VUCA(※)時代の到来により、多くの企業がイノベーションを起こせる組織のあり方を模索しています。Laere Inc.の共同代表/クリエイティブプロセス ディレクターの大本綾さんは、広告代理店勤務から一念発起し、デンマークのビジネススクール「KAOSPILOT(カオスパイロット)」に初の日本人留学生として入学。そこで学んだ起業家精神をもとに、日本で多くの組織開発プロジェクトを手掛けています。大本さんが提案する、日本の組織でイノベーションを起こすための新しい考え方とは? 聞き手は、研究開発グループ東京社会イノベーション協創センタ主管デザイン長の丸山幸伸です。
VUCA…Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの頭文字を取った造語で、社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のこと。

※ VUCA…Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの頭文字を取った造語で、社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のこと。

[Vol.1]クリエイティブの在処を求め、カオスに飛び込む
[Vol.2]「学ぶ」を起点にクリエイティブの土壌をつくる
[Vol.3]リーダーシップを継続的に鍛える、Laere Inc.の「道場」とは

クリエイティビティは天賦の才能か

丸山:
大本さんは、デンマークのビジネススクール「KAOSPILOT」で初の日本人留学生だったそうですね。どういう経緯でKAOSPILOTに入学することになったのですか。

大本さん:
私は大学で広告学を学び、広告代理店に就職して4年間ほど勤めました。消費財ブランドの担当者として、テレビCM制作を通じてブランドの認知を高める仕事をしていたのですが、ある時、組織ではクリエイティビティが一部の人にしかない才能だと思われていることに気づいたんです。それは、クリエイティブディレクターやトップ階層の人だけが発揮する生まれ持った才能なのか、トレーニングしたら誰でもクリエイティブになれるのかという疑問を持ちまして。

丸山:
大本さんは、ご自身のクリエイティビティをどう捉えていたのですか。

大本さん:
私はクリエイティブ職を志望して広告業界に入ったのですが、実績も自信もなく、上司の助言を受けて営業職に配属されました。一方で、自分がクリエイティブだと自覚して働けば、個人にも会社にももっと望ましい結果が出せるはずだとも思っていたんです。さらには、ビジネスのクリエイティビティはただ売り上げを上げるだけでいいのか――社会を良くするためにその力を使えないだろうか、とも考えていました。社会を良くするためのクリエイティビティと、私自身がクリエイティブになるための手法を学びたいと思っている時に、KAOSPILOTを見つけました。

志望動機は「カオスの中から自分の望みを見つけたい」

丸山:
大本さんにはふたつの問題意識があったということですね。ひとつはクリエイティビティの民主化。いわゆる大企業の分業型の手法ではなく、チームでイノベーションを起こせるのではないかという視点。もうひとつは、商業主義的に対するアンチテーゼとしてのソーシャルアントレプレナー的な視点を得たいという想い。

大本さん:
おっしゃるとおりです。私は、人間は生まれながらにしてクリエイティブな存在だと思っています。ですが、日本ではテストの点数や偏差値、大学名や就職先など、分かりやすいゴールに意識を向けがちで、複雑かつ不確実な状況で育まれるクリエイティビティが失われているんじゃないかと感じたんです。

それは個人のキャリアの中でどうにかできる問題ではなく、もっと構造的な社会システムの問題なんです。自分が本当はどういう世界を望んでいるのか、もう一度考え直さない限りは、一個人としてそこにアプローチできないと感じました。そこで、起業家育成の学校であれば、文字通りカオスの中で波に飲まれながら模索して、自分の望みを見つけられるのではという思いから、KAOSPILOTへの進学を決めました。

全ての人は、クリエイティブかつリーダーである

丸山:
KAOSPILOTの第一印象はどうでしたか。

大本さん:
KAOSPILOTでまず驚いたのが、入学試験です。そもそもGMATとかTOEFLなどの数字で判断せずに、『あなたの夢のプロジェクトを好きなように表現しなさい』という課題が出るんです。まさにクリエイティブ・アサインメントですね。自分は何が好きなのか、何が理想なのかを言語化しなければいけません。そこには、私のようなビジネス出身者もいれば、アーティスト、ダンサーもいますし、ファッションが好きな人や、世界一周していた人など、本当に多種多様な人たちが集まっていて、それぞれクリエイティブだということを自覚できるような環境だったのです。

画像: 自分は何が好きなのか、何が理想なのかを言語化しなければならない環境は、それぞれクリエイティブだということを自覚させてくれる。

自分は何が好きなのか、何が理想なのかを言語化しなければならない環境は、それぞれクリエイティブだということを自覚させてくれる。

丸山:
大本さんご自身が気づいた自分のクリエイティビティとはどんなことですか?

大本さん:
KAOSPILOTの活動には、自分がどういう部分で貢献できるのかを常に言葉にし、チームにフィードバックする場面があります。その対話の中で、自分で認識していない私自身のクリエイティビティについて、チームから指摘してもらえたことがありました。

何かものがつくれるとか、デザインで表現できるということだけではなくて、日本人ならではの観点や自分自身の生い立ちの中で感じてきたことを言葉にして共有したり、そこにない視点を見つけて持ってくることもクリエイティブなのだと認識できたのは発見でした。私が日本に持って帰りたいと思ったいちばん大きな学びは、「全員がクリエイティブで、リーダーなんだ」ということなんです。

丸山:
なるほど。その気づきは大きいですね。

――次回は、不確実で未来予測の困難な現代における自由にクリエイティビティを発揮できる組織づくりについて伺います。

画像1: [Vol.1]クリエイティブの在処を求め、カオスに飛び込む│大本綾さんと考える、個人と組織のクリエイティビティ

大本 綾
Laere Inc. 共同代表/クリエイティブ プロセス ディレクター

WPPグループの広告会社であるグレイワールドワイドで、大手消費材メーカーのブランド戦略、コミュニケーション開発に携わった後、デンマークのKAOSPILOTにて学ぶ。帰国後はLaere Inc.の共同代表として、人材育成と組織開発プログラム開発・実施に携わる。

画像2: [Vol.1]クリエイティブの在処を求め、カオスに飛び込む│大本綾さんと考える、個人と組織のクリエイティビティ

丸山 幸伸
研究開発グループ 社会イノベーション協創統括本部
東京社会イノベーション協創センタ 主管デザイン長(Head of Design)

日立製作所に入社後、プロダクトデザインを担当。2001年に日立ヒューマンインタラクションラボ(HHIL)、2010年にビジョンデザイン研究の分野を立ち上げ、2016年に英国オフィス Experience Design Lab.ラボ長。帰国後はロボット・AI、デジタルシティのサービスデザインを経て、日立グローバルライフソリューションズに出向しビジョン駆動型商品開発戦略の導入をリード。デザイン方法論開発、人財教育にも従事。2020年より現職。

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