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Creww 株式会社の協力のもと、スタートアップ(企業)からは、音声解析や XR コマース、アバター自動生成などさまざまなデジタル分野の専門性を持った株式会社ファーフィールドサウンド、株式会社 palan、株式会社データグリッド、株式会社 Diversitas の4社7名の方に参加いただき、日立関係者15名とメタバースをテーマにしたワークショップを行いました。メタバースをはじめ、新技術を用いたサービスの最前線に立つスタートアップ企業との間で、協創につながるどんな可能性が見えてきたのでしょうか。vol.2では、その当日の模様をお届けします。

[Vol.1]スタートアップ企業と考えるメタバースの未来
[Vol.2]SF小説への「ツッコミ」を起点に未来を想像する
[Vol.3]描いた未来を価値創出へつなげる

メタバースを体現する、ハイブリッド形式のワークショップ

ワークショップは東京・丸の内にあるLumada Innovation Hub Tokyoを主会場に、オンライン参加者を加えたハイブリッド形式で実施されました。会場には大きなスクリーンが設置され、参加者の映像が映し出されています。オンラインホワイトボードツールのMiro(※)を使いながらディスカッションを進めていく様子は、メタバースを体現しています。

※Miro…世界の2,500万人以上が利用し、PCやタブレット、スマートフォン上のブラウザやアプリケーションから、オンライン上にあるホワイトボードに対して、キーボードや手書きによる文字入力、付箋の貼り付け、作図を行えるサービス。Miroは、RealtimeBoard, Inc.の米国およびその他の国における商標または登録商標です。

参加者にはワークショップ開催までの期間に、事前配布されたSF小説を読み、疑問に思ったことや感じたことを書き出すといった事前課題が課されています。

課題となったSF小説「観光」は、ヒマラヤ山脈にある世界最高峰エベレストのベースキャンプが舞台。リアルにエベレストを登ってきた旅人と、「バーチャルバルーン」という風船型の遠隔操作ロボットを使ってバーチャル旅行を楽しむ旅人が会話を交わす、といった内容のものです。バーチャル旅行のイメージが詳細に描き出されるとともに、リアルな体験とバーチャルな体験の差異についても語られています。

SF小説「観光」

執筆:株式会社日立製作所 研究開発グループ 東京社会イノベーション協創センタ
シナリオライティング:渡辺 浩
SF プロトタイピングのための書き下ろし

PDF資料はこちら

画像: メタバースを体現する、ハイブリッド形式のワークショップ

参加者が読んでいて感じたことは「アノテーション」として、Miroの付箋ツールを使って記録。小説を読んで、気になったことを書いて貼っておくのと同じようなことがオンライン上でできる仕組みです。

ワークショップは、当日までに寄せられた180件ものアノテーションを共有するところから始まりました。

「ここに集まった180のアノテーションは、いわば小説への『ツッコミ』です。まずはどんなものが挙がっていたか、読んでみましょう。」

と、ファシリテーターの高田(将)。

参加者は、Miroの画面を通じ、

「VR環境で歓声が上がるほどの感動を呼ぶ体験をつくるために必要な設備や画像、音声の質はどんなものだろう?」

といったVR環境の技術面に関するものから、

「世界中の人間がリアルな体験をするには到底資源が足りない。メタバースならば、電力があれば均等な体験機会を提供できる」

「そこに住む人たちの文化や生活に触れるなど、実際に行かないと体験できないことはあるのでは?」

といった、さまざまなアノテーションに触れていきます。

画像: 会場の様子。大画面のスクリーンにオンライン参加のメンバーが映し出される

会場の様子。大画面のスクリーンにオンライン参加のメンバーが映し出される

180の気づきから6つのテーマに絞って議論

集まったアノテーションは、ワークショップ開催前に主催メンバーの手で分類され、それを元に、6つの討論テーマが生まれました。

1.場やモノに感じるリアリティ
2.人物やコミュニケーションに感じる「人間らしさ」
3.誰もが参加可能な場とツールの要件
4.仮想空間で“真似できない”or“ならでは”の経験価値
5.メタバースの経験価値ビジネスは加速するのか
6.メタバースの社会インフラへアクセスする手段

ここからは参加者を3つのグループに分けての討議です。先に示された6つのテーマから2つ選択し、議論を深めていきます。

画像: 「他の人のアノテーションを読んで更に乗せたい意見があればぜひ」と促す高田(将)

「他の人のアノテーションを読んで更に乗せたい意見があればぜひ」と促す高田(将)

メタバースの間口を広げるためのアイディア

あるグループでは、「誰もが参加可能な場とツールの要件」をテーマに選んだ議論交わされていました。

 
参加者:
誰もが使えるツールになるためには、現状のメタバースはUX(ユーザーエクスペリエンス)に課題があると思います。LINEのように使いやすい形に作ることができれば、だいぶ変わってくるのでは?

参加者:
今は、ごく限られたホワイトカラーの人たちしかメタバースにアクセスできていない。しかし今後は、全ての人たちがどう活用できるかを議論していく必要があると思います。

参加者:
介護現場に導入できないか、ヒアリングしたことがあります。今あるオンラインツールは高齢者と介護職、医師とのつながりを作る上で有効なんですが、使い方が難しい。そういうところに、メタバースの入る余地があるんじゃないかと。

参加者:
そのためにはまずはインフラを整える必要がある。携帯電話の普及にあたっては、とにかく端末を持ってもらうために実質0円で販売されていました。それと同様に、メタバースとはどんなものかを体験してもらう機会が必要なんだと思うんです。

メタバースによる表現の可能性についても、話題は発展していきました。

参加者:
リアルで体験できないことをメタバースで伝えたいです。今回の小説で出てきたような「旅」の場合、到達までのプロセス、旅行経験の楽しさ、行った先の偶然の出会いなどリアルならではの体験もあるので、メタバースで何を表現していくのかを、考えていく必要があると思います。

参加者:
聴覚や嗅覚など、わかりやすいものは再現できそうですが、入り混じったものはまだ再現できていません。鳥肌が立つ感覚とか。フェスでの体で音を聞く感覚、一体感。今の時点はそこまで行ってないので、そこまでできると世界がつながってきそうですね。

画像: メタバースビルダー、研究者など、さまざまなバッググラウンドをもつ参加者たち

メタバースビルダー、研究者など、さまざまなバッググラウンドをもつ参加者たち

メタバースが広がった先の世界は?

別のグループでは、「メタバースの経験価値ビジネスは加速するのか」をテーマに、メタバース上の経験価値について議論が交わされていました。

参加者:
リアルな商店街だと、商品を見ている様子を察して店員さんが近づいてきていろいろ教えてくれます。こちらから質問するのではなく、何か知りたい、困っている雰囲気を察して対応してくれる。それがメタバース上でできるでしょうか。

参加者:
脳波測定などでその人が困っているかどうかを把握できて、そこにコンシェルジュ的な役割が入るといいんですかね。完全に困ってるわけではないけどちょっと困ってる人に向けたアドバイスがあると価値が出そうですね。

参加者:
とはいえ、あんまりいろいろなコンシェルジュが出てきてしまうと、ユーザー体験としては面白くなくなってしまいます。乱数を入れても振り幅は固定されてしまう。もっと深い振り幅があった方が面白いですよね。

参加者:
五感やリアルなアバターが実現するようになってくると、リアルとバーチャルの境界線があいまいになります。「仮想空間で過ごせばいい」という人も増えてくるでしょう。仮想空間でどこまで価値提供をし、リアルに導線を貼ったときにリアルにどういう価値をおくか、棲み分けを考える必要がありそうですね。

また別のグループでは、メタバースが広まったその先の世界についての議論が深まった様子。

参加者:
将来的にメタバースがみんなが入れる場となった時に、何が起きるかを考えてみる必要もあると思います。たとえばSNSは草創期にはユートピアだったはずが、今は違う。規制が入り、楽しくなくなっています。

参加者:
仮想空間で、そういうルールをつくったり規制したりするのは誰なんですかね。いったい仮想空間は誰が統治しているのか?それは僕たちが望んでいるものなのか?という。

参加者:
一方で、現実とは異なる国や場をユーザー自身がつくれるのは、いいことでもあります。そこに可能性があるんじゃないかなあ。

参加者:
そこまで普及すると、もっと気持ちいい体験をしたいと思って、コミュニケーション能力が上がるのでは?
コピーロボットのような分身が複数の仮想空間の中で体験して、自分はそれをあとから追体験する。という、もはや何が何だかわからない状態になっていくのかもしれませんね。

画像: ワークショップ終了時には、オンラインの参加メンバーと会場主催メンバーとで記念撮影を行った

ワークショップ終了時には、オンラインの参加メンバーと会場主催メンバーとで記念撮影を行った

ワークショップは「始まり」。気づきを起点に社会実装へ

グループディスカッションの後、ふたたび全体での議論に戻って互いに各グループで出た話題を共有し、ワークショップは終了となりました。

高田将:
長時間の議論に参加いただきありがとうございました。今回は課題を議論するという目的だったので、答えめいたものを出すことはできず、持ち帰るに持ち帰れない、モヤモヤした状態で終わってしまった、という感じかもしれません。あくまで最初のきっかけとして、また、つながりづくりの起点としてご活用いただければ幸いです。今日生まれたいくつもの気づきから新たな技術やサービスが生まれることを、私たちも期待しています。

最後はバーチャル記念撮影。約5時間に及ぶ白熱した議論から、今後何が生まれてくるのかが楽しみです。

―― vol.3では、ワークショップ終了後に行われた、参加者と主催メンバーによるアフタートークの模様をお伝えします。

画像1: [Vol.2]SF小説への「ツッコミ」を起点に未来を想像する│日立スタートアップ協創プログラム2021「メタバース×社会インフラ」ワークショップ

野崎 賢
コーポレートベンチャリング室 部長(Senior Manager)

産業制御、金融リスク管理システムやビッグデータ分析などの研究、技術戦略調査・分析、コーポレートでの新事業創生制度設計及び実践、顧客協創によるオープンイノベーション、などに従事。2019年より現職。博士(工学)。

画像2: [Vol.2]SF小説への「ツッコミ」を起点に未来を想像する│日立スタートアップ協創プログラム2021「メタバース×社会インフラ」ワークショップ

熊谷 貴禎
コーポレートベンチャリング室 部長(Senior Manager)

日立製作所に入社後、新サービスの研究開発に従事し、顧客協創手法「NEXPERIENCE」の開発を担当。2019年より、スタートアップ企業とのオープンイノベーションに挑戦中。筑波大学大学院特別講演講師。

画像3: [Vol.2]SF小説への「ツッコミ」を起点に未来を想像する│日立スタートアップ協創プログラム2021「メタバース×社会インフラ」ワークショップ

高田 芽衣
研究開発グループ 東京社会イノベーション協創センタ
価値創出プロジェクト 主任研究員(Chief Researcher)

日立製作所入社後、無線通信システムの研究を経て、2016年より東京社会イノベーション協創センタに所属。現在、働き方改革・オフィス関連のソリューション検討、スマートシティ分野の顧客協創活動に従事。博士(工学)。

画像4: [Vol.2]SF小説への「ツッコミ」を起点に未来を想像する│日立スタートアップ協創プログラム2021「メタバース×社会インフラ」ワークショップ

高見 真平
研究開発グループ 東京社会イノベーション協創センタ
価値創出プロジェクト デザイナー(Senior Designer)

日立製作所に入社後、UI・UXデザイン担当。現在はサービスデザインの一環で、テクノロジーが未来に及ぼす影響を思索的な物語として試作する「SFプロトタイピング」に取り組んでいる。多摩美術大学情報デザイン学科非常勤講師。

画像5: [Vol.2]SF小説への「ツッコミ」を起点に未来を想像する│日立スタートアップ協創プログラム2021「メタバース×社会インフラ」ワークショップ

高田 将吾
研究開発グループ 東京社会イノベーション協創センタ
価値創出プロジェクト デザイナー(Designer)

日立製作所に入社後、都市・交通領域におけるパートナー企業との協創をサービスデザイナーとして推進。

[Vol.1]スタートアップ企業と考えるメタバースの未来
[Vol.2]SF小説への「ツッコミ」を起点に未来を想像する
[Vol.3]描いた未来を価値創出へつなげる

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