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2022年11月26日に「世代を越えて描くトランジション」と題した日立製作所研究開発グループ主催のワークショップが開催されました。「Z世代に寄り添うのではなく、未来を一緒に作る」をテーマに、エネルギー問題や社会課題解決への強い関心をもつ大学生・大学院生と、日立の若手社員、研究開発グループ プラネタリーバウンダリープロジェクトのメンバーが参加しました。Z世代が考える「望ましい未来像」とはどのようなものなのか。ワークショップでは、参加者が「エネルギー」「衣食住」「モビリティ」の3チームに分かれて、それぞれのテーマについて語り合いました。Vol.1ではエネルギーチームにおける対話について、プラネタリーバウンダリープロジェクト 主任研究員の中谷武司と主任研究員の稲垣幸秀が振り返ります。

[Vol.1] Z世代が考えるエネルギー消費の未来像とは?
[Vol.2] 衣食住の見える化がサステナビリティに必要なカギ
[Vol.3] 移動ゼロ社会の未来?これからの移動の価値を考える

多岐にわたるテーマを議論したエネルギーチーム

中谷:
エネルギーチームでは、主に「原子力発電」「再生可能エネルギー」「省エネキャンペーン」「エネルギー貿易」などのテーマで議論しました。

原発問題については「安全性の問題は言及されるべきだけれど『危ないから止めるべき』『経済が潤うから稼働すべき』などと賛成か反対かで単純に割り切れる問題ではない」、「電力の安定供給の面で考えると原子力発電は優秀。原発稼働のリスクを正しく理解しながらメリットとデメリットの両面で議論する必要がある」など自身や社会の観点からの問いかけも行われ活発な議論になりました。

一方、再生可能エネルギーに関しては、「風力発電やメガソーラーに対する反対運動は各地で起きている。さまざまな反対理由があるのは理解しているが、悲しいことに大半は大人世代によるもの」などと、世代間の一部で分断が起きているという指摘もありました。

夜景、過剰な冷房…行き過ぎたエネルギー消費は「おせっかい!」

稲垣:
カーボンニュートラルや脱炭素化については、世界的潮流も後押しして、日本でも省エネに向けた積極的な取り組みが進められています。しかしZ世代からするとそれらはまだ「目に見えにくい」「わかりにくい」側面があるようです。

特に日常的に使っている冷暖房については「エアコンは心地よい暮らしに欠かせない」「ウェルビーイングにもつながる」「快適な温度に保つことはお客さまへのおもてなしになる」といった好意的な意見がある一方で、「省エネのことを考えると、暑さや寒さをどこまで我慢すべきか」といった便利さを単純に享受できない複雑な思いも吐露されていました。

コメントピックアップ

画像1: [Vol.1] Z世代が考えるエネルギー消費の未来像とは?|Z世代×日立研究員 協創ワークショップ「世代を越えて描くトランジション」

私はタイに住んでいたことがありますが、日本よりも温暖なタイには、屋内をキンキンになるまで冷やしているビルが多い一方、個人の住宅はとても暑いんです。これは「徳を積まなければいけない」とする宗教的・文化的な行動で、日本でいうところのおもてなし精神。この先も温暖化が進み、日本の気候が今よりもっと温暖になれば、日本のおもてなし精神もより過剰になるかもしれない。

画像2: [Vol.1] Z世代が考えるエネルギー消費の未来像とは?|Z世代×日立研究員 協創ワークショップ「世代を越えて描くトランジション」

私もイギリス・ドイツに留学していた頃、家がとても暑かったので、放課後は冷房の効いた公共施設で友だちと一緒に涼んでいました。そうしたヨーロッパ的な行動も今後は必要なのかもしれないですね。

画像3: [Vol.1] Z世代が考えるエネルギー消費の未来像とは?|Z世代×日立研究員 協創ワークショップ「世代を越えて描くトランジション」

これまではテレビから流れてくる政府や電力会社の省エネキャンペーンのCMを見て、何の疑いも持たずエアコンの設定温度を28℃にしていました。でも私を含め多くの人が「なぜ28℃なのか」を理解してない。28℃設定が“寒いか寒くないか”は千差万別です。画一的な基準を作るのではなく、それぞれが電力の使い方を選べる仕組みを作ったほうがよいと思いました。いずれにせよこの問題はインビジブル(目に見えない)な側面が多く、伝え方にも問題があるのかも。

中谷:
議論が活性したのは「電力消費量が気になり、素直に夜景を楽しめない」という課題でした。

夜景はとても綺麗ですが、電力消費という視点で見ると「こんなに電気を使っているのか…」と、途端に冷静になってしまい罪悪感なしに夜景を見られない。実際に屋内で使っている照明はよいとしても、単に外の人に見せるだけの照明やイルミネーションがあまりに多い。その影響で都会には真夜中でも星が見えないところが多い。
こうした“捉え方によっては過剰に感じるエネルギー消費”に対してエネルギーチームでは、それらを「おせっかいエネルギー」と名付けました。

エネルギー消費にも、自由で多様な選択肢を

画像: エネルギーチームが考える自分たちにとって望ましい2050年の未来像。 「おせっかいエネルギー」を解消する手段として「エネルギーにも選択の自由を」と提案したエネルギーチーム。

エネルギーチームが考える自分たちにとって望ましい2050年の未来像。
「おせっかいエネルギー」を解消する手段として「エネルギーにも選択の自由を」と提案したエネルギーチーム。

稲垣:
現代社会への問題意識をふまえ、自分たちにとって望ましい2050年の未来像についても議論しました。

エネルギーチームでは、「私たち一人ひとりが、それぞれ違った考え方を持っている。着るもの・食べるもの・住むところを選択できるのと同じように、エネルギー消費にも一人ひとりの意見が反映されてほしい。モノを極力所有しない“ミニマリスト”というライフスタイルが『オシャレなもの』として認知されているように、銭湯を利用したり、冷暖房をつける部屋を減らしてみたりといった、日々の生活を楽しみながらも節電する暮らし方も新しい魅力的なライフスタイルへと再解釈して仕立て上げることもできる。」といった意見がありました。

昨今、一般家庭向けの電力小売が自由化されたことで、消費者が電力会社や料金メニューを選べるようになりましたが、一部のサービスを除いて、太陽光発電や風力発電など具体的なエネルギー源を選択することができません。Z世代はそうした実状を踏まえながら「再生可能エネルギーを含めて、自由にエネルギーをカスタマイズできる」「個々の選択が多様な利用プランとして許容され、自分にあった電力を使うことができる」そんな“自分仕様のエネルギー利用”を思い描きました。

その一方で彼らは「選択肢があまりに多すぎると『ファミリーレストランのメニューを見て何を食べるか迷ってしまう』のような情報過多の状態になる」との懸念も示しました。その結果として決断できず何も変わらないという状態を避けるためにも、「どんな人にも基礎的な知識を提供する機会と仕組みも同時に整備すべき」との視点も提示しました。

非現実的な絵空事を考えない―良い意味での現実主義

画像: 2050年の未来像に対してそれぞれの学生の想いや願いが次々と書き込まれたホワイトボード

2050年の未来像に対してそれぞれの学生の想いや願いが次々と書き込まれたホワイトボード

中谷:
ワークショップを終えた日立のプロジェクトメンバーとの振り返りでは、「どの学生さんも意識が高く、良い意味で現実主義だと感じた。つまり、未来を語るにしても非現実的な絵空事を考えない。『失業者を出さないように』など、公益への配慮が常に行き届いていた。」「年齢の離れた社会人が相手でもものおじせず発言してくれたのがとてもありがたいです。彼らの熱量に影響され、こちらもいつもよりたくさん発言してしまうくらい刺激的でした。」といったコメントがありました。

エネルギーチームに参加した日立の若手社員からも「エネルギー問題は節電などが象徴するように『我慢する』イメージが強かったが、学生たちの意見からはそんな空気を微塵も感じなかった。」と、ポジティブな視点から地球にやさしいアクションにつなげていく形で活発な議論となりました。

エネルギー分野ではCO2削減や生物多様性など、取り組むべきことは多岐にわたりますが、このワークショップでの議論は、今後の自分たちの研究テーマ設定に大いに参考になると思います。

次回は、衣食住チームで議論された内容を、プラネタリーバウンダリープロジェクト サブリーダの飯塚と、主任研究員の佐々木が振り返ります。

関連リンク

画像4: [Vol.1] Z世代が考えるエネルギー消費の未来像とは?|Z世代×日立研究員 協創ワークショップ「世代を越えて描くトランジション」

中谷 武司
日立製作所 研究開発グループ サステナビリティ研究統括本部
プラネタリーバウンダリープロジェクト 主任研究員(Chief Researcher)

1998年日立製作所入社。EDI、トレーサビリティなど企業間情報システムの研究開発に従事。顧客協創方法論『NEXPERIENCE』実践のため3年間タイの現地法人に赴任。帰国後プラネタリーバウンダリープロジェクトに参画し、脱炭素、生物多様性分野での環境ソリューション探索を推進。

画像5: [Vol.1] Z世代が考えるエネルギー消費の未来像とは?|Z世代×日立研究員 協創ワークショップ「世代を越えて描くトランジション」

稲垣 幸秀
日立製作所 研究開発グループ サステナビリティ研究統括本部
プラネタリーバウンダリープロジェクト 主任研究員(Chief Researcher)

1991年日立製作所の研究所に入社。パソコンの小型・省電力化や、デジタルコンテンツ向けストレージの研究開発、デジタル放送の録画システムを立ち上げに従事。事業部および研究部門にて新事業立ち上げプロジェクトに携わる。現在はプラネタリーバウンダリーに関わるプロジェクトを推進。

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