日常の生活や出来事から得られる、いま、この時代でしか得られない感覚や発想。それら「社会を切り取る視点」を、研究開発グループのメンバーのインタビューから見つけるコンテンツ、Nowism(ナウイズム)。今回登場するのは、2021年に入社後、都市や建築のプラットフォーム形成や住民参加型まちづくりを支援するためのデジタルツールの連携を行っている石井健太さん。リモートワークが続くいま、プロジェクトメンバー以外の人たちとの交流をはかるために、社内の情報共有チャンネルに自分の興味・関心のある記事を感想とともにアップすることを心がけているそうです。(2021年12月収録)
画像1: 演劇とまちづくりワークショップの「親和性」とは?│ Nowism 社会を切り取る視点の蓄積

石井 健太
研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部
社会イノベーション協創センタ
社会課題協創研究部 総合職研修員(Trainee)

2021年入社。モビリティユニットに所属し「コモングラウンド」という都市や建築を3Dデータ化してさまざまなモノの情報を紐づけ、リアルタイムに扱いやすくするためのプラットフォームと、「Cyber-PoC for Cities (CPfC)」という住民参加型まちづくりにおける合意形成を支援するためのデジタルツールの連携を行っている。

演劇に興味を持ち、実際に下北沢の小劇場などに足を運んでいるという石井さん。「教育劇」という形態の演劇から見つけた、まちづくりワークショップに活かせるヒントとは?

東京藝大教授 高山明さんが教育劇について書かれた『テアトロン: 社会と演劇をつなぐもの』を読んでから演劇にハマり、下北沢の小劇場などに観劇しに行くようになりました。特に本に登場する「教育劇」の考え方が興味深く、自分も体験したいと思っています。「教育劇」とは、簡単な演目を観客に演じてもらうことで、演じる自分を客観的に見つめる行為を通し、演技が終わったあとも自分を俯瞰する視点を持ってもらうことを意図した即興劇のようなものです。

たとえば、他県から東京に修学旅行に来る人のツアー行程を東京在住の人になぞってもらい、外部から見た東京を体感するとか、コンパクトで演じやすいテーマが多いです。

この考え方が、まちづくりワークショップと親和性があるなと思っています。まちづくりにもさまざまなステークホルダーが存在するので、合意形成のためのワークショップをすることがあるのですが、全員の合意を取るというのはなかなか難しいんです。自分の意見だけを押し通そうとしても上手くいかないですし、かえって折り合いをつけたほうが双方にとって利益があったりもします。

そこで、ワークショップの過程で、教育劇のように、少し自分を客観視する視点を獲得していただき、他のステークホルダーと自分の両方の視点で考えられる人たちが増えてくると、より住民の方々が納得できるまちができてくるのではないかと考えました。

実際に、僕もSFプロトタイピングを作成するためのワークショップに参加したときに、教育劇の参加者と近い効果を体験しました。議論を進めるにつれて、元々はSF的な考え方をあまり持っていなかった自分にそのような考え方が身についていくことによって、普段行っているプロジェクトも新たな視点で考えられるようになるなど、大きな学びがあったのです。同じように、教育劇からまちづくりのワークショップに取り入れられるものはないかなと思っています。

画像: 災害を題材としたSFプロトタイピングで、架空の街を想定して物語を検討。起こりえそうなこと、住んでいる人がやってしまいそうなことなど、リアリティを持った議論ができたそう。

災害を題材としたSFプロトタイピングで、架空の街を想定して物語を検討。起こりえそうなこと、住んでいる人がやってしまいそうなことなど、リアリティを持った議論ができたそう。

石井さんが、学生時代から一貫して関心を持ち続けているのは「まちづくり」。研究から仕事に繋がっていく中で、根底にある変わらない信念とは?

学生時代はまちづくりの研究室にいて、交通シミュレーションとその施策評価ツールをつくるといったことをしていました。その時に、建築や都市デザインの学生と組んで施策を考える演習などもやっていたので、自分たちのような数理系の研究者だけでなく、デザイナーがいる職場がいいなと思っていたところ、日立の研究開発グループでは、実際に自治体と組んでまちづくりを実践するプロジェクトに取り組んでいることや、デザイナーと研究者が一緒になって研究から実践まで一気通貫して関わっていることを知り、そこに惹かれて入社しました。地続きであるとはいえ、もちろん学生時代とは違うので、プロの現場の大変さを実感しながら頑張っています。

コモングラウンド・リビングラボ(※)では、社外の方々へのレクチャーも担当させていただきました。参加者にプラットフォームの使い方を体感していただくため、説明や質疑を交えながら簡易的なアプリを実際に作っていただきました。入社まではずっと「良い技術」を研究することばかりやってきたので、どういった層の人が来るのかという設定から、それを使ってもらうことまで含めて考えることは新鮮で、なかなか難しかったです。

僕は、学生時代から今も変わらず「まちづくり」に関心があります。その中でも、データを用いて街の分析や施策を事前評価する方法を研究することと、その方法を使って実地で実践すること――その両輪でやっていきたいという信念があります。ただ、ひとりで両方に関わっていくのはなかなか難しいので、興味がある方は、ぜひ仲間になっていただきたいなと思います。

※「コモングラウンド」は、建築家・豊田啓介氏が提唱した概念で、空間のさまざまな情報を、都市や建築物の3Dデータにひもづけることで、フィジカル空間とデジタル空間をつなぐ空間情報プラットフォームのこと。「コモングラウンド・リビングラボ」は、大阪商工会議所、日立製作所を含む民間5社で大阪天満に設立をした実験場。複数の企業や団体が集まり、実験を含めた議論を通し、次世代都市の空間情報プラットフォーム実装を探る。

編集後記

15年くらい前にスマートシティの計画にデザイン部門が関わり始めた頃は、社内外にお手本はありませんでした。そのあと数年して、案件を通してプロジェクトが拡大し、そして今、学生の頃から都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出する分野があり、学んできた石井さんがいる。さらに、その石井さんが現場で活躍しているとは、本当にすごいスピードで世の中が変化しているのを感じますね。

コメントピックアップ

画像2: 演劇とまちづくりワークショップの「親和性」とは?│ Nowism 社会を切り取る視点の蓄積

コモングラウンド・リビングラボでのハンズオン、ほぼ教育なしの体当たりで、初めてとは思えない素晴らしいレクチャーを実施頂きました。参加された皆さま満足顔。社会実装に向けた開発用ソフトウェアをオープンに使ってもらって議論するという活動は、日立の研究開発グループの中ではあまりやられてこなかった領域で、新しい協創を目の前に、扱っていくべき研究領域なんだろうな、と考えさせられました。

画像3: 演劇とまちづくりワークショップの「親和性」とは?│ Nowism 社会を切り取る視点の蓄積

コモングラウンドや Cyber-Proof of Concept (Cyber-PoC) って、堂々巡りの議論を直感プロトタイピングでぶち破れるところが醍醐味ですね。

画像4: 演劇とまちづくりワークショップの「親和性」とは?│ Nowism 社会を切り取る視点の蓄積

ハノイの Cyber-PoC をオーストラリアの Hitachi Social Innovation Forum でデモして思ったのは、「英語が一言も喋れなくてもデモできるのが理想のCyber-PoCであり、説明する相手は専門家でなくてもよい」ということ。もう一つは「直感的に簡単に使える」こと。オーストラリアでは、お客同士が勝手に使用して別のお客に説明していたのが印象的でした。

Nowism 社会を切り取る視点の蓄積

日常の生活や出来事をとおして、いま、この時代でしか得られない感覚や発想に迫る、研究開発グループのメンバーインタビュー

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