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日立製作所研究開発グループが実施するオンラインイベントシリーズ「協創の森ウェビナー」。第13回となる今回のテーマは「将来の社会を支える、モビリティの新たな役割」。プログラム2では「社会システムとしてのモビリティ」の事例として、福島県浪江町での取り組みを日産自動車株式会社 総合研究所 研究企画部 部長 山村智弘さんから、東京都国分寺市の防災訓練で展示とデモを行った災害時のEV活用事例を研究開発グループ 社会イノベーション協創センタ リーダ主任研究員の森木俊臣からご紹介いたします。

プログラム1「変化するモビリティの役割を捉える」
プログラム2「社会システムとしてのモビリティ」
プログラム3「将来に向けたモビリティの役割の探索」

人口密度の低い地域での移動を支える「なみえスマートモビリティ」

山村さん:
東日本大震災で甚大な被害を受け、震災前の人口の約1割にあたる1900人ほどが現在帰還をされている、福島県浪江町における「なみえスマートモビリティ」の取り組みをご紹介します。

この取り組みの最大のチャレンジは、どうすれば人の密度が低い地域で移動サービスを定着できるかという点です。人口密度の低い浪江町では、既存のMaaS(Mobility as a Service)とは真逆で、まず人の流れで街を活性化して、そこからモビリティの原資を作り出していくという新しい発想が必要でした。そのため、「モビリティで人を動かす」取り組みと、浪江駅前に東京大学と日産自動車で立ち上げた浜通り地域デザインセンターを拠点に「移動する動機を作り出す」こと、そして運行に使う電気自動車の運行コストを下げるため、「環境に優しいエネルギーを効率よく使う」という、三つの方策を展開しています。

このサービスで使用する車両には、浪江町を象徴する青い海と波、ご当地キャラの「うけどん」をモチーフにデザインしてラッピングしました。オンデマンドで車を呼ぶために開発したデジタル停留所は、アニメーションを使ってわかりやすいデザインにしています。移動の動機や賑わい作りについては、駅前の浜通り地域デザインセンターを起点にイベントを運営し、イベント時間に合わせてフレキシブルに運行してきました。その結果、1週間に約250人、イベントと連動した日は1日で約100人の浪江町の皆さまにご利用いただきました。人口1900人の町の100人ですから、町内の多くの方々からとても感謝されています。

画像: 浪江町の象徴を取り入れたブルーの車両が走ることで、町が明るくなったと語る日産自動車の山村さん

浪江町の象徴を取り入れたブルーの車両が走ることで、町が明るくなったと語る日産自動車の山村さん

人の密度が低い場所での自由な移動というのは、多くの地方が抱える課題だと考えています。地方が元気でないと、日本は元気でいられません。地方の移動に対する我慢を、デザインと技術の力で開放して、活力ある地域にしていくために、今後は全国に展開可能な仕組みに発展させていきたいと考えています。

国分寺市の防災訓練で検証されたEV給電の有用性

画像: 「災害時EV活用ソリューション」の実証実験により、市役所と市民の皆さん双方からフィードバックが得られたと話す森木

「災害時EV活用ソリューション」の実証実験により、市役所と市民の皆さん双方からフィードバックが得られたと話す森木

森木:
2022年8月に東京都国分寺市にて実施された総合防災訓練で日産自動車さまと共同で展示した「災害時EV活用ソリューション」の内容と、それに対する市役所および市民の皆さまからのフィードバックをご報告いたします。

このソリューションは災害時に、非常に容量が大きいEV(電気自動車)の電池を使って市役所の方々が市民の皆さまおよび避難所の給電を行なうことで公助(公的機関による救助や援助)が良くなる、また市民同士でEVを使って電力を供給することで共助(地域やコミュニティにおける協力や助け合い)にも使えるものです。災害が起きた際、広い地域が全域で停電(ブラックアウト)するということはあまりなく、一部には電源が通っているという状況が非常に多く起きるため、電気が使えるところから使えないところにEVで電気を運ぶというのが主な考え方です。

画像: 災害時にEVの需給をマッチさせることでエネルギー供給の公助と共助を支援する「災害時EV活用ソリューション」の概要

災害時にEVの需給をマッチさせることでエネルギー供給の公助と共助を支援する「災害時EV活用ソリューション」の概要

日立製作所の研究開発グループでは、ITを使ってEV需給のマッチングをしたり、EVの充電および派遣計画を動的に作るというようなソリューションを研究開発しています。

実際の訓練では、投光器や扇風機などを持ち込んで、EVを電源にしてどれほど使えるのかということを実証しました。災害対策本部と見立てた小学校の体育館にEVの日産リーフ1台と可搬型給電器を持ち込んで4.5kWフルに給電をさせ、訓練期間中の2時間にわたって問題なく使えることを市役所の方々に確認していただきました。今後はV2H(Vehicle to Home)と言われる自動車から建物に対して直接給電できるシステムも普及していくので、これを使った検証を進めていくところです。

展示と漫画で「EVのある楽しい未来」を伝える

森木:
EV給電の検証と合わせて、市民の方に向けては「EV活用防災ソリューション」のデモ展示とヒアリングも行いました。

画像: 避難訓練では市民の皆さんに対しても給電デモを行い、災害時にEVがもたらすメリットを体感してもらう機会を設けた

避難訓練では市民の皆さんに対しても給電デモを行い、災害時にEVがもたらすメリットを体感してもらう機会を設けた

「これからEVが普及してきたときに、どういう状況であれば自分のEVを貸し出せますか?」という質問をしたところ、7割を超える方々から「近隣の方や知り合いの方などに貸し出してもいい」という回答が得られたことから、自助や共助に対する潜在的意識が非常に高いことがわかりました。また、EVが普及すると災害発生時に活用できるだけでなく、日常にどんな楽しい未来が待っているかという話を漫画にして理解を求めました。日頃からEVを活用して、さらに、災害が起きたときにはどういう状況だったら使えるのかというのを考えてもらうための呼び水にしました。このように、市民の方々と一緒にこれからの社会を作っていくというのが私たちの研究スタイルです。将来は電力の地産地消という時代がやってきます。そこに向けて、ITとさまざまなユーティリティを使って、楽しく豊かな社会の実現に貢献していきたいと考えています。

画像: EVがあることで災害時だけでなく日常にも楽しく豊かな未来が訪れることを訴求した漫画 © 梅村昇史

EVがあることで災害時だけでなく日常にも楽しく豊かな未来が訪れることを訴求した漫画
© 梅村昇史

プログラム3では、「将来に向けたモビリティの役割の探索」に関するパネルディスカッションの模様をお届けします。日産自動車株式会社 総合研究所 研究企画部 主管 諸星勝己氏と、社会イノベーション協創センタ 主任デザイナー 白澤貴司が、ビジョン駆動型ストーリーラインワークショップを通じて社会課題を予測した、その結果と経緯をお話しします。

画像1: 地域を巻き込むモビリティの新たな取り組み|協創の森ウェビナー第13回 「将来の社会を支える、モビリティの新たな役割」プログラム2「社会システムとしてのモビリティ」

山村 智弘
日産自動車株式会社 総合研究所 研究企画部 部長

1987年、東京大学工学部航空学科を卒業し、日産自動車株式会社入社。運転支援システムの研究開発、エンジニアリング情報システム主担、総合研究所 モビリティ&AI研究所所長などを経て、2022年より現職。

画像2: 地域を巻き込むモビリティの新たな取り組み|協創の森ウェビナー第13回 「将来の社会を支える、モビリティの新たな役割」プログラム2「社会システムとしてのモビリティ」

森木 俊臣
研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部 社会イノベーション協創センタ 社会課題協創研究部 リーダ主任研究員 (Unit Manager)

1999年、九州大学大学院システム情報科学研究科知能システム学専攻修了。同年株式会社日立製作所入社、企業向けストレージの管理ソフトウェア研究開発等を経て、社会課題解決型の新事業創生活動に従事。

プログラム1「変化するモビリティの役割を捉える」
プログラム2「社会システムとしてのモビリティ」
プログラム3「将来に向けたモビリティの役割の探索」

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