンゲージメントを保つには

丸山:
日立製作所は、2019年に新たな研究開発拠点として「協創の森」をオープンしました。山下さんと一緒に協創の森の中にある研究棟のひとつである協創棟の内部を巡りながら、ポストコロナの働き方やオフィス環境のあり方について互いに意見を交わしたいと思います。

山下さん:
協創の森に初めておじゃましますが、本当に森の中なんですね。

新型コロナウイルス感染症が流行し 、満員電車に揺られて、都心オフィスでひしめき合って働く従来のスタイルが問題視されています。海外ではすでに「ズームタウン」と呼ばれる在宅を前提としたワーカーが移住する、風光明媚な田舎の街が注目されたり、オフィスを都心から郊外に移し、都市の外側へ通勤を行う「リバースコミュート(逆通勤)」などのスタイルも注目されています。他にもいろいろと働き方も変わったと思いますが、丸山さんはどんな風に感じていますか。

画像: 「協創の森は本当に森の中にあるんですね」と驚く、「WORKSIGHT」編集長の山下正太郎さん

「協創の森は本当に森の中にあるんですね」と驚く、「WORKSIGHT」編集長の山下正太郎さん

丸山:
赤坂にあった私たちの組織のメインオフィスが、2年前に国分寺の研究所に合流して以来、都心部に住んでいる従業員を中心に、ある程度はハイブリッドワークに近い環境はできていました。しかしコロナ禍の影響で、フィジカルで会うことの方が特別な状況が長期化し、従業員と企業のエンゲージメントをどう培うべきかを考え直さないと難しい状況になってきました。

エンゲージメントを高めるためには、企業のフィロソフィーを伝える場が必要だと思っています。これからご案内する「こもれびテラス」は、そのための場の1つになりそうです。

ケヤキのテーブルで「自然や環境との共生」への願いを後世へ託す

山下さん:
こんなにも豊かな自然に恵まれた環境で働くって、どんな気持ちなんですか。高層ビルが林立するオフィス街でしか働いたことがない身としては羨ましい限りです。

丸山:
よく聞かれます。どこに行っても緑が見える環境ですからね。でも実は、社員である仲間たちには「森で働く」という文脈以上のことをここで感じとってもらいたいと思っているんです。

山下さん:
というと?

丸山:
「自然や環境と共生する」ということですね。それは、この場所に研究所を構える際の創業社長からのメッセージで、後世へ託された願いなのです。

その願いとは、この研究所の敷地に建物を建てる時の方針となっている「「よい立木は切らずに、よけて建てよ」 」だったそうです。ですから、協創の森として新しい建物をつくる時も、樹木を残すことを優先に設計していただきました。建物と樹木がこれだけ近いと建設作業は難しかったはずですが、苦労して施工を進めていただきました。

それでも、何本かの樹木は伐採しなくてはなりませんでした。このテーブルは、伐採したケヤキの木を生まれ変わらせたものです。「自然との共生」というメッセージを伝えるアイコンになると思っています。

画像: 協創棟1階のコリドーから直接出られる「こもれびテラス」。建設前からこの地に根を張る大きなケヤキの木数本に囲まれ、、柔らかな木もれ日が降り注ぐ開放的なスペース。大きな木製のテーブルが目を引く。

協創棟1階のコリドーから直接出られる「こもれびテラス」。建設前からこの地に根を張る大きなケヤキの木数本に囲まれ、、柔らかな木もれ日が降り注ぐ開放的なスペース。大きな木製のテーブルが目を引く。

言葉から体験へ。企業メッセージの伝え方は変化している

山下さん:
「こもれびテラス」のテーブルや建築自体に暗示的なメッセージが込められていることがよくわかりました。

働く環境の動向をみていても、今、社員や来訪者へのメッセージの伝え方がますます非言語的になっています。これまで経営者の言葉で伝えられていたものが、実際に体験したり、場から感じ取るものに変わってきています。

丸山:
具体的にはどのような形で表現されているのでしょうか。

山下さん:
例えば、ニューヨークに本社を構えるクラウドファンディングのプラットフォームを提供する Kickstarter という会社は、「クリエイティブであれ」というメッセージを伝えるために、わざわざ鉛筆工場を改修してオフィスにしています。鉛筆が「ゼロからイチを生み出す」象徴になっているんです。私もその空間に身を置きましたが、確かにその雰囲気は伝わってきました。協創の森も、ここで時間を過ごすうちにゆっくりとメッセージが浸透していきそうですね。

丸山:
「環境に配慮しています」と言葉で言っても伝わらない。場から感じ取ってもらえることを大切にしたいです。

画像: テーブルの背景にある物語が、「自然との共生」を志す日立のメッセージを体現する

テーブルの背景にある物語が、「自然との共生」を志す日立のメッセージを体現する

さて、次は、協創の森のコ・クリエーションの象徴ともいえる「NEXPERIENCE/スペース」にご案内しましょう。

コ・クリエーションスペースに必要な「人と会う」体験の追求

山下さん:
とても広いし、天井が高いですね。一般的な高層ビルだと天井高や広さに制限があるため空間体験もどこか平面的で、思考の制約を受けるような印象です。対して、こちらは視線が天井や屋外など立体的で、いろいろな方向に視線の抜けがあり、解放感がありますね。

画像: 外部に開かれた協創スペース。プロジェクタやスクリーン、全面がホワイトボードとして使える壁など、コ・クリエーションのためのツールが充実している。食事をとりながらのコミュニケーションを想定したキッチンスペースも。

外部に開かれた協創スペース。プロジェクタやスクリーン、全面がホワイトボードとして使える壁など、コ・クリエーションのためのツールが充実している。食事をとりながらのコミュニケーションを想定したキッチンスペースも。

坂東:
こんなにゆとりがある敷地はなかなかないので、いろいろな用途で使えるように、とにかく大きい部屋を作ろうと思ったんです。実際、講演やワークショップなど多用途に使っています。

山下さん:
キッチンスペースもついているのですね。

画像: コ・クリエーションスペースに必要な「人と会う」体験の追求

坂東:
ビルトインの換気扇もついていますし、ホットプレートもあります。ここでみんなで食事を作りながら昼食をはさんでワークショップをするのもいいなと考えていたんです。

山下さん:
長く時間を共有することはクリエイティブワークでは重要なポイントです。長時間一緒にいると会話が深まり、個人的な本音や信条などが共有されやすいんですよね。

坂東:
今はコロナ禍で使えていなくて残念です。

丸山:
我々の部署では家電製品もデザインしているので、キッチンがあること自体もひとつのアイコンとして役立っていると思います。最近は時々、ここでウェブに配信するイベントも行っているんですよ。

次回は、リモートワークが広まる中で見えてきた、「日本の住宅問題」「臨場感のあるコミュニケーション」の2つの課題について伺います。また、職住近接の新しい働き方を支える新しいプロダクトについてもお伝えいたします。

画像1: [Vol.1] エンゲージメントが向上するオフィスのあり方│WORKSIGHT編集長 山下さんと考える、アフターコロナのオフィス環境

山下正太郎

コクヨ株式会社に入社後、戦略的ワークスタイル実現のためのコンサルティング業務に従事。手がけた複数の企業が「日経ニューオフィス賞(経済産業大臣賞、クリエイティブオフィス賞など)」を受賞。2011年、グローバルでの働き方とオフィス環境のメディア『WORKSIGHT』を創刊。同年、未来の働き方を考える研究機関「WORKSIGHT LAB.(現ワークスタイル研究所)」を立上げる。2016〜2017年、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート ヘレン・ハムリン・センター・フォー・デザイン 客員研究員、2019年より、京都工芸繊維大学 特任准教授を兼任。2020年、パーソナルプロジェクトとして、グローバルでの働き方の動向を伝えるキュレーションニュースレター『MeThreee』創刊。同年、黒鳥社とのメディア+リサーチユニット『コクヨ野外学習センター』を発足。

画像2: [Vol.1] エンゲージメントが向上するオフィスのあり方│WORKSIGHT編集長 山下さんと考える、アフターコロナのオフィス環境

丸山幸伸
研究開発グループ 社会イノベーション協創統括本部
東京社会イノベーション協創センタ 主管デザイン長(Head of Design)

日立製作所に入社後、プロダクトデザインを担当。2001年に日立ヒューマンインタラクションラボ(HHIL)、2010年にビジョンデザイン研究の分野を立ち上げ、2016年に英国オフィス Experience Design Lab.ラボ長。帰国後はロボット・AI、デジタルシティのサービスデザインを経て、日立グローバルライフソリューションズに出向しビジョン駆動型商品開発戦略の導入をリード。デザイン方法論開発、人財教育にも従事。2020年より現職。

画像3: [Vol.1] エンゲージメントが向上するオフィスのあり方│WORKSIGHT編集長 山下さんと考える、アフターコロナのオフィス環境

坂東 淳子
研究開発グループ 東京社会イノベーション協創センタ
価値創出プロジェクト 主任デザイナー(Design Lead)

学生時代に建築・都市分野を学び、日立製作所に入社。モビリティ、エネルギー等の分野でのUI/UXデザインや、顧客協創方法論研究に従事。現在は、建築、デザイン、情報のハブ役として、モビリティやスマートシティ分野でのデジタルサービス創出に向けた活動を推進。

[Vol.1] エンゲージメントが向上するオフィスのあり方
[Vol.2] 技術の力で、働く場所はもっと自由になる。
[Vol.3] フィジカルなオフィスの利点をバーチャルに生かす

This article is a sponsored article by
''.