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不確実で未来予測の困難な現代においては、自由にクリエイティビティを発揮できる組織づくりが求められています。Laere Inc.の共同代表/クリエイティブプロセスディレクターの大本綾さんが提案する、日本の組織にクリエイティブの土壌をつくるための方策とは?聞き手は、研究開発グループ東京社会イノベーション協創センタ主管デザイン長の丸山幸伸です。

[Vol.1]クリエイティブの在処を求め、カオスに飛び込む
[Vol.2]「学ぶ」を起点にクリエイティブの土壌をつくる
[Vol.3]リーダーシップを継続的に鍛える、Laere Inc.の「道場」とは

日本の組織には心理的安全性をつくる仕掛けが必要

丸山:
日本人初となったデンマークのビジネススクールKAOSPILOTへの留学体験から「全員がクリエイティブで、リーダーだ」と気づいた大本さん。その考え方を「日本に持ち帰りたい」と思ったのはなぜですか。

大本さん:
内閣府の調査でも結果が出ていますが、日本人の若者は、他の先進国の若者と比べて圧倒的に自己肯定感が低いんです。でも、年齢は関係なく、環境さえ整えばどんな人でも自分の本心や本音で話せるようになるし、それが結果的にオリジナルな観点やアイデアに繋がっていくはずです。もちろん、アイデアをかたちにしたり、ビジネスとして成立させるにはさまざまなスキルが必要ですが、日本でいちばん必要なのは、何を言っても大丈夫だと思える安心安全な場づくりなんです。

丸山:
心理的安全性といわれているものですね。

大本さん:
まさにそうです。会社という組織の中で、心理的安全性をどうつくっていくかが重要になると思っています。

画像: 日本の組織には心理的安全性をつくる仕掛けが必要

学び合う組織からクリエイティビティが生まれる

丸山:
それを事業としてどのように立ち上げようと考えたのですか。

大本さん:
社名の「Laere」とは、デンマーク語で『学び、教える』というふたつの意味が入っている単語です。そこには、学ぶことは教えることで、教えることは学ぶこと、という考え方があるのです。会社に所属して生産性の高い働き方をするためには、前向きに学び続ける必要があります。しかし、学び続けるには、自分が何を学びたいのかを知らなくてはなりません。そして、なぜ学びたいのか、どういう未来をつくりたいのかを言葉にできなければ、学ぶことはできません。さらに、学び方を学ぶことで、時代が変化しても常に自分をアップデートして、クリエイティビティが発揮できるチームがつくれると考えています。

そういった発見ができる場を企業の中にもつくることが大事なのではないかと思い、研修プログラムの提供をはじめました。また、実務や事業にしっかり結びつけるために、経営企画の方や事業部の方たちと一緒に、研修の内容と事業で求められるマインドを一致させることにも取り組んでいます。

丸山:
ただ研修を行うだけではなく、事業との接続も視野に入れた取り組みなのですね。

大本さん:
大きな会社の中では、人事の方が考えていることと、事業部で本当に求めてられていることにギャップがあることも多いと思うんです。そこを繋げていく取り組みです。大きなチャレンジですね。

組織に蓄積されたコンピテンシーを生かすために

丸山:
内部のギャップについては、我々もたびたび議論しているところです。もう少し詳しく教えてください。

大本さん:
たとえば、研修中に、あるビジネスモデルを考えたとしても、受け入れる土壌がなければ途絶えてしまいます。せっかくオリジナルな観点でアイデアを生み出す人が増えても、実務での成果に繋がらないという難しさがありますよね。そこには、評価制度、働き方、組織の文化や風土など、さまざまな要因があるので、ソリューションは組織の中で多様な役割を持つ方々と考えながらつくっていくしかありません。その点、丸山さんの所属されている組織は、横断的に協働されていて、実務と学びをつなげやすいのではないかと思います。

現在、主に技術者に対して、社会の変化の潮流を察知し、ステークホルダーとの対話から望ましい未来を考えて、本当に必要とされる技術を実装できる人材育成のプロジェクトに携わっています。そこでは、リーダーシップや対話の能力、システム全体を俯瞰する能力など、さまざまなコンピテンシーが必要になります。

――次は、企業の中に蓄積されたコンピテンシーを最大限に生かすために、個人と組織が各々の目的意識を明確にもつことについて伺います。

画像1: [Vol.2]「学ぶ」を起点にクリエイティブの土壌をつくる│大本綾さんと考える、個人と組織のクリエイティビティ

大本 綾
Laere Inc. 共同代表/クリエイティブ プロセス ディレクター

WPPグループの広告会社であるグレイワールドワイドで、大手消費材メーカーのブランド戦略、コミュニケーション開発に携わった後、デンマークのKAOSPILOTにて学ぶ。帰国後はLaere Inc.の共同代表として、人材育成と組織開発プログラム開発・実施に携わる。

画像2: [Vol.2]「学ぶ」を起点にクリエイティブの土壌をつくる│大本綾さんと考える、個人と組織のクリエイティビティ

丸山 幸伸
研究開発グループ 社会イノベーション協創統括本部
東京社会イノベーション協創センタ 主管デザイン長(Head of Design)

日立製作所に入社後、プロダクトデザインを担当。2001年に日立ヒューマンインタラクションラボ(HHIL)、2010年にビジョンデザイン研究の分野を立ち上げ、2016年に英国オフィス Experience Design Lab.ラボ長。帰国後はロボット・AI、デジタルシティのサービスデザインを経て、日立グローバルライフソリューションズに出向しビジョン駆動型商品開発戦略の導入をリード。デザイン方法論開発、人財教育にも従事。2020年より現職。

[Vol.1]クリエイティブの在処を求め、カオスに飛び込む
[Vol.2]「学ぶ」を起点にクリエイティブの土壌をつくる
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