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循環型社会の実現を、武蔵野美術大学との産学連携で考える「Loop of Life」プロジェクト。ここまでのセッションでは、メーカーがサーキュラーエコノミー(循環型経済)を指向する理由や、そこで必要とされる発想について語り合いました。Vol.2に続き、武蔵野美術大学 造形構想学部 クリエイティブイノベーション学科教授の岩嵜博論さんと日立グローバルライフソリューションズ株式会社 ビジョン戦略本部長の武藤圭史が、それぞれの専門領域で得てきた知見とともにディスカッションします。聞き手は日立製作所研究開発グループ 社会イノベーション協創センタ 主管デザイン長の丸山幸伸です。

[Vol.1]サーキュラーエコノミー、その一歩目を産学連携から
[Vol.2]リサーチから生まれたナレッジを、ひたすら社会で実践する
[Vol.3]サーキュラーエコノミーに取り組む理由と、その実現に必要な概念
[Vol.4]これからは意義で差別化する時代
[Vol.5]モノの持つ情緒的価値でループをつなぐ
[Vol.6]使い方はユーザーが決める。多義的デザインとどう向き合うか

画像: プロダクトの価値を長く循環させていくためには、自社の都合を超えた発想が必要になる、と考える武藤。

プロダクトの価値を長く循環させていくためには、自社の都合を超えた発想が必要になる、と考える武藤。

メーカーがサーキュラーエコノミーに取り組む意図

丸山:
武藤さんから、今回のテーマとして「サーキュラーエコノミー」を取り上げた意図を教えてください。

武藤:
これまでのマスプロダクトが持っていた、大量生産と大量消費の枠組みで社会に価値を出していくことにはもう限界が来ていると言われています。そんな中でも、メーカーとしては何らかのプロダクトを世の中に提供し続けることになります。
そこで必要になるのが、プロダクトのライフサイクルをいまより長く捉え、価値をサーキュレートしていくという考え方です。具体的には、プロダクトを消費者に提供したあと、長く使い続けたり、壊れたら捨てずに修理してもらう、使い終わった後もそれを次のプロダクトに活かしたり、他に使いたい方がいたら使ってもらう、といったことですね。メーカーである私たちがそういった方向に歩みを寄せていく中で、「サーキュラーエコノミー」というテーマはドンピシャの課題になるんじゃないかなと考えました。

丸山:
非常に面白いテーマですし、自分たちの会社の都合だけで考えないという点も大事なことですね。

システムチェンジへの挑戦

画像: 新たな循環の型の登場によって、現在の型が滅ぼされる可能性がある。「齟齬の生じるチャレンジに向き合っていくということでしょうか?」と問いかける丸山。

新たな循環の型の登場によって、現在の型が滅ぼされる可能性がある。「齟齬の生じるチャレンジに向き合っていくということでしょうか?」と問いかける丸山。

丸山:
一方で、新しいサーキュレート、つまり循環型の型を作るということは、現在の型を滅ぼしかねないですよね。齟齬の生じるチャレンジに向き合っていくということでしょうか?

武藤:
そうですね。いますぐ全てを変えることはできないとしても、既に世の中の皆さんがそういったものを求めているとなったら、企業としては当然応えていかないといけないと思います。時間がどれだけかかるかは分からないけれど、そこに対して歩んでいく必要があると思うんです。

丸山:
つまり、ビジョン戦略本部として、システムチェンジを戦略的に考えていく。

武藤:
そう言うとかっこいいですね(笑)

岩嵜さん:
それは大事な考え方ですね。我々にとっても、いまのシステムと未来にあるべきシステムの間を、どうトランジションするかが大きな課題です。

画像: 岩嵜さんは「トランジションの実現には、そこに至るまでの小さなアクションを起こし続けていく介入プロセスが必須」と締めくくった。

岩嵜さんは「トランジションの実現には、そこに至るまでの小さなアクションを起こし続けていく介入プロセスが必須」と締めくくった。

トランジションとインターベンション

岩嵜さん:
「トランジション」は世界中でキーワードになっている大事な概念です。いままでにない何かを、システムごと作ったり、作り変えたり、あるいは更新していくことを指します。

あと、もうひとつ世界でキーワードになっているのが「インターベンション」。今回のプロジェクトで学生が作ったアウトプットもそれに近しいのですが、インターベンション、つまり「介入」が、トランジションのために必要になります。いまあるシステムから未来のシステムへ、一気に全部が変わるわけじゃないので、小さなインパクトのあるアクションを、どう起こしていけるかというところがポイントになります。トランジションとインターベンション、この2つの組み合わせが重要になります。

丸山:
なるほど。学生のアウトプット詳細については、この後展開するプロジェクトの内容の方のセッションで詳しくお聞きできたらと思います。

次回は、「Loop of Life」プロジェクトにおける学生たちとの活動内容を具体的に振り返ります。製造やリサイクルの現場見学、ディスカッションといった活動が学生たちに与えた気づきや変化を、岩嵜さんをはじめ、メンターとして参加している武藤と日立の研究者へ感想も交えながらお聞きします。

画像1: [Vol.3]サーキュラーエコノミーに取り組む理由と、その実現に必要な概念│武蔵野美術大学と共に考える、価値が巡る家電のサービス

岩嵜博論
武蔵野美術大学 造形構想学部クリエイティブイノベーション学科 教授

リベラルアーツと建築・都市デザインを学んだ後、株式会社博報堂においてマーケティング、ブランディング、イノベーション、事業開発、投資などに従事。2021年より武蔵野美術大学クリエイティブイノベーション学科に着任し、ストラテジックデザイン、ビジネスデザインを専門として研究・教育活動に従事しながら、ビジネスデザイナーとしての実務を行っている。 ビジネス✕デザインのハイブリッドバックグラウンド。著書に『機会発見―生活者起点で市場をつくる』(英治出版)、共著に『パーパス 「意義化」する経済とその先』(NewsPicksパブリッシング)など。イリノイ工科大学Institute of Design修士課程修了、京都大学経営管理大学院博士後期課程修了、博士(経営科学)。

画像2: [Vol.3]サーキュラーエコノミーに取り組む理由と、その実現に必要な概念│武蔵野美術大学と共に考える、価値が巡る家電のサービス

武藤圭史
日立グローバルライフソリューションズ株式会社 ビジョン戦略本部 本部長

1996年日立製作所入社、白物家電、金融システムなどのプロダクトデザイン、ユーザ・インタフェースデザイン、ブランドデザインを担当。2006年から5年間英国に駐在し、欧州マーケットに向けたAV機器、鉄道システムのデザインや、コーポレートビジュアルアイデンティティの展開をリード。2018年より同研究開発グループ プロダクトデザイン部長として日立グループの製品・サービスのデザインの取りまとめを経て、2022年より現職にて生活家電や空調を中心とする新しいソリューションの事業化を推進。

画像3: [Vol.3]サーキュラーエコノミーに取り組む理由と、その実現に必要な概念│武蔵野美術大学と共に考える、価値が巡る家電のサービス

丸山幸伸
研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部社会イノベーション協創センタ 主管デザイン長(Head of Design)

日立製作所に入社後、プロダクトデザインを担当。2001年に日立ヒューマンインタラクションラボ(HHIL)、2010年にビジョンデザイン研究の分野を立ち上げ、2016年に英国オフィス Experience Design Lab.ラボ長。帰国後はロボット・AI、デジタルシティのサービスデザインを経て、日立グローバルライフソリューションズに出向しビジョン駆動型商品開発戦略の導入をリード。デザイン方法論開発、人財教育にも従事。2020年より現職。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科客員教授

[Vol.1]サーキュラーエコノミー、その一歩目を産学連携から
[Vol.2]リサーチから生まれたナレッジを、ひたすら社会で実践する
[Vol.3]サーキュラーエコノミーに取り組む理由と、その実現に必要な概念
[Vol.4]これからは意義で差別化する時代
[Vol.5]モノの持つ情緒的価値でループをつなぐ
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