Hitachi
お問い合わせお問い合わせ
日立製作所研究開発グループが実施するオンラインイベントシリーズ「協創の森ウェビナー」。脱炭素や自然共生と両立しながら成長する社会を実現するためには、これまでの大量消費・大量廃棄といった直線型経済(リニアエコノミー)から、資源が再生可能なモノを作り・使い続けることで、廃棄のないサステナブルな循環型経済(サーキュラーエコノミー)へ転換していくことが求められています。今回のテーマは「サーキュラーエコノミーがめざす次の社会」。プログラム1では、日立製作所研究開発グループ 生産・モノづくりイノベーションセンタ サーキュラーインダストリー研究部 部長の谷口伸一が、サーキュラーエコノミーの現状と日立の取り組みについてお話しします。

プログラム1「サーキュラーエコノミーの現状と日立の取り組み」
プログラム2「サーキュラーエコノミーがめざす社会と経済」
プログラム3 パネルディスカッション「サステナブルな製品開発への挑戦」

サーキュラーエコノミーとカーボンニュートラル

谷口:
プラネタリー・バウンダリーという言葉をご存じでしょうか。地球システムの機能における9種類の変化を取り上げ、人類が安全に活動できる領域と限界点=プラネタリー・バウンダリーを定義する概念です。リスクが高いとされている課題の例を示します。

画像: プラネタリー・バウンダリーの中で、リスクが高いとされている課題の例

プラネタリー・バウンダリーの中で、リスクが高いとされている課題の例

このような課題を克服するため、産業分野でも地球システムの安定性維持のための変化が求められています。

次に示すのは、低環境負荷実現に向けた社会動向です。

画像: 低環境負荷実現に向けた各国の動向

低環境負荷実現に向けた各国の動向

EUのグリーンディール政策、米国のグリーンニューディール政策、そして日本のグリーン成長戦略などです。

次に、日立が取り組んでいるカーボンニュートラル2030を示します。

画像: カーボンニュートラル2030に向けた日立の取り組み

カーボンニュートラル2030に向けた日立の取り組み

カーボン排出には自社工場、オフィスからの直接排出=Scope1および間接排出=Scope2と、バリューチェーンの上流からの排出(原材料など)と下流からの排出(製品の使用など)=Scope3が存在します。日立カーボンニュートラル2030では、Scope1&2に向けた基本アプローチとして、電化、省エネ機器/再エネの導入、非化石電力調達に取り組んでいます。

次に示すのは、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの関係です。

画像: カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの関係

カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの関係

エレン・マッカーサー財団の試算した世界のCO2排出量の割合によると、エネルギー由来が55%です。残りの45%に対してサーキュラーエコノミーによる削減が見込めると言われています。つまり、バリューチェーン全体のカーボンニュートラル達成にはサーキュラーエコノミーの戦略的な実行が不可欠で、中でも産業分野の削減が必須です。

こうした背景の中、ユーザーの価値観も変化しています。環境志向の高まりや、環境配慮製品の需要が増え、業界とユーザーとの接点は増える傾向にあります。

アップサイクルサーキュラーエコノミーとエネルギーミニマムでの資源循環の実現

ここまでの社会動向、業界動向などから導かれる変化点の認識をまとめます。あるべき姿 To-Be像では多様なユーザーニーズを実現しながら、限りある資源を有効活用し、環境価値と経済価値を両立します。つまり、ユーザーが長く使いたい製品サービスが提供され、再生品の利活用を前提とした循環網が整備される社会です。

現在の状態As-Isでは高度な資源循環を実現させる仕組みが未成熟で、プロダクト再生に向けた4R※事業などが台頭している一方で、再生材はカスケードリサイクル※が基本です。

※4R…Reduce、Reuse、Repair、Remaufacturing
※カスケードリサイクル…モノの劣化に応じて、元の製品ほどの高品質を求められない場面や製品に利活用すること

画像: あるべき姿と現状との間のギャップをどう埋めるか、日立がめざす方向性を語る谷口

あるべき姿と現状との間のギャップをどう埋めるか、日立がめざす方向性を語る谷口

この両者の間にギャップが存在しており、こうしたギャップを埋めるため、解くべき課題を示します。プロダクトレベルでは、再生部品の使い回しのみでは、最新のニーズに対応できず、いずれ循環しなくなるのではないか。マテリアルレベルでは、カスケードリサイクルが基本で低品質な再生材が残存して適用拡大につながらないのではないか。また、資源循環に際して追加のエネルギーを必要とすると、さらなる環境負荷のリスクとなるのではないか、と捉えました。

そこで私たちは、「循環のたびに製品と材料の品質・機能を向上させるアップサイクルサーキュラーエコノミー」と「エネルギーミニマムでの資源循環の実現」をめざすことにしました。

限りある資源を有効に活用するため、エレン・マッカーサー財団のバタフライダイヤグラムの右の輪に示される技術的サイクルの実現をめざしています。

画像: エレン・マッカーサー財団のバタフライダイヤグラムで、日立が実現をめざしていること

エレン・マッカーサー財団のバタフライダイヤグラムで、日立が実現をめざしていること

資源が採掘され、材料として使用され、加工・製造を経て、サービス提供された後、回収された製品や部品、資源を上流に循環させるため、マテリアルアップサイクル、プロダクトアップサイクルのイノベーションにチャレンジしています。

また、デジタルを活用したサイバーフィジカルシステムを用いて、サイバー空間においてモノとデータの流れを把握することで、アップサイクルや環境負荷の見える化、定量化を実現します。データに基づき得られた資源を最適な経路で循環させるスキームを提案、実社会にフィードバックすることで業種横断の資源循環を実現します。

サーキュラーエコノミーが実現した社会とは

それでは最後に、これらのコンセプトをまとめた動画をご覧ください。

画像: 〔コンセプト映像〕サーキュラーエコノミーが実現した社会 - 日立 youtu.be

〔コンセプト映像〕サーキュラーエコノミーが実現した社会 - 日立

youtu.be
画像: 循環に関わるすべての人が自信を持って次の再生方法を選択できる社会の実現に向けて│協創の森ウェビナー第14回 「サーキュラーエコノミーがめざす次の社会」プログラム1「サーキュラーエコノミーの現状と日立の取り組み」

谷口 伸一
日立製作所研究開発グループ 生産・モノづくりイノベーションセンタ サーキュラーインダストリー研究部 部長

2004年に博士号取得後、株式会社日立製作所に入社。基礎研究所、生産技術研究所において、マテリアルサイエンスの知見を活用してヘルスケア関連の計測機器開発に従事後、計測・材料プロセス分野の研究ユニットリーダ。その後、研究開発グループ技術戦略室勤務を経て、産業ソリューション強化PJリーダー、加工・検査研究部長の後、現在に至る。フィジカル技術とデジタル技術を融合するサーキュラーエコノミープロジェクトをリードする。

プログラム1「サーキュラーエコノミーの現状と日立の取り組み」
プログラム2「サーキュラーエコノミーがめざす社会と経済」
プログラム3 パネルディスカッション「サステナブルな製品開発への挑戦」

関連リンク

This article is a sponsored article by
''.