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日立製作所研究開発グループが実施するオンラインイベントシリーズ「協創の森ウェビナー」。ビジネスの現場では今、「パーパス=存在意義」が求められています。パーパスを軸に企業活動を見直した時、どのような価値が見えてくるのでしょうか。また、パーパスを中心に置くことで、企業活動はどのような社会イノベーションを起こしていくことが可能なのでしょうか。目的工学の第一人者である多摩大学大学院の紺野登教授と、日立製作所 社会イノベーション協創統括本部 統括本部長の森正勝が語り合いました。

プログラム1「なぜ私たちは問いからはじめるのか?」
プログラム2「目的工学の観点から社会イノベーションを紐解く」
プログラム3「サステナビリティのための問い」

画像: 左から経営学者の紺野登さん、日立の森正勝、対談のナビゲーターを務めた日立の丸山幸伸

左から経営学者の紺野登さん、日立の森正勝、対談のナビゲーターを務めた日立の丸山幸伸

パーパスの重要性を問う

丸山:
本日は「パーパスと社会イノベーション事業」と題し、パーパスすなわち「目的」について、専門家と日立の研究者との対談をお送りします。今回のゲストは、多摩大学大学院経営情報学研究科の紺野登教授です。紺野先生には2007年に『ソーシャルイノベーションデザイン―日立デザインの挑戦』という本を編集いただき、以来、日立のデザイン活動をご指導いただいてきました。それでは紺野先生、よろしくお願いします。

紺野さん:
どうぞよろしくお願いします。「目的」の重要性についてはすでに世界中の経営者が語っていると思います。今、SDGsに代表されるように社会課題に目を向ける動きや、ステークホルダーエコノミーのように顧客や従業員などとの関係を重視した経営に舵を切るという流れ、あるいはオープンイノベーションへの取り組みもよく聞かれます。ただ、なかなかうまくいっていません。なぜかと言うと、こうしたイノベーションの目的がはっきりしていないケースが非常に多いからです。そこでわたしが提唱・実践しているのが「目的工学」という考え方です。今日はそんなお話ができたらと思います。

画像: 多摩大学大学院教授 紺野登さん

多摩大学大学院教授 紺野登さん

丸山:
ありがとうございます。本日もう1人の登壇者は日立の研究開発グループから、社会イノベーション協創統括本部 統括本部長の森正勝です。

森:
紺野先生、よろしくお願いします。わたしは研究開発の立場で、お客さまと一緒に新しいソリューションを生み出して社会イノベーションを実践していくという取り組みをしています。もともと、いわゆるデジタルテクノロジーを使ってお客さまの課題を解くソリューションの研究に携わってきました。お客さまに価値を届けるために何ができるかを模索する中で感じたのは、技術はあくまでも手段であって、大事なのは目的だということです。また、日立でイノベーションの創出をめざしているリサーチャーやデザイナーたちとの研究開発のベクトルを合わせるためにも、目的というものは非常に大事です。そういったところを今日はいろいろと勉強させていただきたいと思っています。

画像: 日立製作所 研究開発グループ 森正勝

日立製作所 研究開発グループ 森正勝

「ソーシャル」と「ソサイエタル」という、イノベーションの両輪

丸山:
それでは1つめの問いに参ります。「社会イノベーションの概念とは?」。いかがでしょうか、紺野先生。

紺野さん:
非常に広い概念ですが、大きく2つの要素から成ることがだんだんわかってきました。それが「ソーシャル(social)」と「ソサイエタル(societal)」です。

貧困問題を例にとりましょう。着る服がない、食べるものがないといった目に見える現象に注目して世界を変えていこうという動きが、ソーシャルイノベーション。ソーシャルアントレプレナーの方々の取り組みに代表されるものです。一方で、問題の背景にある社会システムや社会インフラに着目し、貧困問題そのものが生じないよう社会の構造を変えていこうという動きを、ソサイエタルイノベーションと呼んでいます。この両方が相互に作用することによって、社会イノベーションが具現化されていくのです。

ソサイエタルイノベーションの典型例として、都市を1つの大きなフィールドとして捉える「アジャイルシティ」という考え方があります。専門家だけで初めからガチっと街づくりを計画するのではなく、市民と専門家が一緒に考えて都市をデザインし、ソサイエタルイノベーションを起こしていく。おそらく日立さんのような企業が、その役割を担うべきなのではないでしょうか。

森:
先生の今のお話、とても腑に落ちました。研究開発の立場にいる我々としては、社会で起きている現象を解くうえで、お客さまと一緒に考えるということを重視しているのですが、目に見える課題を解決するというアプローチだけではなく、課題の根本を直すことの重要性を日々痛感しています。そこで活きるのが、例えばデジタルトランスフォーメーションのように世の中のしくみを変えられる動きですが、ソーシャルとソサイエタル、この2つのコンビネーションでもって実践していくことが非常に大切なのですね。

また、アジャイルシティのお話も出ましたが、我々も「フューチャー・リビング・ラボ」という取り組みを通じて、地域の未来を地域の方々と一緒につくっていくという社会イノベーションにトライしています。そうしたプロジェクトを進めるにあたって、自分たちが今どこをめざして何をやっているのかを、その都度理解することの大事さを改めて感じました。

成功した世界的プロジェクトには、大・中・小の目的がある

紺野さん:
ここで、わたしが一般社団法人Future Center Alliance Japan(FCAJ)で研究している「目的工学」について簡単に紹介させてください。冒頭でも少し触れましたが、今、世界の経営者は「目的」を重視しています。では、目的を掲げるだけでなく、それを媒介にしてプロジェクトで成功するにはどうすればよいのでしょうか。過去に成功した世界的なプロジェクトを分析したところ、あるパターンが見えてきました。次の図をご覧ください。

画像: 画像提供:紺野登さん

画像提供:紺野登さん

成功したプロジェクトには、共通して大・中・小の目的があります。例えばかつてのアポロ計画の場合、おそらく大目的としては、人類のための宇宙の地の探索であったり、当時のソ連との宇宙開発競争に勝つことで冷戦を終結させるというアメリカの狙いもあったでしょう。それから小目的としては、ロケット開発の指導者フォン・ブラウンの「ロケットを打ち上げたい」という個人的な思いもありました。

重要なのが中目的です。大目的と小目的を束ねてプロジェクトを具現化する、いわば「へそ」に当たるもので、駆動目標やミッションなどと呼ばれることもあります。アポロ計画の場合、世界平和という大目的とフォン・ブラウン個人が抱く小目的をつなぐのが、「1960年代中に3人の飛行士を乗せて月を周回し、月面に着陸し、無事帰還すること」という中目的でした。

プロジェクトでは、この中目的をはっきりさせる必要があります。かつ、非常にクリエイティブな目的を設定しなくてはいけません。そのときに大きな役割を果たすのが、デザインの“綜合する能力”です。また、大目的を細分化して中目的、小目的に分けていくというヒエラルキー構造ではなく、これら一つひとつの目的がインタラクティブに作用することも肝要です。

森:
我々は、お客さまが抱える課題をお客さまと一緒に解く「協創」に取り組んでいますが、目的工学の観点で振り返ってみると、確かにそれぞれのプロジェクトには大・中・小の目的があったように思います。

日立は今、環境価値、社会価値、経済価値の3つの価値を生み出すという大きな目標を掲げています。その一方で、たくさんのソリューションや技術を持っています。つまり、どんなプロジェクトを遂行するにも、いろいろな大目的や小目的、そして中目的を設定することができる。大事なのは、お客さまとのプロジェクトにおいて日立がきちんと価値を発揮できるかどうかです。

お客さまが抱える課題は実に複雑で、どうしてもトレードオフが生じてしまう場合が少なくありません。そういった難しい局面に立ったときに我々は、大目的、すなわち先ほど申し上げた3つの価値の創出という目標に照らし合わせて、自分たちがどう行動すべきかを考えます。

あるいは、お客さまの目的達成に向けて適切なテクノロジーを選び、活用する。「日立にはこんなテクノロジーがあるから、このプロジェクトにはこんなふうに活用してはいかがでしょうか」というご提案もできる。そういったイテレーション(iteration:短い間隔で反復して行われる開発サイクル)を通じ、お客さまの課題解決に取り組んできました。このように、振り返れば目的工学の考え方に近い経験を積んできたわけですが、それらをきちんと整理し、プロジェクトに活かしていきたいと考えています。

3段階の目的に応じた「場」づくり

紺野さん:
森さんが冒頭におっしゃっていたように、技術そのものには、機能はあっても目的を持っていません。つまり、技術の良し悪しを決めるのは人間や社会の側です。今後はますます、技術と社会との関係を密にしていかないと、社会イノベーションを起こすことはできません。言い換えると、社会の側と科学や技術の側の人たちとが対話していく必要があって、そのための開かれた場が非常に大事になってきます。例えばこの「協創の森」がそうだと思います。

森:
我々としても、お客さまに対してきちんと価値をお届けすることを意識しながら一つひとつのプロジェクトを進めたいという考えから、目的工学のフレームワークを使わせていただきながら、先生が代表理事を務めてらっしゃるFCAJ(※1)の活動と照らし合わせて、日立の研究活動の整理を始めています。それがこの図です。

※1 一般社団法人フューチャーセンター・アライアンス・ジャパン。イノベーションの実践に取り組む企業、自治体、官公庁、大学、NPOなどが相互連携するアライアンス組織。

画像: 3段階の目的に応じた「場」づくり

※2 トポス会議:2012年、経営学者の野中郁次郎氏と紺野登氏により発足した国際会議。国内外の賢者が日本に集まり、対話を通じて将来にわたり重要となるテーマをともに発見し、パースペクティブを得る会議。「トポス」はギリシャ語で「場」を意味し、トピックの語源でもある。

紺野さん:
2つ、わたしの知見を付け加えさせてください。

ソーシャルイノベーションに取り組む方々がよく使う言葉に、「セオリー・オブ・チェンジ」があります。社会課題の解決を目的としたNPOやソーシャルビジネスにおける事業経営の軸となる考え方のことです。このセオリー・オブ・チェンジにのっとると、プロジェクトを通じてどんなアウトプットを生むべきかが小目的にあたり、世の中にどんなコレクティブインパクト(※3)を生むべきかが大目的に、そしてアウトカムが中目的に相当します。このように、大・中・小の目的の設定がセオリー・オブ・チェンジとシンクロしているのです。

※3 行政や企業、NPOなど、さまざまなセクターの組織が協働して社会課題の解決に取り組み、インパクトを創出すること。

もう1つ、実際にプロジェクトを動かしていく際に大事なのが、先ほども申し上げた「場」の設定です。

大目的を考えるための場は、行政や企業、大学がセクターの壁を越えて意見を出し合い、未来を構想して仮説を立てる「フューチャーセンター」です。そして、個別の小目的の達成に必要な場が「リビングラボ」です。いわば社会の中にある研究機関、まさに「生きる研究所」として、市民や大学、行政が社会実験を重ね、仮説検証を行う場です。おそらく「協創の森」もかつては、あくまで会社という閉じた世界の研究機関という位置づけだったのだと思いますが、今や社会の中の研究機関としてポジショニングを変えられています。さらに、この図に付け加えさせていただきたいのが、中目的を具現化するための場「イノベーションセンター」です。企業の技術者の方々がいろいろなプロトタイプをつくる場です。

フューチャーセンターで仮説を立て、リビングラボでそれを検証し、イノベーションセンターでプロトタイプとして具現化する。これらが社会イノベーションのエンジンになると捉えると、大・中・小の目的と「協創の森」のような場がうまくシンクロするのではないでしょうか。

社会イノベーションとしてのイギリス高速鉄道プロジェクト

丸山:
2つめのトピックは「パーパス」です。日立が過去に携わったプロジェクトを目的工学の視点から読み解くことで、パーパスとは何か、パーパスとはこういうものなのではないかという議論を深めていければと思います。

そこで今回取り上げる日立の事例が、2017年に運行を開始したイギリスの高速鉄道プロジェクトIEP(IEP:Intercity Express Programme)です。運行ルートが電化路線(走行する列車に電気を供給できる路線)と非電化路線をまたぐため、両方で走行可能なバイモード車両への対応が求められるなど、高度な技術を必要とするプロジェクトでした。目的工学の観点から紺野先生にぜひコメントをいただければと思います。いかがでしょうか。

画像: 2017年に運行を開始したIEPの車両「Class 800」。

2017年に運行を開始したIEPの車両「Class 800」。

紺野さん:
以前わたしがロンドンに滞在していたときには、定刻になってもなかなか列車が来ないという場面に何度も遭遇しました。おそらく現場のオペレーションにも課題があったのだと思いますが、それが組織全体に広まっていたのでしょう。

そこに日立さんによる新しい鉄道車両と保守サービスが実装されたことで、どんなインパクトが生まれたでしょうか。まず、小目的のレベルでは、列車が毎日定刻どおりに来るようになりました。当たり前のことじゃないかと思われるかもしれませんが、定刻運行が実現したことで、極端な話、「今日は列車が来ないから会社に行くのをやめよう」と思っていたような人たちが、毎日きちんと定時に会社に行くようになるかもしれない。そういった変化が社会に起きることで、地域の労働の質が向上するだけでなく、それまで疲弊していたであろう英国鉄道の組織そのものも正常化し、職員たちの労働の質が高くなります。すると、彼らの中に鉄道という仕事への誇りが芽生えてくるのです。実はここにこそ、このプロジェクトのパーパスがあるのではないでしょうか。

1990年代にわたしがデザインマネジメント(※)を研究してわかったことですが、例えば企業がデザイン思考を用いて新しいビジネスモデルの創出に取り組むと、そのビジネスが世の中に生み出すインパクトだけでなく、その企業の従業員にもたらすインパクトが非常に大きい。要するに、そこで働く人たちのプライドを高めるという効果がデザイン思考にはあるのです。

※ 経営学者である野中郁次郎氏が提唱する「知識創造理論」の考え方と、紺野登氏が提唱するデザイン思考(デザイナーの思考過程)を融合させた概念。

画像: 社会イノベーションとしてのイギリス高速鉄道プロジェクト

そういう視点で日立さんの英国鉄道プロジェクトを見ると、定刻どおりに列車を運行することで、例えば列車の整備をする方、運行のオペレーションをする方のモチベーションやプライドを高め、結果的に鉄道という産業セクターそのものを再活性化している。大・中・小の目的、すなわちパーパスがすべて絡み合ったソーシャルイノベーションのケースと言えます。

デジタルの時代における、モノづくりの意義

森:
すごくよいお話をいただけました。プロダクトと社会との関わりは、直接的に目に見えるのが非常に難しくなっています。プロダクトの中では今、デジタルソリューションが全盛ですが、やはりユーザーとのタッチポイントにおいてどう機能しているのかが大事であり、それが社会に対して及ぼす影響が大きいということを、先生のお話を伺って改めて認識しました。

昨今、日本企業はモノづくりだけでは生き残っていけなくなるという声をよく耳にします。しかし、モノがないと社会に対して貢献できないこともたくさんあります。先生に解説いただいた英国鉄道プロジェクトのように、ストーリーを世の中に訴え掛けていくことが大事です。なぜそのプロダクトがないといけないのか。どう世の中に役立つのか。つまり、パーパスをきちんと訴えていく。特に、小目的の達成だけをめざしてやっている立場の人たちにとっては、そのプロジェクトがなぜ世の中に必要なのかが見えなくなってしまうことが多いと思うのです。プロジェクトに取り組むメンバー全体のモチベーションをアップするためにも、目的工学の視点からのプロジェクトのストーリー化を取り入れさせていただきたいと思いました。

画像: デジタルの時代における、モノづくりの意義

紺野さん:
もう1点、英国鉄道の事例からわたしが学んだことがあります。ある研究によると、製造業とサービス業を比較した場合、そこから生み出される知識をはじめとする無形資産の蓄積の度合いは、実は製造業のほうが高いのです。しかし、製造業がモノづくりのビジネスモデルだけやって知識を蓄えても、儲かりません。どうやってモノづくりの知識や方法を、サービス業のビジネスモデルに掛け算できるかがチャレンジなのです。その場合、必ずしも量産型の製品をつくることで価値を生み出すだけではなく、ひょっとしたらデザイン思考を用いることで、モノづくりの部分を温存しながらソリューションのようなサービスを生み出す。つまり、ビジネスモデルを変えることでモノづくりの力をイノベーションの創出につなげられるのではないか。お話を伺ってそんなふうに感じました。

森:
まさにそういうことをやりたいと、我々思っています。ただ、ビジネスモデルを変えるには社員のマインドセットや会社のしくみから変える必要も出てきます。日立に限らず製造業全体にとっての課題かもしれません。

環境革命の時代に求められる、「トランジション」マネジメント

丸山:
我々が今向き合わなくてはいけない問題の1つに、環境問題があります。それは、世界の将来像を思い描ければよいというものではなく、問題解決に向けたさまざまなパスウェイ(道筋)があるのかもしれません。お二人から何か示唆をいただければと思います。

紺野さん:
以前、日立さんが「トランジション(transition:転換)」というキーワードで環境問題に取り組まれているというお話を伺ったことがあります。トランジションは非常に大事です。ただ、環境革命を起こすには、システムを既存のAから新しいBにシフトさせるという単純なトランジションではなく、システムAを残しながら一方でBを新たに立ち上げるといったように、複雑な状況が世界で続くかもしれません。

となると、トランジションを促進するだけではなく、マネジメントすることが大事になります。システムを変える目的は何なのか、もしシステムに不具合が起きたらどうなるかなど、いわばシナリオを考えるように目的を設定することが、トランジションのマネジメントにつながるのではないかというイメージを持っています。

森:
おっしゃるとおりだと思います。2050年にカーボンゼロ(温暖化ガス排出を実質ゼロにすること)を達成するためには、2040年にはどういう状況でなくてはいけない、そのためには2030年には何をすべきかというようにバックキャスティングで考えていかなくてはいけないと近年言われています。その中で、確からしい未来をつくるにはどうすべきかを考えたとき、例えば、いろいろな経済予測と人々の価値観を組み合わせながらトランジションのシナリオを設定するというチャレンジに我々は取り組んでいます。

ただ、すべてがシナリオどおりにはいかないでしょうし、地域によって取り組み方も違ってくると思います。地域の状況に応じたソリューションを適用しつつ、カーボンゼロというゴールはブレないといった全体のマネジメントが、我々にとってのチャレンジかなと思っています。日立が生み出したトランジションのアイデアを叩き台にしていただいて、どんな大目的を設定すべきかステークホルダーの皆さんと一緒に考え、それに合わせて小目的や中目的を設定するといった取り組みを行っています。

ストーリーからナラティブへ

紺野さん:
最近、マーケティングの専門家の方々がおっしゃっていて面白いなと思ったのが、「ストーリーからナラティブへ」。narrativeには、話術や語り口という意味があります。つまり、既存の成功例を分析してエッセンスを過去のストーリーに当てはめようとしてもうまくいきません。個々別々の、時々刻々の状況に合わせてナラティブに、すなわち、「今ここで」語っていく力がこれからは必要だと。これも1つのデザイン力だと思うのです。

そして大事なのが、これまで何度も申し上げてきました大目的を意識しながら語り、実践していくことです。おそらく日立さんもそれをなさろうとしているのではと察します。

森:
そのとおりです。わたしが所属している研究開発グループ 社会イノベーション協創統括本部には、デザイナーや研究者といった、ある意味、非常に思いの強い社員が多く在籍しています。そういう人たちが社会に対して問いを投げかけるということを、まさにナラティブな形で発信していけたらなと思っています。

紺野さん:
日立さんの取り組みは日本の産業にとって1つのベンチマークです。ぜひ今後も注視させていただきます。

丸山:
先進の技術でソリューションをつくるだけでは駄目で、きれいなビジョンだけ描いて動かないモノをつくるだけでも駄目だと。どう社会を変えていくのかを皆さんと一緒に考え、問うて、実践していくことが大切だということを痛感しました。お二人ともたいへん興味深いお話、ありがとうございました。

画像: 協創の森ウェビナー:第1回 対談「目的工学の観点から社会イノベーションを紐解く」- 日立 www.youtube.com

協創の森ウェビナー:第1回 対談「目的工学の観点から社会イノベーションを紐解く」- 日立

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画像1: パーパスの時代。モノづくり企業が牽引する社会イノベーションを目的工学から紐解く│協創の森ウェビナー第1回「パーパスと社会イノベーション事業」プログラム2「目的工学の観点から社会イノベーションを紐解く」

紺野 登
多摩大学大学院 経営情報学研究科 教授

一般社団法人Japan Innovation Network(JIN)Chairperson理事、一般社団法人フューチャーセンター・アライアンス・ジャパン(FCAJ)代表理事、エコシスラボ株式会社代表。早稲田大学理工学部建築学科卒業、博士(経営情報学)。デザイン経営や知識創造経営、目的工学、イノベーション経営などのコンセプトを広めたほか、組織や社会の知識生態学をテーマにリーダーシップ教育や組織変革、ワークプレイス・デザイン、都市開発プロジェクトなどの実務にかかわる。また、FCAJやトポス会議などを通じてイノベーションの場や世界の識者のネットワーキング活動を行っている。2004年〜2012年グッドデザイン賞審査員(デザインマネジメント領域)。著書に『ビジネスのためのデザイン思考』、『知識デザイン企業』、『知識創造経営のプリンシプル』(野中郁次郎氏との共著)など多数。

画像2: パーパスの時代。モノづくり企業が牽引する社会イノベーションを目的工学から紐解く│協創の森ウェビナー第1回「パーパスと社会イノベーション事業」プログラム2「目的工学の観点から社会イノベーションを紐解く」

森 正勝
研究開発グループ
社会イノベーション協創統括本部 統括本部長(General Manager,Global Center for Social Innovation)

1994年京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、日立製作所入社。システム開発研究所にて先端デジタル技術を活用したサービス・ソリューション研究に従事。 2003年から2004年までUniversity of California, San Diego 客員研究員。横浜研究所にて研究戦略立案や生産技術研究を取り纏めた後、2018年に日立ヨーロッパ社CTO 兼欧州R&Dセンター長に就任。
2020年より現職。
博士(情報工学)

画像3: パーパスの時代。モノづくり企業が牽引する社会イノベーションを目的工学から紐解く│協創の森ウェビナー第1回「パーパスと社会イノベーション事業」プログラム2「目的工学の観点から社会イノベーションを紐解く」

丸山 幸伸(ナビゲーター)
研究開発グループ 社会イノベーション協創統括本部
東京社会イノベーション協創センタ 主管デザイン長(Head of Design)

日立製作所に入社後、プロダクトデザインを担当。2001年に日立ヒューマンインタラクションラボ(HHIL)、2010年にビジョンデザイン研究の分野を立ち上げ、2016年に英国オフィス Experience Design Lab.ラボ長。帰国後はロボット・AI、デジタルシティのサービスデザインを経て、日立グローバルライフソリューションズに出向しビジョン駆動型商品開発戦略の導入をリード。デザイン方法論開発、人財教育にも従事。2020年より現職。

プログラム1「なぜ私たちは問いからはじめるのか?」
プログラム2「目的工学の観点から社会イノベーションを紐解く」
プログラム3「サステナビリティのための問い」

協創の森ウェビナーとは

日立製作所研究開発グループによるオンラインイベントシリーズ。日立の研究者やデザイナーとの対話を通じて、新しい協創スタイルの輪郭を内外の視点から浮き上がらせることで、みなさまを「問いからはじめるイノベーション」の世界へいざないます。

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