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日立製作所研究開発グループによるオンラインイベント「協創の森ウェビナー」。第15回目の今回は、テーマを「環境への配慮と豊かな食生活の両立に向けて」として、食の課題解決に取り組む方々との対談やパネルディスカッションを通して議論を深めました。まずプログラム1では「食を取り巻く環境問題」と題し、NPO法人NELIS代表理事 ピーター・D・ピーダーセンさんと研究開発グループ 社会イノベーション協創センタ センタ長 谷崎 正明が対談を行いました。日立製作所 社会イノベーション事業統括本部 主任 横林 夏和がモデレータとなり、食の環境問題に対する観点や事例を伺いながら、日本における食のイノベーション展開についても意見を交わしました。

※記事文章内に記載の登壇者の所属、役職などはウェビナー開催時(2023年3月28日時点)のものです

プログラム1「食を取り巻く環境問題」
プログラム2「テクノロジーで切り拓く食の未来」
プログラム3「これからの食の豊かさへの物差し」

画像: 協創の森ウェビナー:第15回 対談「食を取り巻く環境問題」- 日立 youtu.be

協創の森ウェビナー:第15回 対談「食を取り巻く環境問題」- 日立

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※以下は、上に掲載しております動画のサマリー記事となっております。動画の内容詳細については「Executive Foresight Online」からテキストでお読みいただけます。

食の環境問題と今後の課題

画像: 左から、モデレータの社会イノベーション事業統括本部 主任 横林 夏和、NPO法人NELIS代表理事 ピーター・D・ピーダーセンさん、研究開発グループ 社会イノベーション協創センタ センタ長 谷崎正明

左から、モデレータの社会イノベーション事業統括本部 主任 横林 夏和、NPO法人NELIS代表理事 ピーター・D・ピーダーセンさん、研究開発グループ 社会イノベーション協創センタ センタ長 谷崎正明

まずは食が関連する昨今の環境問題について、ピーターさんと谷崎が、それぞれの観点を述べました。

谷崎は、現在の牛肉食によってもたらされる温室効果ガス排出の問題を取り上げました。若い世代の消費者に興味を持ってもらう取り組みとして、日立製作所では京都大学とともにXR技術を駆使して昆虫食バーガーや代替肉バーガーのある食生活の擬似体験ができる仕組みを作り、具体的に提示するといった教育活動も行っています。

一方ピーターさんからは、食料供給側の課題として、生産すべきカロリーとそれに必要となる広大な土地確保の問題が挙げられました。また全食料生産の約1/3がフードロスとして廃棄されてしまっていることにも触れ、近年注目されている“regenerative(環境再生型農業)”、つまり、十分な食料を確保しながら生態系を破壊せず、資源が循環するような再生型食料システムの構築が必要である、と訴えました。

二人が取り上げたような食に関する環境問題の解決には、需要と供給双方の、多様なステークホルダーがそれぞれにアクションを起こす必要があります。たとえば、テクノロジーでフードロスやフードバリューチェーンの無駄をなくすこと、開発期間を短縮化することなどで、環境問題の解決と豊かな食生活を両立できるのではないかと、谷崎は考えています。ピーターさんは、EUで実践されている食のイノベーションエコノミー「EIT」の事例を交えて、さまざまなステークホルダーが参加できる、食と農のイノベーションを推進するようなプラットフォームが日本にも必要になってくるのでは、と語りました。

これからの農業漁業は“スマート×オーガニック”

画像: 海外の事例でも、すでに都市型の農業と漁業が可能になってきていると語るピーターさん

海外の事例でも、すでに都市型の農業と漁業が可能になってきていると語るピーターさん

ピーターさんが取り組む、多様な業界を巻き込んだイノベーション活動「4Revs」。食、水、資源・生態系、エネルギー・気候変動の4領域において革命的なイノベーションが必要とされていることから2020年に設立されたこのエコシステムには、現在26社約340名が参画し、共創を通じてグローバルに4領域の課題解決に取り組んでいます。近年のトレンドとして、新しい都市像(リビングシティ)や、農業と漁業の再発明、材料革命、廃棄食品を出さないゼロウェイストショップなど7つの要素が挙げられた中で、本対談では農業と漁業の再発明に注目しました。重労働でローテクな産業と思われがちな農業や漁業ですが、ドイツでは垂直農法でFaas(Farming as a Service)※をめざす農業スタートアップが登場したり、アメリカでは再生型のオーシャンファーミング(海洋農場)が広がってきたりと、アグリテックを駆使したスマートな産業に変化しつつあります。昔ながらのオーガニックやナチュラルか、ハイテクかの二択ではなく、これからはそれらの融合こそが、農業と漁業の再発明を可能にするのではないか?とピーターさんは考えます。

※Faas……消費者ニーズに対応した価値を創造・提供する農業のこと

日本で“食のイノベーション”は起こせるか?

画像: 「4Revs」への参画から、食にまつわる環境問題の解決には、テクノロジーの活用だけでなく、誰もが参加できる仕組みづくりと、消費者も含めた人々のマインドセットを変えていく必要もあると実感した谷崎

「4Revs」への参画から、食にまつわる環境問題の解決には、テクノロジーの活用だけでなく、誰もが参加できる仕組みづくりと、消費者も含めた人々のマインドセットを変えていく必要もあると実感した谷崎

最後に、デンマーク生まれ日本在住31年になるピーターさんならではの視点で、日本で食のイノベーションを起こすために必要なアクションを伺いました。日本ならではの課題として、情報獲得の遅さや、前例主義、管理思考などが挙げられる一方で、産業と行政の連携による共創の可能性については欧米よりも大きな可能性を秘めており、一度方向性が決まってしまえば大きなブレークスルーが訪れるのではないかと語りました。それを受けて谷崎からは、日立製作所が「4Revs」に参画したことで得た学びとして、環境問題の解決のためには、テクノロジーを駆使して多様なステークホルダーのコンフリクトを解消していくだけでなく、誰でも参加できる仕組みや、消費者自身のマインドセットの変化も必要になってくる、といったことが明確になったと振り返りました。

画像1: “食のイノベーション”を通して環境問題に取り組む│協創の森ウェビナー第15回 「環境への配慮と豊かな食生活の両立に向けて」プログラム1「食を取り巻く環境問題」

ピーター・D・ピーダーセン
NPO法人NELIS代表理事

1967年、デンマーク生まれ。コペンハーゲン大学文化人類学部卒業。高校時代に日本に留学したことをきっかけに、のべ30年以上を日本で過ごす。大手企業や大学、経済団体、省庁などのCSR・環境コンサルティングやサステナビリティ戦略支援に従事。現在、若手リーダーを育成するNPO法人NELIS代表理事のほか、大学院大学至善館専任教授、株式会社トランスエージェント会長を務める。著書に『しなやかで強い組織のつくりかた ―21世紀のマネジメント・イノベーション―』(生産性出版,2022年)、『SDGsビジネス戦略-企業と社会が共発展を遂げるための指南書-』(日刊工業新聞社,2019年,共著)ほか多数。

画像2: “食のイノベーション”を通して環境問題に取り組む│協創の森ウェビナー第15回 「環境への配慮と豊かな食生活の両立に向けて」プログラム1「食を取り巻く環境問題」

谷崎 正明
研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部
デザインセンタ センタ長

日立製作所に入社後、中央研究所にて地図情報処理技術の研究開発に従事。2006年からイリノイ大学シカゴ校にて客員研究員。2015年より東京社会イノベーション協創センタ サービスデザイン研究部部長として、顧客協創方法論を取り纏める。2017年より社会イノベーション事業推進本部にてSociety5.0推進および新事業企画に従事したのち、2019年からは研究開発グループ 中央研究所 企画室室長を経て、2021年4月より現職。

画像3: “食のイノベーション”を通して環境問題に取り組む│協創の森ウェビナー第15回 「環境への配慮と豊かな食生活の両立に向けて」プログラム1「食を取り巻く環境問題」

横林 夏和
日立製作所 デジタルシステム&サービス統括本部
社会イノベーション事業統括本部 未来企画本部 パーパス経営企画部 主任

日立製作所に入社後、ITプロダクツの販売戦略立案やパートナービジネスを推進。その後、社会イノベーション事業統括本部にて、スマートシティやヘルスケア関連の新事業開発のほか、コミュニティやステークホルダーとのリレーション強化による社会課題解決型の次世代事業開発に従事。

プログラム1「食を取り巻く環境問題」
プログラム2「テクノロジーで切り拓く食の未来」
プログラム3「これからの食の豊かさへの物差し」

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