Hitachi
お問い合わせお問い合わせ
未来の技術やビジョンを提示する場であると同時に、「未来をどう描くか」という想像力そのものが問われる場でもあった大阪・関西万博。Society 5.0に向かういま、私たちには、技術の革新がどんな生活の風景として立ち上がるのか、人と生成AIがどんな関係を結ぶのかといった新たな問いが生まれてきています。Vol.3では、Mirai TheaterにMCの「Milli(ミリ)」役として関わったテアトルアカデミー大阪校の姫野美翔さん、田中瑠夏さんが、それぞれの立場から万博全体をどう見ていたのか、どんな展示に「未来」を感じたのかを振り返ります。さらに、これから社会に出ていくZ世代の2人が、Society 5.0の実現に何を期待し、何に不安を感じているのか、日立製作所 研究開発グループ 未来社会プロジェクト サブリーダの沖田英樹と語り合います。

[Vol.1]Society 5.0の社会を仮想体験する
[Vol.2] Mirai Theater から見えてきた、市民による合意形成のあり方
[Vol.3] 大阪・関西万博が描いた未来社会のデザイン

画像: 184日間に及ぶ関西・大阪万博は、内側から関わった2人にどう映ったのだろうか

184日間に及ぶ関西・大阪万博は、内側から関わった2人にどう映ったのだろうか

キャストからみた万博の魅力とは

沖田:
Mirai Theaterでは、2035年を軸にいくつかの未来のシナリオを提示しましたが、万博全体を見渡すと、未来の物語やシナリオは本当にたくさんありましたよね。

姫野さん:
Mirai Theaterも展示されていた「未来の都市」パビリオンは、実物の展示や実際に動く仕組みが随所にあり、未来社会をとても身近に感じられました。日本館も印象的で、藻をエネルギーにつなげる展示など、今回の大阪・関西万博のテーマでもある「いのち輝く未来社会」を具体的に想像できました。

田中さん:
海外のパビリオンも、その国の魅力や歴史を知ることができる良さがあったと思います。美術館にいるような感覚で、国ごとの個性や感性を感じられるのが面白かったです。未来の社会をデザインするという意味では、私たちがMirai Theaterで扱っていた「食と健康」というテーマや、体を動かしづらい人へのサポートのように、身近な生活を輝かせるシナリオが「未来の都市」は多かったですよね。

沖田:
私自身は、万博全体の中で未来を描くことの難しさを改めて感じました。未来の絵が出てくるだけではなくて、生活の場面としてどう立ち上がるか、コミュニティの中で未来がどうつくられていくのか。そういう生活シーンの解像度があって初めて、未来はイメージできるのかもしれませんね。

画像: 未来社会を身近に感じられる展示に魅力を感じた、と姫野さん

未来社会を身近に感じられる展示に魅力を感じた、と姫野さん

この先の生成AIはどうあるべきか

沖田:
いまや生成AIは、生活や仕事の中で当たり前の存在になりつつありますが、Mirai Theaterの構想を考え始めた2年前は、「生成AIはここまで進化しないかもしれない」と思っていた部分もありました。しかしいまは、生成AIは未来を支えるツール、あるいは人に伴走する存在として、当たり前にいる社会になりつつあります。Mirai Theaterの中でナビゲーターとして登場したアルファとオメガというキャラクターも、生成AIという設定です。Z世代でもあるお2人は、生成AIはこの先、どんな役割で未来をナビゲートしていく存在になると思いますか?

姫野さん:
生成AIは「答えを与える存在」ではなく、「可能性を広げる存在」だと思っています。主体はあくまで人間で、生成AIは選択肢を提示し、考えるきっかけをくれる存在であってほしいです。

沖田:
可能性を提示する存在、というのはすごくしっくりきますね。ちなみに、その「選択肢」は、どれくらいの数だとちょうどいいと思いますか?Mirai Theaterの3つの選択肢が「少なすぎる」という声もありましたが、もし生成AIが10,000個の選択肢を出してきたら、それはそれで困りますよね。

姫野さん:
たしかに、選択肢がたくさんあることがいいことだとは思えません。生成AIはいくらでも選択肢を出せるといっても、「そもそも何を求めているのか」を明確にするのは人間の役割だと思うんです。頼りすぎたら、その人の個性が失われてしまう。だからこそ求めているものが定まっていないと、生成AIも力を発揮できないと思うんです。自分の考えの軸を確立するために、さまざま可能性を教えてくれる存在であってほしいですよね。

沖田:
AIの役割を考えるとき、もう一つ大事なのが「距離感」だと思います。

田中さん:
実際、AIを使う中で、言われたことだけをきっちりやってほしい場面もあれば、逆に、自分では考えつかないところに対して、いろいろ提案して助けてほしい場面もあります。場面によって、言われたことだけをやってくれる「執事AI」と、提案してくれる「おせっかいAI」といったように使い分けられるといいと思います。

姫野さん:
「おせっかい」はあってもいいですよね。ただ、それが行き過ぎるのは、ちょっと怖いです。感情まで完全に読み取られてしまうと、「人間と生成AIの違いって何だろう?」と。感情を読み取れるのは、人間だけでいいと思うんです。

沖田:
中には「自分の感情を読み取ってほしい」という人もいそうだし、まさにそこですね。生成AIは答えを出す存在ではなく、考えるプロセスを支える存在。教師がすぐに答えを言わず、考える時間を与えるのと似ていますね。

画像: 「お2人にはもっと聞きたいことがあります」と沖田。時間いっぱいまでやりとりが続いた

「お2人にはもっと聞きたいことがあります」と沖田。時間いっぱいまでやりとりが続いた

Z世代の2人がSociety 5.0に寄せる期待

沖田:
生成AIがさまざまな場面で活躍し、サイバーとフィジカルが融合して、センサーやスマートフォンを通じて人の意思が瞬時に社会に反映される社会が実現するとしたらどうでしょうか。これから社会に出ていく学生としての率直な思いを、ぜひ聞かせてください。

田中さん:
Society 5.0が実現すると、移動も簡単になって、ウェアラブルで健康管理も全部やってもらえる。生活はどんどん便利になっていくと思いますが、技術が発展するにつれて、「生成AIより上手くできないから挑戦しない」という選択をしてしまう人が増えるのではないかとも思っています。読書感想文でも、イラストでも、論文でも、生成AIがすごく完成度の高いものを出してくれるからこそ、「じゃあ、わざわざ自分でやらなくてもいいか」と思う人が増えるかもしれません。生成AIがあるからこそ、「それでも自分でやってみる」という意志を持ち続けることや、挑戦を怖がらないことが、2035年に向けて、すごく大切になる気がしています。

姫野さん:
確かに、生成AIがあることで、「頑張っても意味がない」と感じてしまう瞬間はありますね。レポートでも、自分で時間をかけて考えて書いたものより、生成AIを使って整えた文章の方が評価が高い、という場面も実際にあります。そうなると、「じゃあ、こんなに時間をかける必要あるのかな」と思ってしまいます。それが積み重なると、挑戦しなくなるし、活力もなくなっていくと思うんです。生成AIが先行して、人間が後からついていく社会ではなくて、人間が先行して、生成AIが下から押し上げてくれる社会であってほしいです。

沖田:
生成AIを作る側の立場としても、生成AIに先に行かせてしまってはいけないと改めて強く感じます。もちろん、生成AIが得意とする分野はあります。でも、人から見て「もう生成AIがやってくれてるからいいよね」と思われるような社会には、したくないですよね。

姫野さん:
2035年は、もうすぐそこです。あと9年で、社会はきっと大きく変わるでしょうし、その変化自体はすごく楽しみだし、期待もしています。でも、生成AIに頼りすぎる人にならないこと、生成AIに頼ることだけを推奨される社会にならないことは、強く願っています。

沖田:
お2人のようなZ世代と言われる方でも、生成AIなどテクノロジーの発展に対して、私たちの世代と同じように不安や悩みがあるというのも印象的でしたね。人が考え、人が選び、その背中を押す存在として生成AIがいる。2035年に向けて、そんな関係をどう設計できるか。それは、私たちに課された大きな宿題ですね。

画像1: [Vol.3] 大阪・関西万博が描いた未来社会のデザイン│参加型社会の未来のつくり方

姫野 美翔
テアトルアカデミー大阪校

大阪・関西万博「フューチャーライフ万博・未来の都市」内「Mirai Theater」のMC役「Milli」として参画。大学生として教育について学ぶ傍ら、184日間の開催期間中、合計250回以上に及ぶステージに立った。

画像2: [Vol.3] 大阪・関西万博が描いた未来社会のデザイン│参加型社会の未来のつくり方

田中 瑠夏
テアトルアカデミー大阪校

大阪・関西万博「フューチャーライフ万博・未来の都市」内「Mirai Theater」のMC役「Milli」として参画。大学生として建築を学ぶ傍ら、184日間の開催期間中、合計250回以上に及ぶステージに立った。

画像3: [Vol.3] 大阪・関西万博が描いた未来社会のデザイン│参加型社会の未来のつくり方

沖田 英樹
日立製作所 研究開発グループ 未来社会プロジェクト サブリーダ

日立製作所入社後、通信・ネットワーク分野のシステムアーキテクチャおよびシステム運用管理技術の研究開発を担当。日立アメリカ出向中はITシステムの統合運用管理、クラウドサービスを研究。2017年から未来投資本部においてセキュリティ分野の新事業企画に従事。2019年から社会イノベーション協創センタにおいてデジタルスマートシティソリューションの研究に従事。同センタ 価値創出プロジェクト プロジェクトリーダ、社会課題協創研究部 部長を経て、現職。

関連リンク

[Vol.1]Society 5.0の社会を仮想体験する
[Vol.2] Mirai Theater から見えてきた、市民による合意形成のあり方
[Vol.3] 大阪・関西万博が描いた未来社会のデザイン

This article is a sponsored article by
''.