複雑で変化の激しい現代において、企業の中に蓄積されたコンピテンシーを最大限に生かすためには、個人と組織が各々の目的意識を明確にもつことが必要です。目的を持ち、思いを共有し合う組織づくりについて、Laere Inc.の共同代表/クリエイティブプロセス ディレクターの大本綾さんに伺いました。聞き手は、研究開発グループ東京社会イノベーション協創センタ主管デザイン長の丸山幸伸です。

[Vol.1]クリエイティブの在処を求め、カオスに飛び込む
[Vol.2]「学ぶ」を起点にクリエイティブの土壌をつくる
[Vol.3]リーダーシップを継続的に鍛える、Laere Inc.の「道場」とは

Willが定まれば、迷いながらも楽しんで活動できる

丸山:
組織にはスキルフルな人がたくさんいます。彼らにプロセスを教えれば新事業ができるだろうと思いがちですが、我々が数年間イノベーションに取り組んできて直面しているのは、コンピテンシー(ハイパフォーマーに共通して見られる行動特性)を学び合い、育む場が整っていないということなんです。このあたり、どう考えたらいいでしょうか。

大本さん:
まずは、ひとつのコンピテンシーに対して、自分はどの位置にいるのかを自覚することが大事ですね。そのためには、内省することとチームメンバーからのフィードバックが必要です。また、それ以上に、なんのためにコンピテンシーを高めるのかという目的意識が重要だと思います。

丸山:
コンピテンシーを生かす目的を明確にするということですね。

大本さん:
はい。特に、My WillとOur Willを明確にする必要があると思います。社会に対して自分がどんなインパクトをもたらしたいのか、自分がどんな未来を望むのかという自分のWillと、自分のWillを持った人同士がチームを組んだ時に、改めてチームとしてのWillを明確にすることで、コンピテンシーをもっと自分ごと化できると思います。

ただ、不確実性が高いので、最初は難しいと思います。何をもって自分のWillを決めるのか迷いますし、チームのWillも、個々の思いがある中でひとつに絞るのは本当に大変です。でも、いったん決まれば、迷いながらも楽しんで活動できるようになります。メンタリティがガラっと変わる瞬間があるんです。

参画への思いを共有して、チームのWillを自分ごとに

丸山:
なるほど。ただ、わたしたちの職場のように団体戦に慣れている人が多いと、個人のWillをなくして、チームのWillに自分を寄せていく傾向もありそうです。そのあたりはいかがですか。

大本さん:
そこはおっしゃるとおり非常に大きな課題であり、同時に可能性であるとも思っています。誰もが個人のWillをずっと持ち続けられるわけではないですし、チームのWillに乗ることがあってもいいと私は思っています。チームのWillに乗ったとしても、その中で自分自身がどう貢献したいのか、どんなことに興味を持ってそこに参画しているのかを言葉にし、思いを共有すれば、それはもう自分のWillとほとんど同じことだと思っています。そこでは、お互いがスキルを出し合えるような関係性になるのです。

丸山:
そこは私自身もとても関心を持っているところです。今、我々はチームでイノベーションに臨もうとしていますが、一方で、圧倒的な能力を持ったビジョナリーな人材を育てることに注力すべきだという考え方もあります。しかし、私はひとりの天才がいなくてもみんなでできると思っているんです。みんなが創造性を発揮して、動的にリーダーシップを変えながらやっていく。僕はこちらのアプローチに挑戦してみたいと思っているので、そのあたりを大本さんにもご指導いただきたいと思っています。

画像: 参画への思いを共有して、チームのWillを自分ごとに

リーダーシップの継続的な鍛錬をめざす「道場」を提供したい

大本さん:
みんながリーダーとして、動的な環境で成果を生み出していくには、どういうふうに、なんのためにリーダーシップを発揮したいのかを時々振り返ったり、新しいインスピレーションを取り入れて方向性を定めるられるような場所が大事だと思っています。そこで私たちは今、「道場」のような場所を提供したいと思っています。

丸山:
道場のような場所とは?

大本さん:
道場って、自分のマインドセットとスキルを継続的に訓練する場所ですよね。働いていると、アウトプットを常に求められるけれども、時々立ち止まって考えて、自分はどういうリーダーシップを発揮したいのか、リーダーとしてどうありたいのかといった、ビーイングの部分を捉えなおす時間も必要です。そういった余白を道場の中でつくることができればと思っています。

丸山:
非常におもしろいコンセプトですね。普通の研修だったら一回受けてスキルを享受したら終わりですが、「道場」には型があって、おそらく師範代もいて、毎年若い人も入ってくるのでしょう。一方で、時々自分もそこに帰って、組み手をしてみたり、話を聞いたりすることで、自分をもう一度思い出せるし、アップデートできる。実務から離れて議論ができるという意味も含め、それも心理的安全性を持った場のひとつなのかもしれないですね。大本さん、今日はありがとうございました。

取材後記

社会人として働く中で生まれた疑問点から、KAOSPILOTに入学され、クリエイティビティは特別な人のものではない、ということを見出した大本さん。さらに日本に帰国してから、「学び合うこと」を核にした共創型アクションデザインファームの共同代表としてご活躍されています。自分が何を求めているのか、自分に何ができるのかという意志の言語化と共有の重要性など、日本の組織がもっと力を発揮していくために必要な「クリエイティブリーダーシップ」についてのお話は、これからのチームにとって大事な礎となるでしょう。大本さんの道場に入門する日が楽しみです。

画像1: [Vol.3]リーダーシップを継続的に鍛える、Laere Inc.の「道場」とは│大本綾さんと考える、個人と組織のクリエイティビティ

大本 綾
Laere Inc. 共同代表/クリエイティブ プロセス ディレクター

WPPグループの広告会社であるグレイワールドワイドで、大手消費材メーカーのブランド戦略、コミュニケーション開発に携わった後、デンマークのKAOSPILOTにて学ぶ。帰国後はLaere Inc.の共同代表として、人材育成と組織開発プログラム開発・実施に携わる。

画像2: [Vol.3]リーダーシップを継続的に鍛える、Laere Inc.の「道場」とは│大本綾さんと考える、個人と組織のクリエイティビティ

丸山 幸伸
研究開発グループ 社会イノベーション協創統括本部
東京社会イノベーション協創センタ 主管デザイン長(Head of Design)

日立製作所に入社後、プロダクトデザインを担当。2001年に日立ヒューマンインタラクションラボ(HHIL)、2010年にビジョンデザイン研究の分野を立ち上げ、2016年に英国オフィス Experience Design Lab.ラボ長。帰国後はロボット・AI、デジタルシティのサービスデザインを経て、日立グローバルライフソリューションズに出向しビジョン駆動型商品開発戦略の導入をリード。デザイン方法論開発、人財教育にも従事。2020年より現職。

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