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日常の生活や出来事から得られる、いま、この時代でしか得られない感覚や発想。それら「社会を切り取る視点」を、研究開発グループのメンバーのインタビューから見つけるコンテンツ、Nowism(ナウイズム)。
今回登場するのは、組織の戦略立案支援や、研究開発拠点「協創の森」に関する構想支援などに携わる伴真秀さん。地域との協創活動に興味があり、ウェブメディア兼会議体「多摩未来協創会議」の運営にも参画されています。リモートワークになってから自宅周辺の平日昼間の様子を知ることができるようになり、これまでの景色との違いを新鮮に感じているそうです。(2020年10月収録)
画像1: 二足のわらじで探る地域協創と、「相互扶助のために立ち上がるアナキズム」に見出した可能性│Nowism 社会を切り取る視点の蓄積

伴 真秀
研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部 社会イノベーション協創センタ プロダクトデザイン部 リーダ主任デザイナー(Design Lead)

日立製作所入社後、コーポレートWEBブランディング、建設機械・IT運用管理システムのインタラクションデザインを担当。2011年より北米デザインラボを経て2015年より家電、ロボット・AI領域の将来ビジョンや地域活性に関するサービスデザインを担当。企画部門を経て、現在サーキュラーエコノミーに関するサービスデザイン研究に従事。

ウェブメディア「多摩未来協創会議」運営のため、東京 多摩地域の企業や事業者との対話を続けているという伴さん。その中で驚いたことや、これから挑戦していきたいことを語ってくれました。

多摩地域の皆さんと話をしていると、一人ひとりが個々の特性やスキルを活かして「自分はこの活動で地域を変える」とか、「これは国分寺ならではのいいものだから、みんなにもっと伝えたい」ということを積極的に発言されるんです。そういったご自身の想いを原動力に、小さなところから地域の仕組みを作っていくパワーやスピード感がすごくて。あまりにも僕たちが会社でやっている仕事のスピード感と違うので、驚かされつつ、僕自身がそこから何が学べるのかというところに興味を持っています。

ただ、僕が住んでいるのは多摩地域ではなく板橋区なので、板橋区在住の僕が国分寺市のことにどれだけコミットできるのかはいつも悩んでいます。本当に地域を変えようと思ったら自分自身がその地域に住むのが一番なんですよね。でも、僕たちは国分寺市以外にもいろんな地域の方々と仕事をします。逆に国分寺市在住じゃないからこその感覚や視点をうまく活かしながら、その地域で暮らさなくても貢献できる方法を見出していきたいです。

画像: 2020年7月に実施した多摩未来協創会議のミートアップ

2020年7月に実施した多摩未来協創会議のミートアップ

文芸雑誌の対談記事を読んで、「アナキズムには相互扶助というもうひとつの顔がある」という考え方に衝撃を覚えたという伴さん。ご自身のテーマである地域協創との接点を感じたそうです。

雑誌『文學界』2020年10月号に掲載されたライター・コラムニストのブレイディみかこさんと政治学者・栗原康さんの対談「コロナ禍と“クソどうでもいい仕事”について」の中で、ブレイディみかこさんが仰っていたことにものすごく衝撃を受けました。

イギリスのある街ではコロナ禍で「困っている人を助けなきゃ」という想いから「助けが必要だったらここに連絡してください」と、自分の電話番号などの個人情報をあえてさらけ出して、「他者を助ける」という意思を地域に表明する行動が自然と起こったそうなんです。たとえば誰かの代わりに買い物に行くとか、そういうネットワークなのですが、この行動もアナキズムだというのです。ブレイディさん曰く、「(アナキズムには)相互扶助のために勝手に立ち上がるという顔もあるんですよね」と。

アナキズムって、一般的には大きな力に対する反発心という、ちょっと過激なイメージに捉えてしまうこともあると思うんです。でも、「相互扶助のアナキズム」は、政府のような大きな力が無力であることに対する反発心が、勝手に立ち上がる助け合いという形で発現していて、解決策の実装と運用にまで至っているんですよね。助け合うことで権力に反発しているところがとても面白いと感じましたし、アナキズムという思想を今の感覚で捉え直しているブレイディさんの視点も刺激的でした。

自分の仕事に置きかえて考えてみると、近い将来、地域で生まれる利他の気持ちをいかに日立のような企業に所属する僕たちが捉えて、大きなインフラにつないで公共の役に立つような力に変えていくかが重要になってくるのかもしれないと思いました。

編集後記

情報デザインの仕事や海外勤務を経て、先ごろまでビジョンデザインを担当していた伴さん。今も主担当業務の傍ら、自主的に地域案件に参画しています。「僕自身がやりたいからやっているというのが一番の原動力」と語る伴さんは、広く現場を知り、先を示してくれるキーパーソンですね。

コメントピックアップ

画像2: 二足のわらじで探る地域協創と、「相互扶助のために立ち上がるアナキズム」に見出した可能性│Nowism 社会を切り取る視点の蓄積

板橋区に住みながら多摩地域の事を考える。インサイダーになりきれない悩みに共感しました!

画像3: 二足のわらじで探る地域協創と、「相互扶助のために立ち上がるアナキズム」に見出した可能性│Nowism 社会を切り取る視点の蓄積

地域のお話、共感するばかりです……! 私は以前に聞いた「地域は、自分が住んでいるところか、それ以外かなんだよ」という言葉が印象的で。だから、住んでいなくても地域に関わっていいんだって思えたんです。

画像4: 二足のわらじで探る地域協創と、「相互扶助のために立ち上がるアナキズム」に見出した可能性│Nowism 社会を切り取る視点の蓄積

アナキズムとまではいかないかもしれませんが、“TRUST/2030”では、中央的な組織を信頼できず、小さな集団の中でいろいろなものを自前で用意しながらお互いの信頼を育んでいくDistributed&Autonomousな世界を描いています。その世界観を現実に落とし込んで生まれたサービス“Cycle of Change”は、地域通貨のオルタナティブを描いた伴さんの意欲作です。

Nowism 社会を切り取る視点の蓄積

日常の生活や出来事をとおして、いま、この時代でしか得られない感覚や発想に迫る、研究開発グループのメンバーインタビュー

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