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現状のフリマアプリの利用は「いまある物を売ってお金を得たい」という動機が主流ですが、大人たちを見て育ち、二次流通が当たり前の世界を生きる子どもたちはこの先どんな未来を描いていくのでしょうか。Vol.3ではこれまで出てきた話題を振り返りながら、循環型社会の未来について、メルカリデザインの宮本麻子さん、山田静佳さん、岩部真和さんと、日立製作所研究開発グループ デザインセンタの伴真秀、井口匠、神崎将一が語り合います。

[Vol.1] 物を買うこと、手放すことの価値観はどう変わるか
[Vol.2]新たな価値観をもつ世代を循環型社会の主人公に
[Vol.3] サーキュラーエコノミーの未来

画像: 「親がメルカリを使うことが子ども世代に間接的にインパクトを与えているのでは?」と岩部さん

「親がメルカリを使うことが子ども世代に間接的にインパクトを与えているのでは?」と岩部さん

物の循環が生活に溶け込む

岩部さん:
ミレニアル世代以降の人たちは主に資産や金銭のインセンティブでメルカリをやっていたとしても、それを見ている子どもにとっては金銭的な部分は関係なく、いま家にある物が次の日には誰かのところへ渡ってくんだ、という体験が間接的なインパクトになっている気がします。現状は金銭的なインセンティブで動いている場合が多いとしても、それが回り回って環境や次の世代への貢献につながるという間接的なインパクトはあり得るんだな、と思います。

伴:
それが、宮本さんのおっしゃっていた「環境に良いプラットフォームだという過度な押し方はしない」ということにつながりそうですね。言わなくても、親世代から子ども世代へと、ずっと続けることでリテラシーとしてちゃんと芽生えてくるということに真実があるんだろうなあという気がします。

宮本さん:
多くの人にとって、メルカリの入り口は手軽にお金が稼げること。それはベースとして要です。それにプラスして、人とのつながりをちゃんと感じられること。全然知らない人から「これを売ってくれてありがとうございます」と言われるのは他ではまったくない体験です。つながりを感じられるように、商品の取引のコメントを見えやすくするといった小さな工夫の積み重ねで提供していく。そうやって、メルカリが生活に溶け込むことをめざしています。その結果、物が循環していく社会の実現にメルカリとして貢献できたら嬉しいですね。

画像: 対談の終盤は「生活に溶け込む」ことについて、さらに議論が進んだ

対談の終盤は「生活に溶け込む」ことについて、さらに議論が進んだ

各企業で担っている部分を対話でつなぎたい

伴:
「生活の中に溶け込む」ということは、メルカリさん一社だけのことではなく、僕らもそうあるべきですね。他のいろいろな会社でも同じことを思っていれば、ある一人の生活の中で、メルカリさんが担っている生活に浸透している循環のための仕組みがあり、日立が担っている部分があり……それがその人の暮らしの中で線としてつながっている状態を作り出せるかもしれません。今回の座談会のように、違う立場にいる人同士が話すことで、そのつながりを生み出すためのヒントが見えてくるのかもしれませんね。

井口:
2030年、40年になったとき、物を捨てることの規制がものすごく厳しくなったり、考えながら手放すようになった未来を想像したとき、メルカリさんとしてもう少し何かデザインできそうだと思うことはありますか。

宮本さん:
よりその循環を加速するために何ができるかというと、物ごとに循環のさせ方が違うので、そこに合わせていくことですね。たとえば、スマートフォンを売ろうと思ったときの困りごとと、何かブランド品を売ろうと思ったときの困りごとって違うんです。そこでいま、カテゴリーごと、コミュニティごとに売り買いの際のハードルや心地よさを徹底的にリサーチしています。どんな困りごとやハードルがあるのかを明らかにして、それに必要なソリューションを提供する。たとえばスマートフォンでいうと、売るときに一番心配なのはデータの消去方法です。ならばそのデータ消去のサービスと一緒に出品できるようにする、といったことをやっています。

画像: 井口は「少し先の未来を見据え、デザインしたいことは?」と問いかける

井口は「少し先の未来を見据え、デザインしたいことは?」と問いかける

物に対する解像度はますます上がる

井口:
たぶんこれから先、物に対しての解像度がどんどん上がっていくんじゃないかと思います。プラスチックじゃなくて紙の袋を選んだり、素材や物に対していろいろ考えるようになるじゃないですか。アイテムごとに素材も使い方も手放す動機も違うので、単純に丸ごと燃やせないゴミとして捨てたり売ったりするのではなくて、物ごとに手放し方を変えていくようになっていくのではないでしょうか。そのサービス側もそれを加速するようになるのかもしれませんね。

宮本さん:
私自身がメルカリでコーヒー豆を出品したときに、コーヒー豆の種類のタグがめちゃくちゃたくさん出てきたんですよね。「すごい、こんなことやってたんだ」って思いました。タグ付けすると見つけやすく、買われやすくなるんです。

井口:
タグ付けや他の人の売り方を見ることで、「こうやって売ってるんだな」とリテラシーが広がるのも、売り手を増やしていく上で大事なポイントですね。自分は詳しくないことも、誰かを真似してすぐにできるのも、一歩を踏み出す上では大事なのかもしれません。

画像1: 「日立さんは入口から出口までが長い」と山田さん

「日立さんは入口から出口までが長い」と山田さん

循環のことを、長いスパンで見ていてほしい

井口:
本日は、とても興味深いお話をありがとうございました。最後に、二次流通を手がけるメルカリのデザイナーである皆さんが、メーカーに所属する僕たちに期待することがあればぜひ教えてください。

岩部さん:
家電のような、BtoCの商品開発の話でいうと、手入れしやすいというのがひとつポイントだと思います。掃除しやすいと長く使えるので、掃除や手入れのしやすさがデザインに入ってくるとすごくいいなと思います。

山田さん:
日立さんって、企画構想する入口から世の中にローンチされる出口までが長いですよね。また、いまから未来にかけて見ている距離も長い。メルカリはごく短期間を見ているので「ぜひこれを小学校、義務教育で」という話にすると大げさかもしれませんが、日立さんは本当にやってくださりそうなので、期待しています。

宮本さん:
メルカリが単独で循環のことを考えてもやはりプロダクトの中で話が収まりがちなところがあります。もう少し長いスパンで、社会全体を巻き込んだ循環のあるべき姿を描けるのはビジョンデザインの研究をしている日立さんだからこそだと思うので、そういうことをやり続けてほしいですね。そうなると、私たちのやっていることも世の中の大きい流れのどこかにあると感じられて、自信をもてそうです。

画像2: 「日立さんは入口から出口までが長い」と山田さん

「日立さんは入口から出口までが長い」と山田さん

画像1: [Vol.3] サーキュラーエコノミーの未来│メルカリデザインメンバーと循環型社会を考える

宮本 麻子
株式会社メルカリ 

日立製作所に新卒で入社後、金融・電力・公共サービスに関わる情報デザインやサービスデザインの手法研究に従事。2018年にReaktor Japanに入社し、Agile・Scrum開発をベースにクライアントのプロダクト開発をサポート。2021年に株式会社メルカリに入社し、Product DesignとDesignOpsの企画・推進を担当している。

画像2: [Vol.3] サーキュラーエコノミーの未来│メルカリデザインメンバーと循環型社会を考える

山田 静佳
株式会社メルカリ

2016年より株式会社メルカリに入社以来、メルカリJPのUI/UXデザインを一貫して担当。自身がメルカリユーザーであることを活かし、UXデザイナーとしてプロダクト開発に関わりながら、デザインチームの貢献を最大化すべくDesignOpsの推進している。

画像3: [Vol.3] サーキュラーエコノミーの未来│メルカリデザインメンバーと循環型社会を考える

岩部 真和
株式会社メルカリ

2011年からデザイナーとしてキャリアをスタートし、2015年、グローバルに展開するデザインファーム、Designitに入社。リードデザイナーとして、戦略的デザイン、サービスデザイン、UXデザインなど、様々なデザインプロジェクトを担当。2022年より株式会社メルカリに入社。UXの視点からプロダクト開発に取り組みながら、カスタマーエクスペリエンスをいかにビジネスの成長につなげるかを探求している。

画像4: [Vol.3] サーキュラーエコノミーの未来│メルカリデザインメンバーと循環型社会を考える

伴真秀
日立製作所 研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部 デザインセンタ UXデザイン部

日立製作所入社後、コーポレートWEBブランディング、建設機械・IT運用管理システムのインタラクションデザインを担当。2011年より北米デザインラボを経て2015年より家電、ロボット・AI領域の将来ビジョンや地域活性に関するサービスデザインを担当。企画部門を経て、現在サーキュラーエコノミーに関するサービスデザイン研究に従事。

画像5: [Vol.3] サーキュラーエコノミーの未来│メルカリデザインメンバーと循環型社会を考える

井口匠
日立製作所 研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部 デザインセンタ ストラテジックデザイン部

日立製作所入社後、鉄道情報システム分野のUI・UXデザイン、顧客協創ツールの開発、生活家電分野のアドバンスドデザインとサービスデザインを担当。2020年から日立グローバルライフソリューションズに出向し、未来洞察を活用したビジョン駆動型のソリューション企画や顧客協創に従事。現在は事業創生研究をリード。HCD-Net認定 人間中心設計専門家。

画像6: [Vol.3] サーキュラーエコノミーの未来│メルカリデザインメンバーと循環型社会を考える

神崎将一
日立製作所 研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部 デザインセンタ ストラテジックデザイン部

2021年、日立製作所に入社。金融領域でのサービスデザインや地域から社会変容を促すデザインリサーチに従事。2022年より、生活に定着する資源循環の仕組みに関するリサーチスルーデザインに取り組んでいる。

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