※記事文章内に記載の登壇者の所属、役職などはウェビナー開催時(2023年6月16日時点)のものです
プログラム1「GXリーグで描かれた将来像と鍵を握る環境関連ファイナンス」
プログラム2「環境関連ファイナンスを後押しするデジタルプラットフォームの研究」
プログラム3 パネルディスカッション「グリーン・デジタル・トラック・ボンドの開発と今後の展望」
※以下は、上に掲載しております動画のサマリー記事となっております。動画の内容詳細については「Executive Foresight Online」からテキストでお読みいただけます。
100社以上が参加した未来像策定ワーキング
まずは梶川さんから、GXリーグの基本構想と概要について説明がありました。
GXリーグはカーボンニュートラルへの移行に向けた挑戦を果敢に行い、国際ビジネスで勝企業群が経済社会システム全体の変革(GX:グリーントランスフォーメーション)を牽引する枠組みであり、
- 企業が世界に貢献するためのリーダーシップのあり方を示す
- GXとイノベーションを両立し、いち早く移行の挑戦・実践をした者が、生活者に選ばれ、適切に「儲ける」構造を作る
- 企業のGX投資が、金融市場、労働市場、市民社会から応援される仕組みを作る
といった3つの柱で活動しています。
1 のリーダーシップのあり方について、梶川さんは、「今後、日本の企業が脱炭素技術を「削減貢献量」という考え方で提案し、それをルールとして国際的に拡げていくことは可能だ」との考えを示しました。
GXリーグの事務局として、2050年のカーボンニュートラルが実現した未来の社会を描く未来像策定ワーキングに携わった根本さんは、未来像策定ワーキングに100社を超える応募があり、さらに半数近くの社が進行サポートに手を挙げたことへの驚きや、そうした動きそのものに、自分で切り拓きゼロから作っていくリーダーシップを感じた、と振り返りました。
梶川さんは、一般的に政策はフォアキャストで立案することが多いが、未来像策定においてはバックキャストで検討していくことが重要であった、と述べました。
未来像策定ワーキングでまとまった20の洞察と6つの事業機会
2050年のカーボンニュートラルを実現した社会に対し、未来像策定ワーキングでは、プレイヤー一人ひとりの「こういう社会を実現したい」という思いを臆せず出し合い、対話を重ねて最終的に20の洞察としてまとめ上げました。
根本さんは、20の洞察の具体例の一つとして、CO2の排出量が経済活動の価値軸になりCO2経済圏が誕生するという洞察を紹介。CO2に関するあらゆることが可視化され、それが当たり前になった世界では、それが個人の幸せにどう繋がるのか、個人レベルのリテラシーがどう当たり前に身の回りのインフラとして取り入られているのかなど、領域に縛られず横断的に検討したことを明かしました。
一方、鈴木が注目したのは意思決定の方法の変化です。
例えば従来のエネルギーシステムは国と電力会社からのトップダウンで作ってきたが、これからは国民の価値観や意思によって徐々に形を変えていくのではないか、そうなった時にエネルギーシステムを提供している日立としても研究開発分野で何をすべきかについての示唆に富んだアウトプットを得ることができた、と語りました。
さらに、国民総発電になった時のシナリオを強制的に考えることで、個人間の売買を仲介するプラットフォームとして何が必要なのか、という視点が生まれ、見えてくるものがあるのではないか、と今後の展望についても語りました。
10年間、20兆円規模のGX経済移行債で投資を引き出す
対話の終盤は、GX投資で見出した環境価値をどう経済的に回していくかとの問いから議論が深まりました。梶川さんは、気候変動への取り組みは一社一国ではできず、いろいろな人が総力をかけ、しかも楽しくやる必要があると訴え、だからこそ個人の気持ちや行動を変容させていくためにも「GXをすると何かいいことがあるよね」「儲かるね」という仕掛けができるプラットフォームが出てくるとより浸透できるのでは、と希望を語りました。また、GX投資がいまだコストと捉えられる面もあるため、グリーンなマーケットにあるものの環境価値を見える化し、企業も消費者もそれを認識できる形にしていくことが大切である、と今後の課題にも触れました。
根本さんは、自社だけで考えると前向きな未来像が描きづらいと現状を指摘。「こういう未来に自分もコミットしたい」「実現したい」との思いを強く持つためには、さまざまな領域の方と本音レベルで話すことが必要だと述べました。そのうえで、今回の未来像策定ワーキングはスタートであり、自分の領域に持ち帰って自分の業界として何ができるのかを、個人の思いや意思も大事にしながら検討し続けたい、との思いを明かしました。
今後10年で150兆円ともいわれるGX投資をどう引き出すかについて、梶川さんは、日本のやり方はインセンティブ重視のアメリカ型と厳しい規制を強いるヨーロッパ型の組み合わせであると述べ、将来のカーボンプライシングを明示した上で、これからの10年間で20兆円規模のGX経済移行債による財政支援を行なって、投資を引き出していきたいと、今後の方向性を示しました。
それを受けて鈴木は、グリーンイノベーション基金を活用しながら日立ができることに精力的に取り組むと同時に、市民が「この企業はグリーンだから応援したい」と思った時に応援できる仕組みをデジタルで整備したいと意欲を語りました。
――次回はエネルギーソリューション事業統括本部 技師 タマヨ エフラインと、サービスシステムイノベーションセンタ リーダ主任研究員 親松昌幸が、「環境関連ファイナンスを後押しするデジタルプラットフォームの研究」についてお伝えします。
梶川文博
経済産業省 産業技術環境局 環境経済室長(ウェビナー開催当時)
2002年、経済産業省に入省。中小企業金融、IT政策、デザイン政策、経済成長戦略の策定、産業競争力強化のための人材育成・雇用政策、省内の人事企画・組織開発、ヘルスケア産業育成、マクロ経済の調査分析などに携わる。一般社団法人Future Center Alliance Japanの理事を兼務。
根本かおり
博報堂 ブランド・イノベーションデザイン局 イノベーションプラニングディレクター
広告づくりの現場で自動車、化粧品、家庭用品など、多岐に渡る業界の広告マーケティングやブランディングにたずさわる。その経験を活かし、活動フィールドを生活者発想・未来発想に軸足を置いた事業・商品・人材開発、プラットフォームづくりなどにうつして活動中。東京工業大学「未来社会DESIGN機構」委員、日本科学技術振興機構「サイエンスアゴラ」委員、環境省「2050年を見据えた地域循環共生圏検討業務」委員。
鈴木朋子
日立製作所 研究開発グループ 技師長
1992年日立研究所入社。入社以来、水素製造システム、廃棄物発電システム、バラスト水浄化システム等、一貫して脱炭素・高度循環・自然共生社会の実現に向けたシステム開発に従事。2018年からは、顧客課題を起点とした協創型事業開発において事業拡大シナリオを描くビジネスエンジニアリング領域を立ち上げ、現在は、社会課題を起点とした研究開発戦略の策定と事業化を推進する環境プロジェクトをリードする。
池ヶ谷和宏
日立製作所 研究開発グループ サステナビリティ研究統括本部
プラネタリーバウンダリープロジェクト 主任デザイナー(Design Lead)
日立製作所入社後、エネルギー、ヘルスケア、インダストリーなど多岐にわたる分野においてUI/UXデザイン・顧客協創・未来洞察に従事。日立ヨーロッパ出向後は、主に環境問題を中心としたサステナビリティに関わるビジョンや新たなデジタルサービスの研究を推進している。
プログラム1「GXリーグで描かれた将来像と鍵を握る環境関連ファイナンス」
プログラム2「環境関連ファイナンスを後押しするデジタルプラットフォームの研究」
プログラム3 パネルディスカッション「グリーン・デジタル・トラック・ボンドの開発と今後の展望」