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日立製作所研究開発グループが実施するオンラインイベントシリーズ「協創の森ウェビナー」。前回は「革新性とリスクを併せ持つAIによって、よりよい社会を導くためには、未来を想像し、ガバナンスをきかせながら技術を作り上げていくことが必要である」というお話でした。実際にガバナンスとはどういうものなのか。また、世界的な動きはどのようになっているのか。先端AIイノベーションセンタ長の影広達彦が、これまで日立が取り組んできたAIガバナンスの事例を紹介します。

プログラム1「日立のAIガバナンス」
プログラム2「AIはサイバーとフィジカルの暮らしを繋ぐことができるのか」
プログラム3「社会から信頼されるAI」

画像: これまでの日立の取り組みや今後の指針を説明

これまでの日立の取り組みや今後の指針を説明

AIの歴史と社会の関わりの変化

私たちの生活の中にAIが使われることが多くなりました。チェス、将棋、囲碁などのゲームについては、一部でプロを超えたと言われています。まずはAIが私たちの社会に対してどのように関わり、発展してきたのかを紐解きます。

これまでAIには3回のブームがありました。第1次(1960~1970年代)のブームは、「トイプロブレム」を解く場合がほとんどでした。その頃のAIは、迷路やオセロのようにルールやゴールが決まっているお題を解くことしか出来ず、残念ながらゲーム以外で大きく活用されることはありませんでした。

第2次ブーム(1980~1990年代)は「エキスパートシステム」と呼ばれ、専門家が答えを導くための手段に近いシステムが導入されました。これによって単調作業の自動化などが推し進められ、業務の効率化と生産性の向上が図られています。

2000年頃から第3次ブームが起こり、ディープラーニングをはじめとする、データから予測したり、判断する技術が進化しました。現在もその流れは継続中です.
AIが人々の生活で使われるようになり、日々の生活や環境に大きな影響を与えているほか、AIが社会目的のために人間の行動変容を起こし、人々のQOL向上を図ることが期待されています。

これまでの3回のAIブームにおいて、日立が行ってきた技術開発事例をご紹介します。

画像: AI技術は社会と密接に関係している

AI技術は社会と密接に関係している

日立の技術開発事例

第1次ブームにあたる1965年、日立は国産コンピュータ「HITAC」を東京大学大型計算機センターに納入しました。また、1973年に視覚を持った自動機械の先駆けとして、計算システムによるトランジスタの自動組み立て装置を世界で初めて構築し、稼働させました。当時はAIとは呼ばれていませんでしたが、画像処理を用いて組み立て作業を自動化するという、現在のAIにつながるような先進的な開発だったと考えられます。

第2次ブームの時には、郵便区分機により仕分け作業の自動化に取り組みました。これにより、郵便番号や住所、宛名などの比較的自由な記載から宛先を認識し、郵便物を配達順に並び変えるという専門的な作業を自動化しました。

また、第2次AIブームの中で核をなしていたエキスパートシステムの研究開発も進みました。文書ファイリングシステムに、構造化されたデータベースを導入し、例えば「モーツァルトが好んだ楽器による作品を聞きたい」など、あいまいな命令をしてもクラリネット協奏曲が検索されるというような「概念検索技術」を開発しました。1年分の新聞の内容の検索を1.5秒で処理でき、当時の文章検索スピードとしては超高速と言われていました。

第3次AIブームの現在は、人の動作をセンシングして作業指示やリスク警告を出すシステムの研究開発を進めています。また、複数のロボットとAIが連携して物品の移動や仕分けをスムーズに行う研究開発も進行しています。いずれはAIが人の挙動や意図を理解し、人に寄り添う存在になり、複雑なシステムを柔軟に動かす技術となることが期待されています。

画像: AIの歴史は日立の技術開発に大きく関わってきた

AIの歴史は日立の技術開発に大きく関わってきた

社会に浸透するAIはどうあるべきか

かつてのAIに対する期待は「効率を上げたい」、「自動化したい」など、Bestな解を見出すことだったと思います。しかしこれからは価値観の多様化、社会システムの複雑化に呼応し、AIが個々のGoodをめざすことが重要になるでしょう。この考えを私たちは“The Best” to“Our good”というメッセージに込めました。

Our goodを実現するAIを作っていく前段階として、まずはステークホルダーと対話し、議論することが必要です。革新性と技術を併せ持ったAIが社会で信頼を得て生活を支える存在になるためには、さまざまなバックグラウンドを持つ専門家や、実際に生活の中で技術を使う方々と話し合う必要があります。

私たちはそのために、ワールドエコノミックフォーラムに参画し、社会を支えるインフラシステムの未来とAI技術のトラストについて、世界各国の有識者たちと議論を深めています。

また、日立東大ラボ日立京大ラボなど、日立とアカデミアなどが共同で立ち上げたラボが複数あり、エネルギー、環境、医療などのさまざまな分野において、来るべき未来の社会システムに向けた議論を行っています。この協創の森ウェビナーも、みなさまとの対話につなげることをめざして発信しています。

画像: AIは絶対多数の絶対幸福である

AIは絶対多数の絶対幸福である

AIが今後あるべき指針をさだめる

私たちは、AIが社会に広がっていくうえで、どうあるべきか、どう作っていくべきかという指針を示し、それを共有して皆で守っていくことが必要だと考えています。すでにヨーロッパではAI規制法案の策定が進んでおり、国内でも経済産業省から「AI原則実践のためのガバナンス・ガイドライン」が公開されました。日立でも2021年2月にAI倫理原則を策定し、社外に向けて公開しています。

現在、日立は開発技術をチェックするガバナンス体制の構築を進めており、AI倫理をベースとして、社外有識者のアドバイザリーボードから助言をいただいています。また、社内に編成された委員会が、各ビジネスユニットと連携することによって、AI関連のプロジェクトを推進しています。

最後に、AIが社会に信頼され、受け入れられるためには、ステークホルダーを巻き込みながらオープンに社会実装することが大切であると考えています。実際に社会の中で使ってもらいながら「AI技術がどうあるべきか」や「AIがある暮らしの在り方」などについて、合意形成していくことが大切です。私たちは社会で暮らしている方々の多様なGoodの実現のために、「Our good」な未来に向かって、AIの技術開発と社会実装を進めます。

画像: Goodの実現のためにOur Goodを進める

Goodの実現のためにOur Goodを進める

プログラム2では先端テクノロジーと社会の関わりについて、メディアの第一線でとらえて論じてきた株式会社インフォバーンの小林弘人さんと、研究者としてそれに取り組んでいる東京社会イノベーションセンタの影広達彦が「社会システムでAIが変わる」、「リアルの非対称な鏡であるサイバーと向き合う」の2つのテーマについて幅広いレンジで話を繰り広げます。

画像: AIの歴史的背景と今後の指針、Our goodを実現するAI│協創の森ウェビナー第5回 「AIのガバナンス 」プログラム1「日立のAIガバナンス」

影広 達彦

研究開発グループ テクノロジーイノベーションセンタ統括本部
先端AIイノベーションセンタ長(General Manager CTI - Advanced Artificial Intelligence)
博士 (工学)

1994年 筑波大学大学院理工学研究科修士課程修了後、日立製作所入社。2015年 University of Surrey にて客員研究員。その後、中央研究所にて、映像監視システム、産業向けメディア処理技術の研究開発を取り纏め、2015年から社会イノベーション協創統括本部にて、ヒューマノイドロボットEMIEWの事業化に携わる。2017年にメディア知能処理研究部長、2020年より現職。

プログラム1「日立のAIガバナンス」
プログラム2「AIはサイバーとフィジカルの暮らしを繋ぐことができるのか」
プログラム3「社会から信頼されるAI」

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