さまざまな知見をもつステークホルダーが協力し、DXを実現していくためのサービス・協創空間「Lumada Innovation Hub」のSenior Principalであり、スタートアップの代表も務める加治慶光に、日立製作所研究開発グループ社会イノベーション協創統括本部長の森正勝が、協創による価値創造、社会の仕組みを変える協創をテーマに議論しました。エンドユーザーも含めいろいろな立場にいるステークホルダーを、デジタルで、リアルで巻き込んでいくためにどんなことが必要かをお伝えします。

さまざまな領域の人たちと課題解決していく「ステークホルダー資本主義」

森:
我々は、協創によって新たなる価値を創造し、社会の仕組みを変えていきたいと考えています。まず、社会の仕組みを変えていくうえで、読み解くべきトレンドや、いまどんなことが起きているかをお聞きできたらと思います。

加治さん:
2019年8月19日、アメリカ経済界の大きな意思決定団体であるビジネス・ラウンドテーブルが、企業の目的に関する声明として「マルチステークホルダー」あるいは「ステークホルダー資本主義」という概念を提示しました。企業だけ、政府だけが頑張っていくのではなく、みんなが手を携えて大きな社会課題に対峙していこう、という概念がステークホルダー資本主義です。

そのためには、さまざまな領域の人たちが協力することが重要で、2020年のダボス会議(例年1月下旬にスイスのダボスで開催される世界経済フォーラムの年次総会)でも強調されていました。

単に企業の利益、あるいは株主利益だけではなく、いろいろなセクターの人たちが気候変動、災害、パンデミックなどを含めた大きな課題に一緒に向かっていく必要があります。

画像: アメリカの経済界、日本の経団連が新しい価値の中での事業創造を提示している情勢を伝える加治

アメリカの経済界、日本の経団連が新しい価値の中での事業創造を提示している情勢を伝える加治

森:
日本でも新しい成長戦略が提示されましたね。

加治さん:
2020年11月、経団連が発表した新成長戦略は、「。新成長戦略」と題されています。「。」が最初についていることに注目してください。今まで、高度成長期にとにかく物を消費して経済成長を作っていく構造がありましたが、いったん立ち止まることが必要なのではないか。そして、新しく、地球に優しく、マルチステークホルダーで手を取り合って進んでいく。そんな成長戦略として発表されたものです。

生活者の変化、地方へのシフト、クリーンな成長、働き方の変化など、さまざまな概念を記していますが、大変読みごたえのあるものです。ぜひ、経団連のWebサイトからご覧になってみてください。

デジタルの活用でエンドユーザーを巻き込む、思いを社会につなげる

森:
さまざまなステークホルダーのうち、大きな位置を占めるエンドユーザーをどう巻き込むかも大きな課題です。そこで一つ、例を紹介させてください。

このアダプター型のデバイスは、カーボンオフセットを簡単にできる仕組みのプロトタイプです。このデバイスはネットワークにつながっていて、このアダプターを通った電気は、J-クレジットやグリーン電力証書などの言わゆる環境価値(省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を、クレジットとして国が認証する制度)の購入によってオフセットされます。CO2オフセットの提供もととなっている再生可能エネルギーの種類や、その発電設備の場所がわかります。ユーザーが、どこの電気を使っているのか把握すると、電気の節約や購入先の選択などいろいろなエンゲージメントが高まりやすくなると考えています。こういったことをインターフェースに加えることで、ユーザー自身が社会に貢献していると実感できる仕組みができないかと試行錯誤しております。

画像: ネットワークでつながる小さなデバイスを使うことで、カーボンオフセットへの道すじを生活者につなげていく

ネットワークでつながる小さなデバイスを使うことで、カーボンオフセットへの道すじを生活者につなげていく

デジタルをうまく活用することで、今まではうまく取り込めなかったエンドユーザーを巻き込めるようになっていくのではないでしょうか。事業ビジネスとしても成立しつつ、一人ひとりの思いをうまく社会につなげていくことで、結果として社会の課題を解決できないかと考え始めています。

加治さん:
生活者(エンドユーザー)は、ソーシャルメディアが出てくるまでは大きな発言権はありませんでした。エンドユーザーだけでなく、NGO等の方たちも、積極的に世界の課題に向かうことで企業や政府との連携が広がってきているのではないでしょうか。

エンドユーザーとの対話で製品・サービスをブラッシュアップ

森:
エンドユーザーの声を巻き込みながら事業を進める際に、何かアドバイスがあればお聞かせいただけますか。

加治さん:
最近はいろいろなメーカーで、完成する前に製品を世に出してみることが試されています。それは、世の中に出してみないとその製品が本当に優れているか、どんな使い道があるのかわからないと考えているからです。

壊れたり、あるいは違う使い方があれば、それをエンドユーザーからメーカーにフィードバックする対話の仕組みを作っています。消費者や生活者が対話に参加できるのも、デジタルの力でつながることができているからです。

デジタルやリアルをうまく組み合わせながら、協創していく。そういう意味では、広大な自然の中にある協創の森や、便利な場所で誰もが会いやすいLumada Innovation Hubのような場所での協創は、理にかなっていると思います。

そして、スタートアップと連携し、新しい、全く違った人たちの考え方をミックスしていくのが重要なのではないかと思います。

画像: 加治さん「消費者や生活者が対話に参加できるのも、デジタルの力でつながることができているから」

加治さん「消費者や生活者が対話に参加できるのも、デジタルの力でつながることができているから」

深刻な社会課題にマルチステークホルダーでチャレンジしていく

加治さん:
ステークホルダー資本主義が重要視されてきた背景には、我々が直面している課題が非常に深刻であるということがあります。一人ひとりの皆さんと子どもたちやその先の世代と、どのように歩んでいくのかを問いかけられているのではないでしょうか。

2030年に向けてSDGsが国際目標として掲げられていますが、日本という平和で美しい国が果たせる役割は非常に大きいと思っています。我々も微力ながらお役に立てるように、協創の森Lumada Innovation Hubで社会課題を解決していければと考えています。

森:
協創による価値創造、社会の仕組みを変える協創をテーマに、デジタルで小さな声を集めて大きな市場を作ることについてお話させていただきました。日立としては、デジタルの力を活用して、新しい社会をさまざまな立場の方と一緒に議論をしながら切り開いていきたいと考えております。

画像: 森「SDGsも含めて社会課題へのアプローチを考えると、単純にお客さまと一対一ではなく、いろいろな方々との対話が必要であることを感じています」

森「SDGsも含めて社会課題へのアプローチを考えると、単純にお客さまと一対一ではなく、いろいろな方々との対話が必要であることを感じています」

画像1: 一人ひとりの思いを社会につなぐ。大きな社会課題を前に「協創」で何ができるのか?│加治慶光と考える、さまざまなステークホルダーを巻き込むためのDX

加治 慶光
Lumada Innovation Hub Senior Principal

  • シナモンAI 取締役会長兼CSDO (チーフ・サステナブル・デベロプメント・オフィサー)
  • 鎌倉市スーパーシティアーキテクト
  • 元・アクセンチュア株式会社 Chief Marketing Innovator
  • 元・文部科学省参与
  • 経済産業省二輪研究会委員長
  • 観光庁マーケティング本部委員
  • グロービス経営大学院教授

富士銀行、広告会社を経てケロッグ経営大学院MBA修了。日本コカ・コーラ、タイム・ワーナー、ソニー・ピクチャーズ、日産自動車、オリンピック・パラリンピック招致委員会など を経て首相官邸国際広報室へ。その後、アクセンチュアにてブランディング、イノベーション、働き方改革、SDGs、地方拡張等を担当後、現職。
2016年Slush Asia Co-CMOも務め日本のスタートアップムーブメントを盛り上げた。

画像2: 一人ひとりの思いを社会につなぐ。大きな社会課題を前に「協創」で何ができるのか?│加治慶光と考える、さまざまなステークホルダーを巻き込むためのDX

森 正勝
研究開発グループ社
会イノベーション協創統括本部 統括本部長(General Manager,Global Center for Social Innovation)

1994年京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、日立製作所入社。システム開発研究所にて先端デジタル技術を活用したサービス・ソリューション研究に従事。 2003年から2004年までUniversity of California, San Diego 客員研究員。横浜研究所にて研究戦略立案や生産技術研究を取り纏めた後、2018年に日立ヨーロッパ社CTO 兼欧州R&Dセンター長に就任。
2020年より現職。
博士(情報工学)

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