Hitachi
お問い合わせお問い合わせ
日立製作所研究開発グループが実施するオンラインイベントシリーズ「協創の森ウェビナー」。「サイバーシステムの社会実装とその課題」をテーマとした第17回のプログラム2では、「持ち寄り経済」というキーワード」を提唱されている慶應義塾大学 総合政策学部 國領二郎教授をお招きして、研究開発グループ サイバーシステム社会実装プロジェクト プロジェクトリーダ 佐藤暁子と、「サイバーシステムによる人々の活躍と持ち寄り経済圏」をテーマに議論を行います。ナビゲーターは、研究開発グループ デザインセンタの高田将吾です。

プログラム1「サイバーシステムの社会実装とその課題」
プログラム2「サイバーシステムによる人々の活躍と持ち寄り経済圏」
プログラム3「サーキュラーエコノミーの未来」

画像: 協創の森ウェビナー:第17回 対談「サイバーシステムによる人々の活躍と持ち寄り経済圏」- 日立 youtu.be

協創の森ウェビナー:第17回 対談「サイバーシステムによる人々の活躍と持ち寄り経済圏」- 日立

youtu.be

※以下は、上に掲載しております動画のサマリー記事となっております。動画の内容詳細については「Executive Foresight Online」からテキストでお読みいただけます。

デジタル経済に必要な統治機構とは

画像: 「私はもともと文科系。社会や経済ダイナミクスの中でテクノロジーがどのような役割を果たすかを追いかけてきた」と國領先生

「私はもともと文科系。社会や経済ダイナミクスの中でテクノロジーがどのような役割を果たすかを追いかけてきた」と國領先生

「今日はとても素敵な空間に呼んでいただいて、皆さまともリアルとネットで交流できることを嬉しく思っています」と話すのは、慶応義塾大学 総合政策学部 教授の國領先生。國領先生が「持ち寄り経済」で語っていることが、当社が定義する「サイバーシステム」と非常に近しいのではないかと考え、今回のウェビナーにゲストとしてご登壇いただきました。

対談の相手は研究開発グループ サイバーシステム社会実装プロジェクト プロジェクトリーダ 佐藤暁子。佐藤は、日立製作所 中央研究所に入社後、主にデジタルシティ、スマートシティについて研究してきました。

國領先生と佐藤の二人が、デジタル経済の特性が工業の経済の特性と大きく異なっている現実をふまえ、「近代工業文明とは異なる統治機構が必要な時代になってきているのではないか」を主要な論点に、議論を深めました。

持ち寄り経済が求められている4つの理由

画像: 自分の持っているものを持ち寄り、個人が社会に貢献していく「持ち寄り経済」について語る國領先生

自分の持っているものを持ち寄り、個人が社会に貢献していく「持ち寄り経済」について語る國領先生

いま持ち寄り経済が求められている背景は4つある、と國領先生。ネットワークの外部性、マージナルコストの低さ、世の中が複雑系になっていること、トレーザビリティの発展、といった4つの背景について語りました。

一方、これまで人に寄り添った形での社会実装について議論を重ねてきた日立製作所メンバー。佐藤は「コロナが、大量生産、大量消費のマーケットからの変化を加速させた」と指摘します。コロナ禍を経て個々の価値観や生活スタイルの多様化が顕在化したことを受け、「一人ひとりの生活者に寄り添ったものを作っていかないと、いずれ全員に選ばれないサービスになってしまうのではないかと思います。その中でいかに生活者視点に立ち、顧客と対話を繰り返すことでサービスに対して信頼を寄せてもらえるかできるかがポイントになる。」と述べました。

画像: 生活者に寄り添うためにサイバーシステムは欠かせない、と語る佐藤

生活者に寄り添うためにサイバーシステムは欠かせない、と語る佐藤

サイバーシステムの社会実装。鍵は「プライバシー保護」と「信頼」

画像: 社会実装を進める上での障壁をどう乗り越えるかについての議論は白熱した

社会実装を進める上での障壁をどう乗り越えるかについての議論は白熱した

続いて話題は社会実装を進める上での障壁について。國領先生は、「個人のプライバシーも守りたいが、データを共有することで価値が生まれるというジレンマをどう解くか」をポイントに挙げ、「国を中心としたプライバシーの保護」、「企業を中心としたプライバシーの保護」、「個人を中心としたプライバシーの保護」の3つのシナリオを示しました。一方の佐藤は、「信頼」をキーワードに挙げ、データ提供への価値観変化、データを提供する立場としての、お客さまへの価値提供や生活者目線での説明の重要性について語りました。

コミュニティの中に文化を形成できるか

國領先生は現在、群馬県前橋市で「共助のまちづくり(めぶくwith Trust)事業」に携わり、「Digital Green City 前橋」で、自己主権型の属性データも含めたIDを社会実装させようとしています。

高田の「実際の現場では、ジレンマに対してどのような対応が進んでいるか」との問いに対し、國領先生は、ユーザーがデータ連携の可否を決定して証明書を発行できる仕組みや、地域通貨を活用してデータ提供のインセンティブを上げる工夫について語り、こうした仕組みの活用が地域コミュニティでの共助を促進する可能性について触れました。國領先生の発言を受け、佐藤は共助型社会の形成には一対一の対話型コミュニケーションが有効であるとの考えを示しました。

画像: 前橋市ホームページより転載。「ダイナミックオプトイン」は、ユーザーが信頼した会社にのみ情報提供をするしくみ。データ連携する会社をユーザーが指定できるというもの。後々、許可から拒否に変更することも可能。 www.city.maebashi.gunma.jp

前橋市ホームページより転載。「ダイナミックオプトイン」は、ユーザーが信頼した会社にのみ情報提供をするしくみ。データ連携する会社をユーザーが指定できるというもの。後々、許可から拒否に変更することも可能。

www.city.maebashi.gunma.jp

対話を振り返り、國領先生は、「私たちがどのような社会を作っていきたいか議論を深めていくことが重要」とし、新しいテクノロジーのシーズが持つ意味や可能性を意識しつつ、技術側と社会側が共進化していく未来への展望を語りました。

佐藤は、「今後は日立一社に留まらない知見や体験を共にまとめ、新たなナラティブやストーリーを作り上げていきたい」とパートナーとの協創による未来への展望を語りました。

参加者とのQ&A

画像: 協創の森ウェビナー初となる「オーディエンスあり」の収録となった今回の対話。終盤は活発な質疑応答が参加者と登壇者の間で交わされた

協創の森ウェビナー初となる「オーディエンスあり」の収録となった今回の対話。終盤は活発な質疑応答が参加者と登壇者の間で交わされた

サイバーシステムの社会実装を進めるにあたっての合意形成に悩んでいる、との質問に対して、佐藤は「アナログで地道に対話していくことが大切。一方で、どんなものを見せると伝わるかという部分はスケーリングできるのでは」と自らの経験を元に語りました。また、國領先生からはデータガバナンスを徹底し、それを伝えることで信頼につながるとの指摘がありました。

信頼感をもってデータを扱える人財を育成していくには?との質問に対しては、佐藤は、それはどういう人財なのか?どうすれば育成できるのか?の両面で考えていくべき、と述べました。國領先生は、技術系でない人たちのテクノロジー理解を進め、文化系と技術系に共通の言語体系を作ることが必要、と異なる専門領域間の対話のためのポイントについて語りました。

次回は、「人とAIが共進化する社会に向けて」をテーマに、株式会社エキュメノポリス 代表取締役 松山洋一 氏をお迎えして、先端AIイノベーションセンタ 主任研究員 間瀬正啓との対談を行います。人々が安心安全にAIを使い、能力を発揮していくために必要なこととは。

画像1: サイバーシステムが欠かせない時代に求められる統治機構とは│協創の森ウェビナー第17回 「サイバーシステムの社会実装とその課題」プログラム2「サイバーシステムによる人々の活躍と持ち寄り経済圏」

國領二郎
慶應義塾大学 総合政策学部 教授 

1982年、東京大学経済学部卒、日本電信電話公社(現・NTTグループ)入社。1992年、ハーバード・ビジネス・スクール経営学博士。慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授、同大学環境情報学部教授、同大学総合政策学部長、慶應義塾常任理事などを歴任。2006年より現職。主な著書に『オープン・ネットワーク経営』(日本経済新聞社,1995年)『オープン・アーキテクチャ戦略』(ダイヤモンド社,1999年)『オープン・ソリューション社会の構想』(日本経済新聞社,2004年)『ソーシャルな資本主義』(日本経済新聞出版社,2013年)、『サイバー文明論 持ち寄り経済圏のガバナンス』(日本経済新聞出版,2022年)など。

画像2: サイバーシステムが欠かせない時代に求められる統治機構とは│協創の森ウェビナー第17回 「サイバーシステムの社会実装とその課題」プログラム2「サイバーシステムによる人々の活躍と持ち寄り経済圏」

佐藤暁子
株式会社 日立製作所 研究開発グループ サイバーシステム社会実装プロジェクト プロジェクトリーダ(兼)サービスシステムイノベーションセンタ 副センタ長

1998年日立製作所入社、中央研究所にてICカード管理システム、地図情報システムなどの研究開発に従事、2015年から日立アジアシンガポール社にて、タイのスマートシティ、ベトナムのコールドチェーンに関するプロジェクトに参画、2018年に社会イノベーション協創センタにて顧客協創活動に従事、2020年 戦略企画本部 経営企画室 部長を経て、 2023年より現職。情報処理学会、研究・イノベーション学会所属

画像3: サイバーシステムが欠かせない時代に求められる統治機構とは│協創の森ウェビナー第17回 「サイバーシステムの社会実装とその課題」プログラム2「サイバーシステムによる人々の活躍と持ち寄り経済圏」

高田将吾
日立製作所 研究開発グループ デザインセンタ ストラテジックデザイン部 デザイナー 

日立製作所に入社後、都市・交通領域におけるパートナー企業との協創をサービスデザイナーとして推進。

プログラム1「サイバーシステムの社会実装とその課題」
プログラム2「サイバーシステムによる人々の活躍と持ち寄り経済圏」
プログラム3「サーキュラーエコノミーの未来」

This article is a sponsored article by
''.