丸山幸伸
研究開発グループ 社会イノベーション協創統括本部
東京社会イノベーション協創センタ 主管デザイン長(Head of Design)
入社後、プロダクトデザインを担当。2001年に日立ヒューマンインタラクションラボ(HHIL)、2010年にビジョンデザイン研究の分野を立ち上げ、2016年に英国オフィス Experience Design Lab.ラボ長。帰国後はロボット・AI、デジタルシティのサービスデザインを経て、日立グローバルライフソリューションズに出向しビジョン駆動型商品開発戦略の導入をリード。。イノベーションの方法論や人材育成にも従事。2020年より現職。
——Nowismはそもそも、コロナ禍の取り組みとして、2020年10月にイントラネットの中で社内向けの音声コンテンツとしてはじまり、今回「Linking Society」の記事として発信されることになりました。まずは、Nowismをはじめた経緯から教えてください。
丸山:
2020年、リモートワークが定常状態になるなかで、僕自身もコミュニケーション方法を模索しながら、みんなはどうやって仲間と会話をしているのか、「最近どうしているの?」なんて会話をどうやってはじめているのかが気なっていました。何人かに聞くと、小さい単位で毎朝ミーティングをやっているとか、自主研究でつながっているグループで会話をしているとのことでした。そして同時に、コロナ禍で入社してきた新人社員たちがコミュニケーションをとれずに苦労している、という話も聞きました。
同じころ、デジタルを活用して「研究の仕方」を変えるための、新しい働き方を検討することになったんです。
もっとみんなをつなげていきたいという思いと、新しい働き方の検討。そこで改めて、これまでこの2つの課題に取り組んでこなかったことに気がついたんです。そこで、前々から考えていた、イントラネットの中で社会イノベーション協創センタのメンバーの日常について雑談をするポッドキャストの企画に着手しました。
——コロナ禍において、新しい生活様式や働き方が加速度的に浸透する一方で、コミュニケーションのあり方や、雑談のもたらす効果が見直されていますよね。実際に社内に向けて、ポッドキャストの配信をはじめてみて、社内の反響や思いも寄らなかった気づきなどはありましたか?
丸山:
私自身、「雑談」が足りていないという確信はありましたので、メンバーには「今を切り取って、自身の目線で話をしてほしい」と依頼しています。そうすると日常生活の話の中にも、その人の専門性がちらっと見え隠れするんです。
例えば、コンビニおにぎりの三角形の中にあるくぼみに何故? を考えてしまう人や、趣味のAI将棋の話をしているだけなのに、バックグラウンドにある知見が影響してめちゃくちゃ面白い人など。そうか、この人たちは日常で息をしているだけでも、デザイナーや研究者としての強いこだわりをもっているのか、この専門的な視点をもっている人たちと一緒に仕事をしたらすごく面白いだろうなと強く感じました。実際、ポッドキャスト配信をはじめてから、オフラインだけで付き合っていた時代にはできなかった、新しいコミュニケーションができるようになった、という社内の声を聞きますし、イントラネットには、内容やメンバーに共感するコメントも多く見られます。
コロナ禍をきっかけに、私は、「この人と仕事をしたい」と思われるデザイナーや研究者こそが、内部にとどめておいてはいけない大事なアセット(財産)だと気がついたんです。そこで、ポッドキャストの内容をインタビュー記事の形にまとめなおし、「Nowism」というシリーズとして、新メディア『Linking Society』から発信して社外の方に知っていただくべきだと考えました。
さらに、コロナ禍ではじめたNowismを2021年の今振り返ってみると、激変した日常に対するリアルな感覚や創意工夫の痕跡が詰まっていて、「あの頃の気持ち」を喚起するとともに、すでにどこか新鮮な気持ちで読むことができます。そういった面でも、「社会を切り取る視点や問いからはじまることを起点に、新しい社会について深く語りあい、つながる、メディア」をめざす『Linking Society』に蓄積していくのにぴったりのコンテンツだと思っています。
私たちはいま、次のステージに向けて新しいデザインに挑戦しているところです。ポッドキャストからはじまったNowismの記事をとおして、バックグラウンドが豊かなメンバーたちによる多様な「社会を切り取る視点」を知っていただきたいですね。