多摩美術大学情報デザイン学科情報デザインコースの3年次演習「サービスデザイン」では、企業との産学共同研究に取り組んでいます。2019年、2020年は日立グループがそのパートナーとなり、「トラスト(信用・信頼)」をテーマに取り組んできました。Vol.2では、学生たちが課題に対して、どのような取り組みを行ったのかを中心に、「学生たちがイメージするトラストとは何か」、「そこからどのようなアイデアが生まれたのか」等について、研究開発グループ 東京社会イノベーション協創センタ 主管デザイン長の丸山幸伸が、演習の指導教員である吉橋准教授に話を伺いました。

[Vol.1]トラストの時代に、デザイナーはなにをするべきか
[Vol.2]学生たちがイメージするトラストとは
[Vol.3]時代によって、トラストのあり方が変わっていく

画像: 自分の身の回りに置き換えることで学生はテーマを身近に感じることができる

自分の身の回りに置き換えることで学生はテーマを身近に感じることができる

トラストを自分の体験に置き換えることで発想が生まれる

丸山:
今回は、学生たちがイメージするトラストとは何か。そこからどのようなアイデアが生まれたのかなど、演習のプロセスについて伺っていきます。吉橋先生はこのテーマに取り組む以前に病院と一緒に医療ヘルスケアをテーマに演習されていたことがありましたね。テーマ設定として、へルスケアとトラストの大きな違いはありますか?

吉橋さん:
ヘルスケアをテーマに掲げて3年間、演習を行いましたが、学生にとってはやや難しい課題だったと思います。いちばんの理由はヘルスケアという課題が健康で医療と関わる機会が少ない学生たちには身近に感じられないことです。

丸山:
確かにヘルスケアは医療の知識や医療現場を知らなくてはならないうえに、医師、看護師、技師、患者などの立場に気持ちを置き換えなくては理解できないことがたくさんありますからね。

吉橋さん:
それが理由で多くの学生が苦戦していました。トラストも難しいテーマですが、ある程度は自分の身の回りに置き換えることができるので、アイデアに詰まることは少なかったように感じます。

丸山:
なるほど。トラストの概念の理解は難しいですが、信頼なしに生きている人は誰もいないと思うので、日常を通して自分なりに気持ちを置き換えることは可能ですね。

学生がイメージする性善説にもとづいたトラスト

吉橋さん:
これまでの演習では15週間かけてプロセスを積み上げていき、最後に結果を発表していましたが、今回の共同研究では、日立さんの提案を元に、発表の前に実証実験を取り入れました。
丸山:
学生の反応はどうでしたか?

吉橋さん:
限られた時間内でアイデアをかたちにする前に実証実験を行わなくてはならないので、スケジュール管理に慣れていない学生は苦戦していたようです。

丸山:
トラストと言う概念をサービスに結びつけるわけですが、私たちが思いつかない学生らしい発想はありましたか?

吉橋さん:
彼らにはまだ社会経験がありませんので、信頼を扱う合理的な社会システムを考えるという発想ではなく「ずっと続くもの」、「期待に応えること」、「何かを一緒に行うことで信頼が生まれる」など、性善説にもとづいた考え方が多かったですね。

丸山:
決め事に着目していないので、法則や名誉という発想にならないし、人に騙された経験も少ないので疑うことがあまりないのでしょうか。

吉橋さん:
学生の相談を受けながら、「それ、トラストだっけ」と軌道修正することもありました。普段の生活では毎日のように信用や信頼について問われることはないので、難しかったと思います。

新しいアイデアをサービスに結びつける難しさ

丸山:
実証実験はスムーズに進みましたか?

吉橋さん:
最初のアイデアからサービス内容が完成されていて、実証実験の結果も良いものが得られ、そのままブラッシュアップした学生もいました。あいまいなアイデアから手探りで実証実験をやったら面白い発見があって、そこから違うサービスに発展した例もあります。後者はコンセプトから完成に向かう一般的なプロセスでは誕生しない発想ですよね。学生自身は気づいていないけれど、教員が見ると面白い結果になっている事例もありました。

丸山:
実証実験の結果はサービス実施の裏付けになりますね。

吉橋さん:
これまでの演習では、サービスを体験できるかたちにするというアウトプットは行っていましたが、「〇〇した結果、〇〇であることがわかった」というような、結果を明らかにすることまでは求めていませんでした。コロナ禍で制約が多い中での実証実験でしたが、それを行うことで明らかになったことも多く、頭で考えただけではわからない観点が見つかったようです。

――最終回は演習における具体的な事例を伺います。苦労しながらも、トラストを可視化しようとする学生たち。既存の社会システムでは考えつかないアイデアが誕生しました。

関連リンク

画像1: [Vol.2]学生たちがイメージするトラストとは│多摩美術大学 吉橋研究室の学生たちが取り組んだ、トラストの情報サービス化

吉橋昭夫
多摩美術大学 美術学部 情報デザイン学科准教授

UXデザイン、サービスデザインの教育と研究に取り組み、国内におけるサービスデザインの演習カリキュラムをいち早く実践。サービス・マーケティング、顧客の経営体験価値、経学とデザインの境界領域、デザイン思考の他領域への展開などの造詣が深く、IT・サービス系企業との産学共同研究を数多く手がけている。千葉大学工業意匠学科卒、芸術学修士(多摩美術大学)、経営情報学修士(多摩大学)。

画像2: [Vol.2]学生たちがイメージするトラストとは│多摩美術大学 吉橋研究室の学生たちが取り組んだ、トラストの情報サービス化

丸山幸伸
研究開発グループ 社会イノベーション協創統括本部東
京社会イノベーション協創センタ 主管デザイン長(Head of Design)

日立製作所に入社後、プロダクトデザインを担当。2001年に日立ヒューマンインタラクションラボ(HHIL)、2010年にビジョンデザイン研究の分野を立ち上げ、2016年に英国オフィス Experience Design Lab.ラボ長。帰国後はロボット・AI、デジタルシティのサービスデザインを経て、日立グローバルライフソリューションズに出向しビジョン駆動型商品開発戦略の導入をリード。デザイン方法論開発、人財教育にも従事。2020年より現職。

[Vol.1]トラストの時代に、デザイナーはなにをするべきか
[Vol.2]学生たちがイメージするトラストとは
[Vol.3]時代によって、トラストのあり方が変わっていく

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