曽我佑
研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部
デザインセンタ
ストラテジックデザイン部 兼 ウェルビーイングプロジェクト
デザイナー(Senior Designer)
2014年入社。ヘルスケア、地域創生、コミュニケーションロボットなどのテーマで、新規事業立上げにおけるサービスデザインを担当しながら、顧客協創手法の開発に従事。2018年から、将来の社会課題や生活者の価値観を探索しながら次世代の社会システムの構想・社会実験を行うビジョンデザイン活動を推進。
都市伝説や怪異現象に興味があり、特にその起源を探るのが好きだという曽我さん。オカルト話の裏に見え隠れする社会的背景とは?
もともとオカルトや都市伝説のような胡散臭い話が好きなのですが、オカルトめいたものの存在が好きで信じているというわけではなく、どうしてそんな話が広まったのか、起源を探ることに興味があるんです。
例えば、かつてペストが流行した時代には医学が現在ほど発達していなかったので、菌やウイルスの存在がわからず、ただただ人が倒れていく未知の恐怖が蔓延した状態でした。当時の人々は「なぜこんなことが起きるのか」という理由をなんとか説明づけるために、魔女や魔術、呪いといった超自然的なものによって病魔におかされているというストーリーを広めていったわけです。
つまりオカルトは、人がその時代では説明できない恐怖や解決できない困難に直面するとき、生まれやすい。逆に言うと、怪異現象や都市伝説の裏には、そのときの社会的な不安が潜んでいることが多いんです。
過去の出来事のように思われるかもしれませんが、実は2020年のパンデミックでも、新しい都市伝説が流布していたようです。ロックダウン中のインドネシアで、全身に白いシーツを巻いた幽霊が出るという話を見つけました。その正体は幽霊のフリをしながら街中を闊歩して、外出自粛を訴えるボランティア団体だったそうで、死体を埋葬するときの姿で人々を怖がらせ、外に出ないように仕向けた。夜間外出してしまう人にどうすればステイホームを促せるかという困難への解決策として、幽霊という都市伝説が活用された例です。日本とはまったく違う発想で人流抑制の対策がとられているのもまた面白いですよね。
もう一つの曽我さんの趣味が、『機動戦士ガンダム』シリーズを始めとした巨大ロボット。巨大ロボットという虚構の存在に引き込まれる理由とは?
僕の中で巨大ロボットの面白さを感じるポイントは、「現実には絶対に必要のない巨大ロボットがどんな理由で存在させられるのか、現実にいたらどんな構造でどうやって運用されるのか」という問いに対して発揮される、SF作品の制作者やプラモデラーのクリエイティビティです。さまざまな作り手が巨大ロボットを存在させるために、現実的かつ科学的な理由を必死に考えて後付けしていくところにロマンを感じるんですよね。
例えば、お台場に設置された「実物大ガンダム立像」は、巨大構造物が実在していたらどうなるだろうという考察のもとに作られている。航空機を思わせる航行灯、メンテナンスのためのハッチやパーツの分割線、複合的な素材でできていることを想起させる塗装など、現代の構造物としての文脈が反映されているので、すごくリアルさを感じます。
趣味で作っているプラモデルも、おもちゃとして生産されるための合理的なパーツ分割ではなく「リアルな建造物だったらこういうパーツ構成の方が合理的だ」という視点で考えて、自分で作り変えていくのが楽しいんです。目の前の虚構をただの作り話で終わらせず、その意味をつい深く考えてしまうところは、オカルトの話と共通しているのかもしれません。
編集後記
いつもテンポよく仕事をしているので、職人的にデザインが上手い人に見えますが、その裏には深い思想があって、細かく熱いこだわりを秘めている。自分の考えを持つこと、そしてその答えに向かう努力は惜しまない。曽我さんならではの視点と分析がお見事でした。
コメントピックアップ
インドネシアの都市伝説しかり、超常現象や都市伝説は、傍から眺めているだけでは一見意味がわからないような、発生地点ならではの文化的背景が盛り込まれているところが面白いですね。同じ日本でも、昔の都市伝説だともはやピンとこないものもありますもんね。
お台場のガンダムが今の技術を詰め込んで究極的に再現された建造物だったなんて…。たび重なるトライアンドエラーの上に完成させた製作者の情熱と苦労を思わずにはいられませんね。
昔、上半身が日立建機株式会社の開発した双腕重機「ASTACO」で移動は四脚で動く“双碗四脚”という超絶萌え重機を開発されている時にご一緒させていただくことがありました。双碗を操縦させてもらった時の全能感はいまでも忘れられません。