プログラム1「好奇心が駆動する社会 – Society 5.0に向けて」
プログラム2「未来の暮らしと働き方はどうなる?『次の社会の作り方』を考える」
プログラム3「リアル×デジタルが私達の暮らしの何を繋ぐのか」
※以下は、上に掲載しております動画のサマリー記事となっております。動画の内容詳細については「Executive Foresight Online」からテキストでお読みいただけます。
リアルとデジタルの融合が始まる
2023年3月にメタバースWeb3サービスαU(アルファユー)をリリースしたKDDI。舘林さんは、メタバースでエンターテインメント体験や友人との会話を楽しめるαU metaverseや、デジタルアート作品などの購入ができるαU market、暗号資産管理ができるαU walletといった事業を管掌しています。
対談相手はデザインセンタ部長の沖田英樹です。沖田は、通信ネットワークの研究者として日立製作所に入社後、携帯電話ネットワークの管理技術の研究や、公共空間の安全確保のためのセキュリティソリューションの事業創生に携わってきました。現在はスマートシティ分野などで、研究開発の立場から新事業の創生に取り組んでいます。
サイバーとフィジカル、リアルとデジタルの融合が始まろうとしているいま、生活者の暮らしや風景にはどのような変化が生まれつつあるのでしょうか。舘林さんと沖田が、日々の実践をもとに議論を深めました。
表現できる環境づくり、社会インフラの充実をめざす
対談の始まりは、αU(アルファユー)リリースの経緯から。渋谷の街をデジタル空間に再現し、さまざまなエンターテインメントを提供した「バーチャル渋谷」の取り組みから得た知見を生かし、αUとしてリリースしたのが2023年3月のこと。「αUで多様な3D空間を準備することで、多くの人がクリエイターや発信者になれる環境づくりをめざしている」と舘林さんは語りました。
一方の沖田は、ビル管理のロボットに情報提供するコモングラウンドのシステムづくりや、ドローンの航路シミュレーションを例に、社会インフラを支えるためにリアル環境とデジタル環境を融合したサービスの事業化を模索する、自らの研究について紹介しました。
「リアルとデジタルの融合が進むと、生活の中でどのような変化が起こり得るか」との福丸の問いに対し、舘林さんは、発信する側と、それを応援する側との双方がリアルの属性を離れ、デジタルの人格で関わることが可能になる点を指摘しました。一方の沖田は、リアル空間での活動をデジタルなデータとして取得できれば、メタバース空間で行われる密なコミュニケーションがリアル空間でも可能になり、ひいてはメタバース空間を介してリアル空間でのお互いの認識が拡張されていくことになるのではと、その可能性を語りました。
労働力人口減少の問題を解決する
続いて話題はリアル×デジタルの社会的な必要性について。「リアルとデジタルの融合を必要とする背景や社会課題について、どのようなことが考えられるか」との福丸の問いに対し、二人が社会課題として共通して挙げたのが、労働力人口減少の問題です。
「日本の強みであるエンターテインメント分野では、リアルとデジタルの融合が進むことで輸出できるビジネスが増える」と舘林さん。一方の沖田は、社会インフラ運用の場面での必要性を指摘しました。「働き手の不足」という観点から、「人口減少の中で社会インフラを運用するには、インフラに対して、その状態を知ったり意見表明できるようになることが必要。リアル空間とデジタル空間がしっかり繋がれば、それが可能になる」と語りました。
リアルな北海道に住んでバーチャルな渋谷で働く
都市連動型メタバースが実際の街に与える影響を問う福丸に対し、「リアルとデジタルのデータが連携されていれば、メタバースのショップで買い物をするとリアルのショップにお金が入る。そのような、メタバースの渋谷でものが売れたらリアルの渋谷の人に還元できる仕組みをつくりたい」と舘林さん。舘林さんの話を受け、沖田は、「生活者が社会インフラに貢献したら、メタバース空間で意見表明する際に、その人の声が大きくなる、といったことがあってもよいのでは」と、リアルの社会貢献とデジタルの意見表明をつなぐ仕組みの可能性を語りました。
現在起きつつある変化として、舘林さんからはさらに、メタバース上で働くアルバイトの例が紹介されました。「北海道にいながらバーチャルな渋谷で街の案内人として働くような、新しい働き方が出てきている」と舘林さん。それに対し沖田は、「リアルとデジタルの融合は、人と人を繋げることで価値を生み出すのでは」と指摘。災害時のEV(Electric Vehicle)による電力供給のケースを例に、「供給する場所の決定や、供給の意思表明などの場面でリアルとデジタルがうまく繋がってほしい」と語りました。
個のプロフィールは、流動的、分散的に
最後に、今後の展望について語り合いました。
舘林さんは、リアルとデジタルの融合が進むことで「所属」の概念が流動化する可能性を指摘しました。そして、北海道に住みながらデジタルの渋谷の街に貢献する、といったように関与できる街が増えること、また、ある時間はデジタル空間の働き手として、別の時間はリアル空間でサラリーマンとして、といったように働き方も増えることで、「結果として個のプロフィールが分散化するだろう」と展望を語りました。
舘林さんの発言に対し、「その働き方のひとつのジャンルとして、ぜひ社会インフラも入っていってほしい」と沖田。さまざまな社会インフラに個人で参画できるようになるための手段として、リアルとデジタルの繋がりが生きてくるはず、と今後に期待を寄せました。
舘林 俊平
KDDI株式会社 事業創造本部 Web3推進部長
2006年KDDI株式会社⼊社。移動体通信事業のネットワーク設計を担当
2012年よりスタートアップ⽀援プログラムKDDI∞LaboやCVCであるKDDI Open Innovation Fundの設立に関わり、主にエンタメ領域の企業への出資や共同事業を手掛ける。
2017年からグループリーダーとして、スポーツ、エンタメ領域でのアライアンス、バーチャル渋谷などの新規事業を担当。
2021年4月 ビジネス開発部 副部長。モビリティ領域でのJV設立を推進。
2022年4月BI推進部長。KDDI∞Labo、KDDI Open Innovation Fund、KDDI Digital Gateを統括
2023年4月より現職。オープンイノベーション活動に加え、αU Metaverse、αU Marketなどの事業を管掌。
沖田英樹
日立製作所 研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部
デザインセンタ 社会課題協創研究部 部長
日立製作所入社後、通信・ネットワーク分野のシステムアーキテクチャおよびシステム運用管理技術の研究開発を担当。日立アメリカ出向中はITシステムの統合運用管理、クラウドサービスを研究。2017年から未来投資本部においてセキュリティ分野の新事業企画に従事。2019年から社会イノベーション協創センタにおいてデジタルスマートシティソリューションの研究に従事。同センタ 価値創出プロジェクト プロジェクトリーダを経て、現職。
福丸 諒
日立製作所 研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部
デザインセンタ UXデザイン部 デザイナー
日立製作所入社後、鉄道情報サービスUI/UX設計を担当。2017年から未来洞察手法の研究と実践により中長期的な事業機会探索を行うビジョンデザインを推進。英国日立ヨーロッパ駐在を経て、現職。
プログラム1「好奇心が駆動する社会 – Society 5.0に向けて」
プログラム2「未来の暮らしと働き方はどうなる?『次の社会の作り方』を考える」
プログラム3「リアル×デジタルが私達の暮らしの何を繋ぐのか」