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地方の鉄道を巡る状況は、人口減少・高齢化による利用客の減少や、施設・設備の老朽化、無人化によるサービス縮小など、大きく変化しています。地域の「顔」である駅を守るために、私たちは、どんな未来を選択していけばよいのでしょうか?鉄道および関連ビジネスのプロをめざす岩倉高等学校 鉄道研究部の皆さんとともに、日立製作所 研究開発グループ未来社会プロジェクト サブリーダの沖田英樹と日立の研究者・デザイナーたちが語り合います。ナビゲーターは、未来社会プロジェクトリーダの丸山幸伸です。

[Vol.1]鉄道のプロの卵たちが見た、街を支える先端技術
[Vol.2]駅はどう変わる?高校生たちが語るローカル線の未来

画像: 対談には研究者・デザイナーも参加し、高校生たちの柔軟な意見に耳を傾けた

対談には研究者・デザイナーも参加し、高校生たちの柔軟な意見に耳を傾けた

ローカル線を守るには?

沖田:
全国の鉄道路線の中でも、ローカル線は、その地域の鉄道交通を限られた担い手でどう維持していくのかという、未来の鉄道が直面する課題をいち早く経験している存在なのではないかと思います。そこで、ローカル線にいま何が起きているのか、今後どうなっていくのかを皆さんと考えてみたいと思います。

鉄道研究部員・Eさん:
僕がふだん使っている最寄駅は無人駅で、本数も少なく日中でも30分に1本しか列車が来ないような、いわゆるローカル線です。人が少ないとは言っても、高齢者の方がよく利用されていますし、朝晩には通勤や通学の需要もあります。地域の人口減少によってローカル線には廃駅も増えていますが、駅が廃止されるということは、街にとっては公共交通機関を一つ失うという大きな問題です。さまざまな工夫をしながら、駅自体は可能な限り存続させる方向が望ましいと思っています。

丸山:
駅をなくさないためにはどんなことができると思いますか。

鉄道研究部員・Fさん:
ローカル線は高齢者の利用が多いにもかかわらず、バリアフリー化が進んでいない現状があります。コスト面での課題はあると思いますが、未来のローカル駅が存続していくには、バリアフリーの強化が必須だと思います。

画像: 日頃から鉄道に関して深く考えている彼らにとって、ローカル線の問題は他人事ではない

日頃から鉄道に関して深く考えている彼らにとって、ローカル線の問題は他人事ではない

鉄道研究部員・Gさん:
ローカル線には、簡易型の自動改札機が導入されている駅が多いです。そのように、必要な設備をできるだけ機械化、簡素化していく方向性が進展していくといいのではないでしょうか。

一方で、僕の地元の駅では、朝方にボランティアの高齢者の方が駅舎を清掃していて、通勤の人たちに挨拶をしている姿が見られるんです。そんなふうに地域の人が駅と関わることができる仕組みも大事だと思います。先ほどの「バーチャル未来の都市」のように、利用者たちが自分の駅を守っていこうとするコンセプトと、おそらく同じことですよね。

丸山:
機械が進化しても人の関わりが必要な部分は残るということですね。

鉄道研究部員・Eさん:
僕が小さい頃から一番憧れていたのが、「立ち番」の駅員さんなんです。立ち番は、ホームでお客さまの安全と列車の運行の安全を守る重要な役割です。いまは機械化が進んでいて、ホームドアが設置されている駅には立ち番がいない場合もありますが、特に都市部では、立ち番がいなくなることはないだろうと思うんです。朝夕のラッシュ時など、ものすごい人数のお客さまの安全を守るためにも、そこに人間がいることには大きな価値があると思います。

画像: 自身の体験や学んできたことを元に、高校生からはさまざまな意見が出された

自身の体験や学んできたことを元に、高校生からはさまざまな意見が出された

路線と観光資源の相乗効果を狙う

鉄道研究部員・Gさん:
僕は、駅が街と街、人と人、街と人をつないでいく結節点になる存在だと思っています。でもこれからの時代は結節点だけあってもダメだと思うんです。街の人が駅を目がけて集まるような、駅自体が目的地になるような取り組みが必要なのではないでしょうか。いま、全国各地で「道の駅」が賑わっていますが、駅の未来を考える上で良いヒントになる気がしています。

鉄道研究部員・Hさん:
どんなローカル線にも、観光スポットと呼べるものが一つはあります。観光地を活性化させるために駅を改良したり、観光地と連動したイベント企画を鉄道会社と観光地の関係者で協議したり、それをSNSで周知していくことで、ローカル線でも収益を見込めるようになっていくのではないでしょうか。

丸山:
観光開発と路線というのはかなり親和性が高そうですね。たとえば、山陰を走る「サンライズ出雲」は、美しい車両と豪華な食事で人気ですよね。専用の接遇研修を受けた乗務員による質の高いサービスが提供されていて、特別感のある特急列車です。また、ふだんはなかなか降りる機会のない駅で途中下車し、隠れ家的な高級レストランで食事ができたりする。地域資源との相乗効果によって、ラグジュアリーな旅が提供されている、とてもユニークな取り組みだと思います。

画像: 駅や路線の魅力をより生かすために、私たちにはどんな選択肢があるのだろうか

駅や路線の魅力をより生かすために、私たちにはどんな選択肢があるのだろうか

鉄道研究部員・Fさん:
観光地とのコラボレーションも良いと思いますが、僕は駅そのものにも大きな魅力があると思っています。たとえばいま、新宿駅を大改修していますが、改修工事の際に、以前使っていたホームの壁面が出てきたというニュースがありました。こうした過去の遺産的なものを、可能な限り転用したり残したりして、歴史を感じさせるような建物にしていくと、駅の魅力が増すんじゃないでしょうか。

鉄道研究部員・Eさん:
会津田島駅では、駅構内の柱に南満州鉄道時代のレールが使われています。こうやって、昔のものを再利用していくことが、駅への愛着にも繋がっていくのかもしれません。

丸山:
面白いですね。駅は、近隣の文化がつながる場所でもあり、文化や歴史が堆積していく場所でもあるんですね。

研究者:
いま、静岡県にある、景色のいい湖の真ん中に浮かんでいるような駅が人気スポットになっていますよね。

鉄道研究部員・Gさん:
大井川鐵道の「奥大井湖上駅」ですね。

研究者:
そうです!私も先日そこを訪れてものすごく感動したんですけれども、よく調べていなくて、レンタカーで行ってしまったんで。鉄道で行けばもっと違う体験になったかもしれないと、少し後悔しています…。逆にいうと、私のように後悔する人を減らすためにも、SNSなどを使ったローカル線沿線の魅力の周知にはまだまだ可能性があるのかもしれません。

画像: 研究者という立場を離れ、自らの実体験からも鉄道の未来を考える

研究者という立場を離れ、自らの実体験からも鉄道の未来を考える

ーーローカル線の問題とともに社会課題化しているのが、鉄道インフラの老朽化と、専門知識をもつ保守員の不足です。そんな中、地域住民や一般市民が関わる「市民参加型のインフラ保守」が脚光を浴びています。保守員の教育や、市民参加を実現するための環境づくりにはどんな工夫が必要なのでしょうか。岩倉高等学校鉄道研究部の皆さんと、研究者の対話は続きます。

画像1: [Vol.2]駅はどう変わる?高校生たちが語るローカル線の未来│鉄道のある街は私たちが守る―高校生と考える未来の都市

須賀 帝凱
岩倉高等学校 鉄道研究部 部長

鉄道を主とした運輸業界に直結する「運輸科」を有する岩倉高等学校(東京都台東区)。その中でも、鉄道研究部は創部70年を迎える伝統を持ち、部員数は1〜3年生合わせて1 16名。「撮影班」「音鉄班」「乗鉄班」「旅行班」と、興味に応じた班に分かれて活動し、それぞれが鉄道の魅力を多角的に掘り下げている。

画像2: [Vol.2]駅はどう変わる?高校生たちが語るローカル線の未来│鉄道のある街は私たちが守る―高校生と考える未来の都市

丸山 幸伸
株式会社日立製作所 研究開発グループ Digital Innovation R&D
デザインセンタ 主管デザイン長 兼 未来社会プロジェクト プロジェクトリーダ
武蔵野美術大学 クリエイティブイノベーション学科教授

日立製作所に入社後、プロダクトデザインを担当。2001年に日立ヒューマンインタラクションラボ(HHIL)、2010年にビジョンデザイン研究の分野を立ち上げ、2016年に英国オフィス Experience Design Lab.ラボ長。帰国後はロボット・AI、デジタルシティのサービスデザインを経て、日立グローバルライフソリューションズに出向しビジョン駆動型商品開発戦略の導入をリード。デザイン方法論開発、人財教育にも従事。2020年より現職。

画像3: [Vol.2]駅はどう変わる?高校生たちが語るローカル線の未来│鉄道のある街は私たちが守る―高校生と考える未来の都市

沖田英樹
日立製作所 研究開発グループ 未来社会プロジェクト サブリーダ

日立製作所入社後、通信・ネットワーク分野のシステムアーキテクチャおよびシステム運用管理技術の研究開発を担当。日立アメリカ出向中はITシステムの統合運用管理、クラウドサービスを研究。2017年から未来投資本部においてセキュリティ分野の新事業企画に従事。2019年から社会イノベーション協創センタにおいてデジタルスマートシティソリューションの研究に従事。同センタ 価値創出プロジェクト プロジェクトリーダ、社会課題協創研究部 部長を経て、現職。

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