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日立製作所研究開発グループによるオンラインイベント「協創の森ウェビナー」。気候変動問題が何かと話題となる昨今、主要各国は2050年までに脱炭素へのトランジション実現をめざしています。第16回目の今回はテーマを「脱炭素へ導く環境関連ファイナンス」とし、環境関連ファイナンスの可能性について議論を深めました。プログラム1では「GXリーグで描かれた将来像と鍵を握る環境関連ファイナンス」と題し、経済産業省が設立したGXリーグに関わる同省 産業技術環境局 環境経済室長 梶川文博さんと、GXリーグ未来像策定ワーキングに携わった博報堂 ブランド・イノベーションデザイン局 根本かおりさん、研究開発グループ 技師長 鈴木朋子が対談を行いました。研究開発グループ 主任デザイナーの池ヶ谷和宏がモデレーターとなり、GXリーグで描かれた生活者視点の未来像を伺いながら、ファイナンスの可能性についても意見を交わしました。

※記事文章内に記載の登壇者の所属、役職などはウェビナー開催時(2023年6月16日時点)のものです

プログラム1「GXリーグで描かれた将来像と鍵を握る環境関連ファイナンス」
プログラム2「環境関連ファイナンスを後押しするデジタルプラットフォームの研究」
プログラム3 パネルディスカッション「グリーン・デジタル・トラック・ボンドの開発と今後の展望」

生活者視点で描く未来社会

池ヶ谷:
ナビゲーターの日立製作所 池ヶ谷和宏です。2050年のカーボンニュートラル実現に向け、GX(グリーントランスフォーメーション※)の必要性が叫ばれています。そこで経済産業省は2022年、GXに積極的に取り組む企業群が一体となり、経済社会システム全体の変革に向けた議論と市場創造のための実践を行う場として「GXリーグ」を設立しました。今回はGXリーグを運営されている経済産業省の梶川文博さん、昨年度GXリーグに参画された株式会社博報堂の根本かおりさん、そして日立製作所 研究開発グループ技師長の鈴木朋子による鼎談をお送りします。

※ 化石燃料に頼らず、環境負荷の低いエネルギーの活用を進めることでCO2排出量を削減するとともに、そうした活動を経済成長の機会にするために経済社会システム全体を変革していこうという取り組み。

近年、YouTuberをはじめSNS上に多くの個人クリエイターが出現しています。このムーブメントは今後ますます加速し、将来的には政府主導でも企業主導でもなく、生活者個人が社会を引っ張る時代になるのではないでしょうか。2050年の脱炭素実現をめざす上で、まずは生活者の「ありたい未来」を想像することで、経済社会の成長の機会を探っていきたい。また、脱炭素を将来のビジネスチャンスと捉えていただきたい。そんな思いから、GXリーグで描かれた生活者視点の未来像と、環境関連ファイナンスの可能性について議論していきます。皆さん、よろしくお願いします。

画像: 左からナビゲーターの日立製作所の池ヶ谷和宏、博報堂の根本かおりさん、経済産業省の梶川文博さん、日立製作所の鈴木朋子

左からナビゲーターの日立製作所の池ヶ谷和宏、博報堂の根本かおりさん、経済産業省の梶川文博さん、日立製作所の鈴木朋子

梶川さん:
経済産業省環境経済室長(ウェビナー開催当時)の梶川文博です。昨年提唱しましたGXリーグという枠組みを推進しています。そのほか、地球温暖化対策計画をはじめ、ESGファイナンスやカーボンプライシング(※)などの政策立案を担当してきました。

※炭素に価格を付け、CO2排出者の行動を変容させる政策手法。

根本さん:
博報堂ブランド・イノベーションデザイン局の根本かおりです。「生活者発想での未来洞察」を専門領域としています。GXリーグでは昨年度、事務局をさせていただき、その中で、カーボンニュートラルが実現した2050年の社会の「未来像策定」の取り組みを賛同企業の皆さんと行いました。

鈴木:
日立製作所 研究開発グループの鈴木朋子です。入社以来、環境関連システムの開発を担当してきました。2020年から、環境分野におけるイノベーション戦略の策定を取りまとめています。

「GXリーグ」とは

池ヶ谷:
まずはGXリーグの基本構想と概要について教えていただけますか。

梶川さん:
カーボンニュートラルの実現に向けて、国際ビジネスで勝てるような企業群に、大胆な挑戦をしていただく――そのための場がGXリーグです。

画像: 経済産業省 梶川文博さん

経済産業省 梶川文博さん

GXリーグの基本構想では、めざすべき姿として次の3つを柱に据えています。1つ目は、「企業が世界に貢献するためのリーダーシップのあり方を示す」。2つ目は、「GXとイノベーションを両立し、いち早く移行の挑戦・実践をした者が、生活者に選ばれ、適切に『儲ける』構造をつくる」。環境対策そのものがコストになってしまうと、なかなか投資が進みません。GXの取り組みと利益の創出を両立させることで、環境と経済の好循環をめざしてきましょう、という意図です。3つ目は「企業のGX投資が、金融市場、労働市場、市民社会から応援される仕組みをつくる」。企業努力だけでGXを進めるには限界があります。金融機関をはじめとするステークホルダーが企業の取り組みを後押しする仕組みが欠かせません。

鈴木:
今のお話で一番印象的だったことは、日本がGXでリーダーシップをとることをめざしている点です。実は日立も環境領域で、グローバルのリーダーシップをとることをめざしています。具体的には鉄道などのインフラや、EVのモーターなどのプロダクトの提供を通じて世界をリードしようとしているのですが、ほかにも何かできることはないか――そのヒントを探るべく、GXリーグの取り組みに注目しています。

画像: 日立製作所 鈴木朋子

日立製作所 鈴木朋子

池ヶ谷:
GXにおいて日系企業がとるべき「リーダーシップのあり方」について、梶川さんはどんな考えをお持ちですか。

梶川さん:
気候変動の分野において、日系企業が持っている低炭素技術や脱炭素技術は世界的に見ても大きな強みと言えます。一方で、RE100(※1)にしてもCDP(※2)にしても、ルールメイキングのイニシアチブはヨーロッパの国々がとってきました。日系企業が持つ高度な技術を、例えば削減貢献量(※3)という形で世界に発信し、かつ、ルール化して国際的に広げていくことができれば、日本がリーダーシップを発揮できる可能性は充分にあるはずです。

※1 「Renewable Energy 100%」の略称。事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的イニシアチブ。イギリスの国際環境NGOが2014年に創設した。
※2 Carbon Disclosure Project。イギリスの慈善団体が管理するNGOであり、投資家、企業、国家、地域、都市が自らの環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営している。2000年発足。
3 従来使用されていた製品・サービスを自社製品・サービスで代替することによる、サプライチェーン上の「削減量」を定量化する考え方。

バックキャストで気候変動問題に取り組む

池ヶ谷:
GXリーグの活動がスタートして1年が経過しました。現時点での手応えはいかがですか。

梶川さん:
日本のCO2排出量の4割以上に当たる多くの企業にご賛同いただき、先ほどお話に挙がった「日本がとるべきリーダーシップのあり方」に関してさまざまなご提案をいただきました。2022年度のGXリーグでは、主に3つの取り組みの場を設けました。まず、2050年カーボンニュートラルが実現した未来の経済社会システムをビジネス機会として描き、官民のルールメイキングや賛同企業の中長期の経営戦略などへの活用をめざした対話の場「GX FUTURE MAP(未来像策定ワーキンググループ)」。次に、将来のビジネス機会を踏まえ、新市場創造に向けて官と民でルール形成を行う「GX WORKING GROUP」。そして、GXリーグにおける自主的な排出量取引の設計を検討する「GX-ETS」です。それぞれのワーキンググループで、社会に対して異なるアウトプットの創出をめざしています。

画像: バックキャストで気候変動問題に取り組む

池ヶ谷:
根本さんは昨年度、未来像策定ワーキンググループを担当されていました。活動を振り返ってみていかがですか。

根本さん:
当初は小規模で活動する想定だったのですが、100社を超える企業が手を挙げてくださり、どうやって進行していこうか戸惑うという嬉しい悲鳴が出るほどでした。ありがたいことに、そのうち40社近くの方から「事務局の進行をサポートしたい」という声をいただきました。実際にワーキンググループが始まると、与えられた情報を受け取るだけでなく、自ら新しい切り口で問題を捉え直すことに積極的な方が多く、まさにリーダーシップの新しいあり方を垣間見ました。

画像: 博報堂 根本かおりさん

博報堂 根本かおりさん

池ヶ谷:
未来像策定ワーキングの取り組みは、一種のバックキャストの手法という印象を受けました。

梶川さん:
そうですね。わたし自身が普段携わっている政策策定の業務の多くは、目の前にある社会課題に対し、制度的な措置を講じながら解いていくフォアキャストの手法をとっています。一方で気候変動の問題に対しては、2050年のカーボンニュートラル実現という30年近く未来の課題を見据えて政策の策定に取り組めるわけですから、自ずとバックキャストの手法をとることになります。

2050年にどんなビジネス機会が生まれているかを、企業の皆さんとともに考える――これまでの政策策定ではあまりやってこなかったアプローチだからこそ、取り組む意義は大きいと感じています。

「20の洞察」、6つの「GX未来社会」

池ヶ谷:
先ほど根本さんからお話のあった未来像策定ワーキンググループには、実はわたし自身もプレーヤーとして参加し、賛同企業の方々と議論をさせていただきました。取り組みの全体像について、昨年度事務局を担当されていた根本さんからご紹介いただけますか。

根本さん:
未来像策定ワーキンググループでは、2050年にカーボンニュートラルを実現した社会や人々の生活を描くという活動をしています。気候変動問題では、設定された目標にどれだけ近づけるかがクローズアップされがちです。このワーキンググループでは、設定された目標への対応という観点だけでなく、一人ひとりのメンバーが一個人として「こんな社会を実現したい」という「思い」を臆さず出し合うことを大切にしました。個人レベルでは空想に過ぎない「発想」でも、人数が集まることで「構想」に成長し、やがて「実装」に近づいていくのではないか――そう信じて、皆さんと丁寧に対話を重ねながら「未来像」をつくり上げました。

気候変動に関する社会要請をしっかり整理した上で、まずはできるだけ生活者視点で考え、一人ひとりの暮らしの変化に力点を置いて未来の社会像を描くように努めました。さらに、描いた未来社会において具体的にどのようなビジネスが機能しているのか、技術開発や政策はどのような状況になっているのか、一つひとつを掘り下げて議論し、それらをひも付けて「20の洞察」にまとめました。

画像: 「20の洞察」、6つの「GX未来社会」

さらに「20の洞察」をグルーピングした上で、創出されるGXの事業機会を6つの「GX未来社会」として導き出しました。これらのアイデアを、行政は政策に、企業は中長期の経営戦略や事業開発などに反映していただくことを想定しています。

「CO2経済圏」「国民総発電」「オフりびと」

根本さん:
「20の洞察」の中から、代表的なものをいくつかご紹介します。まずは「CO2排出量が経済活動の価値軸になる『CO2経済圏』が誕生」。CO2に関するあらゆることが可視化される。それが当たり前になり、なおかつ、個人の幸せにつながっている――例えば、CO2排出量削減のリテラシーが各個人に定着している社会を描きました。

画像1: 「CO2経済圏」「国民総発電」「オフりびと」

次に、「国民総発電を実現するエネルギーインフラが生まれる」。イメージしているのは、国民全員で創エネできる社会です。さらに、個人間でのエネルギーの売買も当たり前に行われるようになり、それを仲介するプラットフォームが必要になっていきます。

画像2: 「CO2経済圏」「国民総発電」「オフりびと」

3つ目は、「『国民総発電』を実現するエネルギーインフラが生まれる」。仮想通貨などによる取引で資産が1億円以上になった人を意味する「億り人」というネットスラングがあります。いわば、その「CO2削減価値取引」バージョンを意味する造語「オフりびと」がどんどん生まれる。国民全員が積極的に環境価値で企業を評価する、トレーダーになっていく。そんな社会を描いています。

画像3: 「CO2経済圏」「国民総発電」「オフりびと」

「GX未来社会」×「20の洞察」

鈴木:
我々日立の研究開発グループでも、実は未来像策定ワーキンググループに近いアプローチで「未来洞察」に取り組んでいます。また、日立全体としては「プラネタリーバウンダリー(※)」と「ウェルビーイング」双方の観点からの価値提供をめざしています。今ご紹介いただいた「20の洞察」は、GXで社会全体と個人がどう変化するかをさまざまな角度から描いている点で、非常に示唆に富んでいると感じました。

※ Planetary Boundaries:環境学者のヨハン・ロックストーム博士などが提唱した9つの地球の限界値。

梶川さん:
「20の洞察」については、「こういう未来は確かにあり得そうだな」と思えるものから「これ、本当に実現するの?」といったものまで、非常に幅広いアイデアが生まれました。次の段階としては、「20の洞察」を実行に移すために、各事業領域や各企業において「こんな取り組みができるのではないか」という具体にまでブレイクダウンした議論が求められます。

画像1: 「GX未来社会」×「20の洞察」

池ヶ谷:
「20の洞察」は、企業の事業企画部門をはじめ、イノベーション創出に関わる方やクリエイター、R&Dの方にとっても非常に多くのヒントが詰まっています。6つの「GX未来社会」――つまり製品・サービスの供給者の視点から見た未来事象と、「20の洞察」――生活者の視点から見た未来の兆しとを掛け合わせて強制発想することで、新たな事業アイデアがどんどん生まれるのではないでしょうか。

画像2: 「GX未来社会」×「20の洞察」

個人の意思決定のプロセスは、次のフェーズへ

鈴木:
未来像策定ワーキンググループの取り組みを伺って、エネルギーインフラの使用における個人の意思決定のプロセスが次のフェーズに進んだような感じがしました。先日、Z世代の方々とワークショップを行ったときに、「使用する電気を個人が選べられないのはなぜ?」という問題提起がありました。だれがどこでつくった電気なのか、どんな品質の電気なのかを知った上で、使用する電気を選べる――そんな状態が当たり前になってくると、国民の価値観に応じてエネルギーシステムのあり方も変化していくのではないでしょうか。

画像: 個人の意思決定のプロセスは、次のフェーズへ

日立はこれまで、エネルギーシステムを支えるデバイスやソフトウェアを提供してきました。仮に、エネルギーシステムそのものが従来とはまったく違う形に変化した場合、研究開発の分野では何をしなければいけないのか。未来像からブレイクダウンして、我々がやるべきことを考えなくてはいけないと、あらためて強く感じました。

池ヶ谷:
近年注目を集めているWeb3.0(※)のように先進的なデジタル技術が登場したことで、一部の企業しか生み出せなかったエネルギーを、一個人が生産し、売買できるようになる――充分に実現の可能性があるお話だと思います。

※ブロックチェーン技術を基盤とした、価値の共創・保有・交換を行う経済圏。

画像: 日立製作所 池ヶ谷和宏

日立製作所 池ヶ谷和宏

環境関連ファイナンスの今

池ヶ谷:
「未来像策定ワーキンググループ」が抽出した「20の洞察」には、カーボンクレジットに代表されるような環境価値取引の活性化も含まれています。生活者をはじめ、企業や金融機関など多くのステークホルダーが積極的にGX投資を行って環境価値を生み出すことで、気候変動問題の解決に貢献しながら経済の成長に寄与するといった取り組みが将来的に求められるという印象を受けました。

梶川さん:
気候変動問題に対する取り組みは1社だけではできないですし、行政だけでもできません。さまざまなステークホルダーが参画していけるためのDXが欠かせませんし、なおかつ、だれもが楽しく取り組める必要があります。

中でも家庭部門におけるCO2削減は困難です。生活者一人ひとりの環境に対する意識が変化しない限り、CO2を削減しようという行動は起きません。例えば、個人がカーボンクレジットを創出することで「GXに取り組むと儲かるんだね」という手応えを得れば、一人ひとりの行動変容につながります。まずは企業向けの取り組みではあるのですが、経済産業省が東京証券取引所に委託して、カーボンクレジット市場の実証実験も行いました。

根本さん:
気候変動問題にどう取り組むかを自社だけで考えていると、設定されている目標の重さなどにより、個人レベルでの「前向きな未来」が描きづらい――そういう方が多いと思います。企業視点での未来像をまずは取り払って、個人としての本音でさまざまな業界の方々と議論することで、「こういう未来をつくりたいよね」「こういう取り組みがしたいよね」という発想が芽生える。そこに、自分もコミットしたいと強く思うことが、CO2削減の取り組みの次の一歩――同じ問題意識を持った仲間が増え、仕組みを形成していくという動きにつながると思うのです。そのためには何より、個人として「こんな未来を実現したい」と強く思えるかどうかが重要です。

画像: 環境関連ファイナンスの今

梶川さん:
CO2削減に対する企業のモードチェンジは、この数年で大きく加速したという印象があります。また、GX投資もかなり進んできています。ただ、まだまだGX投資がコストだと捉えられているケースが多いように感じます。GX投資によってどんなリターンが得られるかをしっかり議論することが、グリーンを取り巻く市場の確立には欠かせません。

いくら企業努力を重ねて、CO2を排出せずに製品をつくったとしても、従来の製品よりも機能や性能が優れているわけではない。そこまでしてGX投資をする意味はあるのか――そういう声も聞かれます。しかし、その製品がもたらす環境価値をしっかりと可視化して顧客企業なり消費者なりに認識してもらうことが非常に大切だと思うのです。そのときに、カーボンフットプリントの算出を可能にするテクノロジーが役立つのではないでしょうか。

※Carbon Footprint of Product。原材料調達から生産、流通・販売、使用・維持管理、廃棄・リサイクルなどを通じて排出されるCO2やメタン、一酸化炭素、フロンガスなどの温室効果ガスの排出量をCO2に換算し、商品やサービスにわかりやすく表示する仕組み。

鈴木:
「20の洞察」では、CO2削減を起点に、2050年における働き方や出会い方、ゲーム、スポーツとまさに多様な観点から未来像が描かれており、そこに大きな可能性を感じます。例えば、太陽光パネルを山林の土壌に敷き詰めたときに、生物多様性は保てるのか、森林への悪影響はないのか……といったように、人々の関心の対象が広がっていく。ポジティブなサイクルが回ることで、CO2を削減に対する世の中の関心が高まっていくと素晴らしいと思いました。

日系企業のGX投資を加速させるために

池ヶ谷:
GXリーグの今後の活動についてはどんな展望をお持ちですか。

梶川さん:
めざしているのは、官民合わせて150兆円超のGX投資を引き出すことです。中でも2050年のカーボンニュートラルに向けた取り組みは非常に不確実性が高く、新たな技術の開発が必要とされています。

2022年12月に、政府全体で「成長志向型カーボンプライシング構想」をまとめ、10年間における政策のロードマップを描きました。GX投資に関する企業にとっての予見可能性(※1)を高めることが狙いの1つです。企業のGX投資を引き出す手段は、大きく2つあります。アメリカのIRA(Inflation Reduction Act※2)のように企業にGX投資の強いインセンティブを与える。もう1つが、ヨーロッパのようにCO2排出量に関する厳しいレギュレーションを設け、それをクリアするためのGX投資を加速させるというやり方です。

※1 危険な事態や被害が発生する可能性があることを事前に認識できること。
※2 米国インフレ抑制法。2022年8月にアメリカで成立した、過度なインフレを抑制すると同時にエネルギー安全保障や気候変動対策を迅速に進めることを目的とした法律。

画像1: 日系企業のGX投資を加速させるために

我々が構想している手法は、それらのハイブリッドです。まずは、経済移行債という国債を発行し、企業のGXへの取り組みを支援します。その上で、5年後と10年後からカーボンプライシング(※)をスタートさせることをあらかじめ示します。つまり、より早期にGXを実現した企業ほど、長期的に見て負担が少なく済むという仕組みです。これによって、2022年からの10年間で150兆円を超えるGX投資を実現したいと考えています。一度仕組みをつくったら終わりではなく、産業界とも対話を続けながら、つねに適切な政策を講じ、ロードマップを更新していく必要があります。

※企業などの排出するCO2に価格をつけ、それによって排出者の行動を変化させるために導入する政策手法。

池ヶ谷:
根本さんは広告産業に携わる身として、社会における脱炭素の機運を高めるために今後どんな取り組みをしていきたいですか。

根本さん:
わたし自身にとって、GXへの取り組みはようやくスタート地点に立った段階です。未来像策定ワーキンググループで描いた「20の洞察」と「GX未来社会」にしても、答えではなく、事業を考えるためのヒントに過ぎません。GXリーグで得た知見や気づきをわたしなりに自分の領域に持ち帰って、新事業につながる新しい切り口をどんどん広げていきたいと考えていますし、社内の有志で集まって事業開発の検討も始めています。今後も個人の意思を引き続き大事にしながら、業界として、個人として、何ができるのかを模索し続けていきたいと考えています。

池ヶ谷:
鈴木さんは日立の研究開発に携わる立場として、将来取り組みたいことはありますか。

鈴木:
2050年のカーボンニュートラルの実現には技術的イノベーションが不可欠です。例えばNEDOのグリーンイノベーション基金などを活用することで、日立にもまだまだできることがあると感じています。また、GXに取り組んでいる企業に対して、一般市民が「この企業はグリーンだから応援したいね」と支援できるプラットフォームの構築に、日立のデジタルテクノロジーで貢献できたらと思っています。

画像2: 日系企業のGX投資を加速させるために

池ヶ谷:
2050年のカーボンニュートラル実現に向け、生活者の意識もどんどん変わってきていると思いますし、変化のスピードも増しているように感じます。企業の皆さんにはこの状況を是非チャンスと捉えていただき、新しい事業やイノベーションを起こしていただきたいなと思います。本日はありがとうございました。

画像: 協創の森ウェビナー:第16回 鼎談「GXリーグで描かれた将来像と鍵を握る環境関連ファイナンス」- 日立 www.youtube.com

協創の森ウェビナー:第16回 鼎談「GXリーグで描かれた将来像と鍵を握る環境関連ファイナンス」- 日立

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画像1: 未来像策定ワーキングから見えたファイナンスの可能性│協創の森ウェビナー第16回 「脱炭素へ導く環境関連ファイナンス 」プログラム1「GXリーグで描かれた将来像と鍵を握る環境関連ファイナンス」

梶川文博
経済産業省 産業技術環境局 環境経済室長(ウェビナー開催当時)

2002年、経済産業省に入省。中小企業金融、IT政策、デザイン政策、経済成長戦略の策定、産業競争力強化のための人材育成・雇用政策、省内の人事企画・組織開発、ヘルスケア産業育成、マクロ経済の調査分析などに携わる。一般社団法人Future Center Alliance Japanの理事を兼務。

画像2: 未来像策定ワーキングから見えたファイナンスの可能性│協創の森ウェビナー第16回 「脱炭素へ導く環境関連ファイナンス 」プログラム1「GXリーグで描かれた将来像と鍵を握る環境関連ファイナンス」

根本かおり
博報堂 ブランド・イノベーションデザイン局 イノベーションプラニングディレクター

広告づくりの現場で自動車、化粧品、家庭用品など、多岐に渡る業界の広告マーケティングやブランディングにたずさわる。その経験を活かし、活動フィールドを生活者発想・未来発想に軸足を置いた事業・商品・人材開発、プラットフォームづくりなどにうつして活動中。東京工業大学「未来社会DESIGN機構」委員、日本科学技術振興機構「サイエンスアゴラ」委員、環境省「2050年を見据えた地域循環共生圏検討業務」委員。

画像3: 未来像策定ワーキングから見えたファイナンスの可能性│協創の森ウェビナー第16回 「脱炭素へ導く環境関連ファイナンス 」プログラム1「GXリーグで描かれた将来像と鍵を握る環境関連ファイナンス」

鈴木朋子
日立製作所 研究開発グループ 技師長

1992年日立研究所入社。入社以来、水素製造システム、廃棄物発電システム、バラスト水浄化システム等、一貫して脱炭素・高度循環・自然共生社会の実現に向けたシステム開発に従事。2018年からは、顧客課題を起点とした協創型事業開発において事業拡大シナリオを描くビジネスエンジニアリング領域を立ち上げ、現在は、社会課題を起点とした研究開発戦略の策定と事業化を推進する環境プロジェクトをリードする。

画像4: 未来像策定ワーキングから見えたファイナンスの可能性│協創の森ウェビナー第16回 「脱炭素へ導く環境関連ファイナンス 」プログラム1「GXリーグで描かれた将来像と鍵を握る環境関連ファイナンス」

池ヶ谷和宏
日立製作所 研究開発グループ サステナビリティ研究統括本部
プラネタリーバウンダリープロジェクト 主任デザイナー(Design Lead)

日立製作所入社後、エネルギー、ヘルスケア、インダストリーなど多岐にわたる分野においてUI/UXデザイン・顧客協創・未来洞察に従事。日立ヨーロッパ出向後は、主に環境問題を中心としたサステナビリティに関わるビジョンや新たなデジタルサービスの研究を推進している。

プログラム1「GXリーグで描かれた将来像と鍵を握る環境関連ファイナンス」
プログラム2「環境関連ファイナンスを後押しするデジタルプラットフォームの研究」
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